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第20話 巨人のドイル




 青い星、エイト。


 高速で移動する球体のなにか。


 それは、大気を抜けて地上へ降下していく。


 球体の空間の中には、ユタとマリー。そして、マリーの手の中にはティアがいた。


 身体にずしりと上からの圧力を感じてくる。


 空間に重力が戻ってきたようだ。


 広大な海が輝いている。ティアの星よりも海は青く見える。


 雲をぬけ、眼下の大地が近づいてくる。


 緑の森が広がる大地。


 小高い山の丘に、いくつかの建造物が見えた。


 球体の空間は速度を緩める。


 ティアはマリーの手から身を乗り出して、外を見回している。



「すごい! すごいのです! 命に満ちあふれているのです!」



 風に吹かれ、気持ちよさそうに揺れる森の木々たち。


 小高い山は、近づくにつれて迫力のある大きさであったことに気づく。


 山のふもとの開けた場所から、こちらを見ている人たちがいる。


 山の山頂に、石柱が規則正しく円を描いて並んでいる。


 どうやらその中心に降り立つようだ。


 球体の空間は、ゆっくりとその場所へ降り立った。


 地上に着くと、球体の空間が消えていく。


 空間が消えると、たくさんの音が聞こえてきた。


 風の音。木々の揺れる音。姿は見えないが、何かの生きものの声。


 騒がしい星だ。


 ティアには、その騒がしさから何か懐かしいものを感じる。


 マリーが一息をつく。



「ようこそ、私の星へ」



 マリーがにこりと笑った。

 

 ユタとマリーがこっちを見ている。



「よろしくなのです!」



 ティアはぺこりと頭を下げる。


 三人は目を合わせて、頷いた。



 石柱の陣の中には、石でできた建物があった。


 ユタはそこへ歩き出す。



「星の移動には危険も伴う。その星の環境に身体を慣らす必要があるのだ。この建物は、そのためにある」


「ティアは、すぐに適応すると思うけどね」



 マリーに抱えられたまま、三人は建物の中へ。入り口はかなり大きい。


 ユタは先に奥の部屋に進んでいく。


 マリーとティアは、石の床に模様がある部屋に残された。



「ユタがさっき言ってたのは、ここでこの星に合う力を身に纏うのよ。適応の力なんて言うけどね。もっとも、ティアは最初から自力で発現してるみたいだけどね」


「適応?」


「たとえば、息ができる空気や重力を合わせたり、病気にならないようにすることだよ。目覚めたばかりの星は、環境の変化に弱いんだよ」


「分からないことがあるけど、分かったのです!マリーの言う通りにするのです!」



 ティアは手を挙げて、マリーに従う意思を表明する。



「もう! 信じてくれるのは嬉しいけど、これからが心配になるよ!」



 マリーが頭を撫でてくれる。



「ティア! いい? 誰でも簡単に信じて良いわけじゃないからね! 星や生きものの中には、悪いことを考えるものもいるんだから!」



 マリーが真剣な顔で教えてくれた。


 マリーはいい人なのです。


 カーン! カーン! と、大きな音が鳴り響く。


 ティアはその音に驚いた。



「この鐘はね、星へ戻ってきたことを知らせる音だよ」



 ユタが戻ってきた。


 

「すぐに門番がやって来る。ティア。約束を覚えているか?」


「はい! 争わないこと! 勉強することなのです!」



 ユタの質問に、元気よく答えるティア。


 ユタはため息をつく。



「不思議な力を無闇に使わないってことが抜けているぞ」



 覚えていたのですか!

 魔力のことは知りたいことがたくさんあるのです。

 新しい場所で、新しい発見があったら、試したくなるのは確実なのです。

 でも、しょうがない。

 しばらくは、ユタの言うことを聞くのです。


 ティアは、しぶしぶ分かったという返事を返す。


 ユタは、大きなため息をついた。


 ユタの小言を聞き流していると、ドスドスと足音が聞こえてきた。


 足音の方向を見ると、ごつごつとした巨人が歩いて来ている。


 ティアは異様な見た目の巨人を見て、マリーの手の中へ隠れる。


 マリーを見ると、こっちを見てにんまりしている。


 この顔は、マリーがユタに意地悪をする時の顔だ。


 きっと、私の反応を楽しむ気なのだろう。


 マリーを楽しませるためにも、想像以上の驚きを提供したい。


 ティアは、巨人を見て思考する。


 巨人はごつごつとした岩のようなものが集まった身体をしており、手も足も器用に動いている。


 よく観察をすると、威圧感はあるが、身体が大きいだけだ。布を巻いて服がわりにしているってことは、ある程度の知能もあるのだろう。目なんかはかわいい目をしている。


 いきなり仲良くなって、マリーを驚かすのが良いかもしれない。


 巨人はユタの前まで来ると、足を止めた。



「ユタざま。おがえりを待っていまじた」


 

 巨人は、低くどもった声で言う。


 おぉ。巨人が喋った。

 


「マリーざまも、おがえりを待っていまじた」



 今度は、巨人はマリーに顔を向けて言う。


 

「ドイル。出迎え、ありがとう」



 マリーが優しく返答してる。


 

「ドイル。早速だが、適応の儀式を行いたい」


「あで? 目ざめた神がいるのでずか?」



 ユタの言葉を聞いて、巨人は周りを見渡している。


 ティアは、マリーの手から飛び出した。


 ティアの急な行動に、マリーは驚いている。


 床にぴょこんと着地して、ドイルと呼ばれた巨人に向かっておじきをする。



「ティアなのです! よろしくなのです!」



 ティアの元気の良い挨拶に、ドイルはかわいい目をパチクリさせている。



「とでもちいざな神ざまだなぁ。おではドイル。ユタざまに名前をもらった巨人族だぁ」


 

 話が通じたことに、ティアは嬉しくなる。


 ティアはドイルの元へ駆け寄り、大きな岩みたいな足元から上を見上げる。


 高くて顔が見えない。



「ちいざな神ざま。ぞんなに近くに来ると見えないぞぉ」



 ティアは魔力を操り、脚に力を込める。


 ぴょんと高く跳躍して、ドイルの肩に乗った。


 

「ドイル! いい名前なのです! 仲良くしてほしいのです!」



 ティアは素直な気持ちを口に出した。


 ドイルは固まってしまった。


 

「おでが怖くないのかぁ? 神ざまにこんなこと言われるのは、初めてだぁ」



 ドイルは少し震えている。



「ドイルは怖い人なのです?」



 ティアが首を傾げながら聞く。



「わはははははぁ。ティアざまは、ずいぶん変わった神ざまだぁ」



 ドイルは肩を揺らして笑った。


 ティアは揺れる肩から落ちないように気をつけるのであった。


 振り返ると、ユタはどうやら呆れているようだ。


 マリーは口を開けて、こっちを見ている。


 よし! 驚かせることは、成功したみたいなのです!


 ユタとマリーが手招きをして、私を呼んでいる。


 う! なんか怒られる気がするのです!

 気づかないふり作戦なのです!


 ティアはドイルの肩に座って、白々しく口笛を吹く。



「ティア! 降りて来なさい!」



 マリーが呼んでいる。


 これは無視できそうにもないのです。

 よし! ドイルに助けてもらうのです!


 ティアはドイルの頭にサッと隠れる。


 ドイルの体が揺れる。どうやら屈んでいるようだ。


 ユタの顔がすぐそこだ!


 ドイル! 裏切ったな!



「ティア。無闇に力を使うなと言っただろう?」


「ティア。簡単に他人を信じないって言ったでしょ!」



 ユタとマリーのお説教が始まってしまう。


 おぉ。見事に約束を破ってるのです。

 私はダメな子なのです。

 落ち込んだフリをして、やり過ごすのです。


 ユタとマリーのお説教を大人しく聞いていると、ドイルが立ち上がった。


 ドイルの揺れる体、肩のごつごつに掴まる。



「あんまりティアざまをいじめるなぁ」



 ドイル! 初めて会った私のために!

 なんていいやつなのです!



 ユタとマリーが、ドイルになんか言い訳している。


 結局は、ティアが約束を破ったことが悪いということになり、ティアは大人しく謝ったのであった。


 しかし、ドイルも一緒にお説教を受けてくれた。


 ドイルはいいやつなのです。


 

「さて、適応の儀式を済ませるぞ。早く美味いものが食べたいだろう?」

 

「美味いもの! 早く食べに行くのです!」



 ユタの一言で、場が和らぐ。


 ティアは目を輝かせながら走り回り、マリーに捕まえられた。


 笑い声の響き渡る部屋。


 ドイルも肩を揺らして笑っていた。




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