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第26話 学びの初日




 神々の学校、シロモナリエ。


 拘りの見える石造りの神殿のような場所。


 いくつかの建物を通り抜け、奥の宮殿には転移の陣のある部屋が続いている。


 今日は、学びの初日。


 

「ティア、もう出てもいいよ」



 マリーの言葉を聞いて、鞄のポケットからぴょこんと顔を出した。


 マリーとユタ、今日はケイローも一緒だ。


 私たちは、転移の陣から緑の広がる草原に移動した。


 気持ちのいい風が、顔を撫でていく。


 

「すてきなのです!」



 ここの風たちは、ずいぶんと穏やかなのです。

 私の星の風たちは、もっと気分屋で荒々しかったのです。


 風たちの魔力を眺めていると、ユタの話が始まる。



「ティア、まずはお前の力を把握したい。一体、どれほどの力を持つのか教えてくれ」


「分かったのです! どうすればいいのです?」


「そうだな。まずは内に秘める力を見せてくれ」



 首を傾げると、ユタが手本を見せてくれた。


 ユタの身体を覆う魔力バリアが、光り輝き出す。


 発動から流れるような無駄のない魔力の動きだ。

 

 周囲の風たちが強くなってきた。興味を引いて集まってきたようだ。


 ユタの魔力バリアは球体となり、燃え上がるような力を放ち始める。


 魔力を見なくても、可視化できるほどだ。


 

「流石、ユタ様ですね」



 ケイローが頷いている。



「ティアの番だぞ」


「はい!」



 ユタに促され、ティアはみんなと少し距離を取った。


 良いところを見せるのです!


 くるくると回ったあと、ポーズを決める。

 

 常に薄く展開している魔力バリアの魔力を操る。


 ぽあっと光るティアの魔力バリア。


 まずは、ユタと同じぐらいの力に合わせるのです。


 ユタほどは美しくは出来ないが、一気に魔力の出力を上げる。


 バチバチと電気を纏った魔力バリアが生まれた。


 ケイローが、口をあんぐりさせている。


 

「まだまだなのです!」



 さらに魔力を編み込み、出力を上げていく。


 風たちが逃げていく。


 そして、大地が震え始めた。


 

「ティア! もういいぞ!」



 ユタから声がかかり、力を抜く。


 大地の震えが止まり、風が戻ってくる。


 

「やはり凄いものだな。これでどれくらいの力を出しているんだ?」


「ほ? どれくらいだろう? 半分くらいかな?」


「は、半分くらい? す、すごいな」



 汗が垂れているユタ。


 ケイローは口を開けたまま、なんかパクパク言っている。


 マリーは、頭を撫でてくれた。


 

「ユタはこの辺りの星たちの中で、一番の力の使い手だよ。それを軽々と越えちゃうなんて凄いよね」


「全くだ。いかに自分が未熟な存在だったのか、よく分からされたぞ」



 そうだったのですか!

 ってことは、私ってすごいのです?

 とりあえず、驚かせることができて良かったのです!



「しかし、力の使い方というのは単純に強さだけという訳ではない。魔力の流れを見る限り、まだまだ未熟な部分もある。例えばーー」



 ユタが手をかざし、魔力の壁を作る。


 壁自体の強度は大したことはないが、発動から生み出されるまでの魔力の流れは美しく洗練されている。


 ティアも真似してみたが、言われた通りで、無駄な魔力の流れ方をしている部分が多い。


 

「なるほどなのです! ユタの魔力の流れは無駄がなくてきれいなのです!」


「だろう?」



 ユタは自慢げだ。


 

「未知の力だと感じましたが、ユタ様を超える力をお持ちなどとは、思いもしませんでした。もしもや、このような事が起こるとは」


「そうだろう。しかし、まだまだ……ティア、翼を出せるか?」



 ケイローは少し落ち着いたようだ。


 ユタにお願いされ、翼を生み出す。


 小さなティアの背中に、風の魔力を編み込んだ翼が現れる。


 やっと飛べるのです。

 この服も邪魔にならないし、良かったのです!

 

 翼を羽ばたかせ、みんなの周りをくるくると飛び回る。


 ユタに呼ばれ、ユタの手のひらへ。


 ケイローが覗き込んでいる。


 

「不思議な力の使い方だろう?」


「飛びやすいように、風の魔力を編み込んであるのです!」


「えぇ、とても驚きましたよ。風の魔力? 星の力で作り出しているのですね? 確かにこのような力の使い方は……」



 ケイローは顎に手を当てて、考え事をしている。

 

 

「ティアは、星の力のことを魔力って呼んでいるのよ。魔法の力で魔力。良い呼び方だと思わない?」


「魔力ですか。過去に、様々な呼び方が流行りましたが、その中に魔力という言葉を使う者がおりましたね」


「え? 誰?」



 マリーがケイローに詰め寄る。



「クロトン様です。ティア様と同じように不思議な力の使い方の研究をされておりました」


「クロトンかぁ。ユタと仲良くないものね」



 マリーはその話に興味を失い、ティアににじり寄る。



「ティア! その翼の作り方、教えて!」


「待て待て、まだ授業中だぞ。次は、五大元素の確認をするんだ」


 

 大人しく引き下がるマリー。


 五大元素というのは、地上に漂う火水風土の力と宇宙の漂う力のことだそうだ。


 これは感じたことも、一部は操ったこともあったので何となく理解ができた。


 宇宙の力というのは、転移の時に感じた怖い力のことだろう。


 

「見た方が早いな。これが火の力だ」



 ユタが魔力を操り出すと、同時に魔力の流れを追った。


 ユタの魔力は色を変えながら、手をかざした先の空間に平面の魔法陣を描き出す。


 平面の魔法陣に導かれるように、火の力が集まってくる。


 

「炎よ」



 ユタが声を発すると、平面の魔法陣は赤く染まり、炎が生み出された。


 ティアは翼を操り、いくつかの角度から炎を観察する。


 まじまじと見せてもらえると、分かることがいくつかあった。

 

 なるほどなのです。

 身体に宿る魔力と、この辺りに漂う魔力は性質が違うのです。

 これは、何となく分かっていたことなのです。まだ検証は必要だと思うけど。

 ユタの魔力は、力強いけど細かい動きは苦手そうなのです。


 他人の魔力を見ることで、自分と比較することができる。


 思考を加速させたり、複雑な考えをすることも、意識を複数持つティアにとっては容易なことだった。


 なぜ自分が魔力を操るのが得意なのかは分からないが、この思考の速さや、意識を分けれることが関係している気がする。


 特に、魔力に関しては言葉をイメージする意識。例えば、翼という言葉を思い浮かべて、形を想像するといったことが役に立っている気がした。


 あの永い暗闇の時間も、少しは意味があったことに嬉しさを覚えたのであった。

 


「ティア、火の力を使えるか?」


「火と土はまだ使ったことがないのです。でも、やってみるのです!」



 今度は火の力を見せてほしいらしい。


 この辺りには、風と土の力が多く、水はほどほどで、火の力は少ない。


 それでも、どこからともなく現れる火の力は、元気いっぱいの暴れん坊といった印象を受ける。この印象は、ティアの星の火の力とそう変わらない。


 魔力を操り、火の魔力を集めてみる。


 ユタの平面の魔法陣を見てからだと、さっそく新しい発見があった。


 今までは無意識であったが、ティアが魔力を操る時は、自分の魔力が火の魔力を導くように平面ではなく立体で魔法陣を描いていたのだ。


 どう火の力を扱いたいのかを、思いつくまま即興で魔法陣を描いていた。


 おかげで、魔力の流れには無駄な部分も多い。


 ユタの魔力は、この力の流れを磨き抜いて無駄を省いたから美しく見えるのです。


 魔力は奥深くて面白いのです!


 立体の魔法陣が完成したので、発動させてみる。


 ユタの火より、少し大きな炎が生まれた。



「お! できたのです!」



 手をかざした先に、メラメラと燃え上がる炎。



「は、初めてで、これか……」



 ユタたちは、また驚いているようだ。


 驚いてもらえると、気分がいいのです!

 もうひと工夫して、さらに驚いてもらうのです!


 立体の魔法陣をもう一つ増やしてみた。


 同じ魔法陣を作ろうとすると、前よりも上手く早く描ける。



「ほい!」



 さっきの炎のすぐ隣に新しい炎が出現する。



「なんと! 同時発動まで!」


「ティア! すごいよ!」


「詠唱もしないで……信じられません! このようなことが!」



 ユタたちが、目をまん丸にするほど驚いてくれている。


 生み出された二つの炎も気分が良いのか、元気よく燃え上がっている。




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