第16話 朝起きて
日の出とともに、世界は明るくなる。
海に反射したキラキラと輝く朝日たち。
ティアはむにゃむにゃと目覚める。
寝ぼけながらマリーの身体を探す。
マリーの身体の上で眠りについたのに、マリーはいない。
ティアは慌てて、辺りを探す。
「あら? 起きたね。おはよう」
マリーが、ティアに気づいて挨拶をしてくれた。
水の小島の端に、小さく丸まって座っていたマリー。
ユタは、水のイスに身体を預けるように寝ているようだ。
ティアは安心して息を吐く。
「起こしちゃダメだよ。もう少し休ませてあげて」
マリーが小声で言う。
マリーの手招きに、ティアは静かに飛び立ちマリーの腕の中へ。
マリーの手をぎゅっと握る。
「どうしたの?」
「いなくなったのかと思ったのです。ひとりぼっちは嫌なのです」
「あはは。ティアを置いて、どこにも行かないよ」
ティアも笑う。
「ほんと? マリーとずっと一緒なのです!」
「ずっと一緒……そうだね。そうできたらいいね」
マリーの様子がちょっと変だ。
「マリー、変なのです。なんだか寂しそうなのです」
ティアはマリーの頭に登り、頭をなでる。
マリーは声を抑えて笑ってくれた。
「ティアは優しいね。……そうね! この星に太陽が昇るのを見てたら、なんだか変な気持ちになったみたい」
ティアは、座り直したマリーの腕の中に戻り、太陽を見る。
マリーが太陽を指差した。
「あの太陽は、ポロンよ。私たちの親みたいなものね」
「ほ?」
「私たち星は、一つの星に導かれて生まれるの。ポロンは私たちの親星なのよ」
「ポロンにも会えるのです?」
「ポロンは卵。今は会えないよ。ポロンが目覚めれば、私たちは一つになるの」
「一つになる?」
「うん。永い星の運命は、いいことばかりではないよ。辛いことの方が多すぎるぐらい」
「なんとなく分かるのです」
「ポロンの目覚めと同時に、私たちは消えてしまうと言われているよ。でも、消えることを願う星も多いわ」
「私も消えたいって、試したことがあるのです」
マリーは飛び立ち上がり、ティアを両手で掴む。
マリーの身体は震えている。
「うそ! 星に願ってしまったの!?」
「ほ? 暗闇の時の話なのです」
「暗闇? どういうこと?」
マリーの顔は真剣だ。
「ティア。もしも、願いを叶えてくれそうな光に出会うことがあったら、消えることを望んではいけないよ」
「願いを叶えてくれそうな光? あの光のことかな? 消えたいとは願ってないのです」
マリーは良かったと言って、ティアを抱きしめた。
ポツポツと雨が降ってきた。
上空に山のような白い雲が浮かんでいる。天気雨のようだ。
「雨か」
ユタの声がする。目を覚ましたようだ。
マリーは雨を見て喜んでいる。
「やった! 身体を洗うからユタはこっちを見ないでよね!」
ユタは呆れた仕草をした後、身体を起こして背中を向けた。
「ユタ! おはよう!」
マリーがユタへ挨拶を。
ユタは振り返り、返事を返そうとする。
瞬間、ユタの顔面にマリーの投げた鞄がぶつかる。
「見ないでって言ったよね!」
ユタは頭をポリポリとかいて、また背中を向ける。
マリーが服を脱いでいく。
ティアは羽ばたいてユタの元へ。
「ユタ! おはよう!」
「ティア、おはよう」
ユタはティアを見て、にこりと笑う。
ティアもにこりと笑い、ユタの頭に乗っかる。
「休めたのです? 疲れてない?」
「あぁ。よく休めたよ。助かった」
ユタの返事を聞いて、ティアは頭を揺らして鼻歌を。
後ろから、鼻歌につられたマリーの鼻歌が聞こえる。
「今日は何をするのです?」
「そうだな。ティアはどうしたいんだ?」
「ほ?」
思わぬ質問にティアは考える。
やろうとしてたことは、燃える世界の海中探索に、魔力の研究も色々試したいのです。
特に、火と大地の魔力はまだ手つかずなのです。
でも、今は二人と一緒にいる方が楽しいのです。
新しい体験が多いほうがいいのです。
「二人と一緒だったら、なんでもいいのです!」
「そうか。俺たちは、マリーの星に一度戻らないといけない。この星は、この身体で過ごすのは大変だからな」
「え! 嫌なのです! 一人にしないでほしいのです!」
ティアはぺたっとユタの顔に抱きつく。
ユタはティアの首根っこを掴んで持つ。
手をばたつかせるティア。
「置いていくなどと言っていない。ティアも来ないか? 嫌なら何か方法を考えーー」
「行くのです!」
ユタが言い終える前に、ティアはビシッと指を立てて答える。
ユタが手を離すと、ティアはユタの周りを飛び回る。
「楽しみなのです! でも、マリーの星ってことはマリーの許可はいらないのです?」
「あぁ、マリーの星は、星たちが集う星だからな。なかなか暮らすに適する星は珍しいのだぞ? 我らの宙域の星たちは、目覚めたらまずはマリーの星へ避難してもらうことが多いな」
「そうなのですか!」
「多くの星たちと、生きものがいるからな。きっと刺激を受けるだろう。ティアも知らなければならないことを、そこで勉強してほしい」
「分かったのです! 頑張るのです!」
ティアは喜びながら、マリーの元へ。
「マリー! 聞いた? マリーの星に行くのです!」
「聞こえてたよ。ティアと一緒に居られるのは嬉しいよ」
マリーが笑顔になると、素敵な香りがする。
マリーの身体にふわふわの泡がたくさんついている。
「なんなのです! そのあわあわは! すてきな匂いなのです!」
「ふふ。いいでしょ! 私の星に来たらゆっくり教えてあげるよ。ほら、こっちに来なさい」
マリーは、ティアの身体と髪を丁寧に洗ってくれた。
すてきな香りに包まれてティアはニッコニコだ。
ちなみに、あわあわがティアの目に入って騒いで、ユタが振り返ってしまい、ユタはマリーに怒られたりもした。
雨はすぐにやんで、朝食も食べた。
ティアはたくさん食べたようだ。
平和な時間が過ぎていく。
「二人と居ると、楽しくてしょうがないのです!」
ティアは笑う。
マリーとユタも笑う。
今までの孤独を埋め合わせるように、ティアは、今、この時を楽しんでいる。
孤独だった星に、笑い声がこだましていた。




