第24話 新しい服
次の日、マリーと共に街に繰り出した。
「ティアに似合う服を探すよ」
マリーが服を選んでくれるそうだ。
確かに、私が着ているのは、ユタが持っていた白い布に穴を開けて、頭を通し、腰を紐で縛っただけの簡易的な服だ。
ちなみに、今日のマリーは真っ白い布でできた服を着ている。スカートはフリフリだ。しかも、袖や帯に綺麗な刺繍が入っており、なんだかマリーが上品に見える。
マリーの様になれるなら、とても素敵だと思う。
「服装なんて、私はどうでもいいんだけどね。でも、どっちがいいものを着ているかなんて競う者たちも多いんだよ。確かに、新しい服なんか着ると、気分はいいけどね」
「マリーの服、とってもかわいいのです!」
マリーが身体を揺らしながら照れている。
マリーの肩掛け鞄も、フリフリと揺れている。
前の使っていた鞄に比べて、一回り小さいが、これにも装飾が施されており、花を刺しているのなんかは、とてもかわいい。
「私も、それが欲しいのです!」
「そっか、鞄も必要だね。ティアに合うのがあるかなぁ」
服や鞄なんかは、街の下の方にあるらしいら。
巨大な神殿の前の道を、真っ直ぐ下へ降りていく。
道行く人たちにマリーは頭を下げられたり、挨拶をされることもあった。
気さくに返事を返すマリーは、人気者のようだ。
人気者と一緒にいられるのは、気分が良い。
マリーの手の中にいるティアを見つける者もいたが、興味がありそうな顔をしていたが、直接に聞いてくることはなかった。
大きな石の階段を降りていく。
あれが、下の街なのだろう。
上の街と比べて質素な建物が多く、庶民的な感じがする。
しかし、人の量が多い。話し声や生活音で溢れており、とても賑やかだ。
階段を降りると、巨人が二人立っている。
どでかい槍と、斧を持つ巨人だ。
マリーを見つけると、頭を下げてくれた。
「上の街の道は、あの二人が守ってくれているのよ」
「顔が怖いのです。ドイルより、強そうなのです」
「あははは。ドイルが聞いたら、きっと落ち込むね。ドイルは巨人族の長だよ。すごく強いんだから」
かわいい目のドイルは、偉かったようだ。
階段を降りた先は広場になっていた。
噴水なんかがあって、どういう構造なのか調べようとしたらマリーに捕獲されてしまった。
街並みを楽しみながら歩いていると、鍛冶屋の中にいた男の子がこっちを見ている。
男の子は驚いた顔をして、こちらに歩き出した。
「う。面倒なやつに見つかっちゃったね」
マリーが渋い顔をしている。
「悪いやつなのです?」
「そうよ! 悪いやつよ!」
マリーが、人差し指を立てながら答えた。
マリーのピンチなのです!
男の子はこちらに駆け寄ってきている。
ほ? すごい笑顔なのです。
あんまり悪いやつに見えないのです。
でも、マリーを助けないといけないのです!
ティアはマリーの手から飛び出して、男の子に向かって両手をかざす。
「あぁ! ティア! ダメだよ!」
ティアの行動にマリーが慌てている。
笑顔で手を振りながら駆け寄る男の子は、すぐそこに。
ティアは魔力を操り、堅い水の壁を作り出す。
男の子は、とびきりの笑顔のまま、水の壁に衝突した。
そのまま、ゆっくりと倒れる男の子。
「やったのです! マリーを守ったのです!」
喜びながら振り返ると、マリーは頭を抱えていた。
あれ? なんでなのです?
なんかやっちゃったのです?
マリーの身体が揺れている。
やばいのです!
怒られるのです!
ティアが身構えると、マリーは大声で笑い出した。
「傑作だったね! 面白かったよ!」
マリーは笑っている。ちょっと涙も出てる。
良かったのです。
怒られなくて、良かったのです。
ティアは、ホッと息を吐く。
でも、すぐに魔力を使ったことを怒られた。
怒られていると、男の子が身体を起こしている。
「あれ? 何だったんだ? 夢でも見てたのか?」
男の子が、マリーを見つけて笑顔に。
「マリー! 夢じゃなかった! 会いたかったよ!」
「私は、会いたくなかったよ」
マリーがため息をついている。
金髪の短い髪の男の子。
マリーと並ぶと、マリーよりは身長がある。
なんだかお似合いの二人に見えた。
「誰なのです? 悪いやつ?」
「あははは。こいつはリオン。そこまで悪いやつじゃなかったみたいだね。うっとおしいのは間違いないけどね」
マリーの言葉を聞いて、リオンは肩を落とす。
「なんだよ。マリーに会えて嬉しかっただけなのにさ」
拗ねているリオンと目が合った。
「お! なんだこのちっこいのは!」
ちっこいのはそうだけど、なんか腹が立つのです!
「ティア。こっちにおいで」
マリーに呼ばれて、定位置に飛び戻る。
「なんだ、新しい種族でも造ったのか? プルルさんに似てるね。こっちのがかわいいけどさ」
「でしょ? 今日は忙しいから、また今度ね」
名残惜しそうなリオンを置いて、マリーはスタスタとその場を離れた。
「あの人、マリーのこと好きみたいなのです」
「はぁ? 私には、もっと素敵な白ペガサスに乗った王子様が迎えに来てくれるのよ!」
ぷりぷり怒ったマリーは耳が赤くなっている。
マリーは、かわいいところばかりなのです。
そうこうしていると、一軒の建物に着いた。
素敵な外観の建物だ。
「ここは服を売っているお店だよ。結構、手が込んでて人気があるみたいだよ」
中に入ると、ずらっと衣服や布が並んでいた。
新しい布の匂いなのか、いい匂いがする。
「マリー様! このような場所に何用でしょうか?」
綺麗な女性が慌てて出てきた。
「この子に合う服や靴、鞄とかないかな?」
マリーの言葉に合わせて、ティアは棚の上に飛び出て、くるくると回る。
「ティアなのです! よろしくなのです!」
「まぁ! 可愛い!」
そこからは、マリーと女性はきゃあきゃあ言いながら服を選んでくれた。
女性の裁縫技術は凄いようで、布を選ぶとあっという間に服として着られるように仕立てていく。
十着ほど、貰えるらしい。
丁度よくティアサイズの靴もあった。
鞄はとりあえずの肩掛け鞄を作ってくれたが、もっと良い物を後日届けてくれるらしい。
マリーも、ちゃっかり色々頼んでいたようだ。
ティアが入れるポケットを付けた鞄の話なんかは、とても盛り上がっていた。
「ティアの髪は綺麗だね。青い星みたいだよ」
髪も、色々編んだりと遊ばれてしまったが、結局そのままになった。
マリーと服屋の女性によって、新しいティアが誕生した。
綺麗な白の服に、マリーとお揃いの袖模様。差し色は髪と似ている青色。
マリーの粋な計らいで、背中は少し開いている。翼を出した時に、邪魔にならないようにだ。
小さな肩掛け鞄も、小さなティアにはぴったりだった。
棚の上で、くるくると回るティア。
「ありがとなのです!」
マリーと女性の拍手が、店内に響き渡った。
「これは流行る」
服屋の女性の独り言が聞こえた。
それから、マリーが会計をしようとすると女性は笑顔で話す。
「マリー様から、お金など受け取れません。来てくださったというだけで、評判になりますから大丈夫です」
服屋の女性に丁寧にお礼を言われ、店を出た。
「良い店だったでしょ?」
「うん! また来るのです!」
二人は笑う。
そして、ユタが来る前に帰宅の途につくのであった。




