第15話 星に願いを
引き続き、結界の張られた水の小島にて。
ティアは、ユタとマリーに質問攻めにあっていた。
魔力やこの星で過ごした時のこと。
どうやら、普通の人ではできないことがティアにはできるらしい。
一度に答えられない質問の数でも、私は思考が速いので対応できちゃうのです。
ティアは、にやりと笑う。
「何よその顔は! 変なこと考えてないでしょうね!」
マリーが笑いながら言う。
いいツッコミなのです。
「もう! 何してもかわいいんだから! ずるいよ!」
マリーにかわいいと言われると、とても嬉しい。
ユタに言われたら、どんな気持ちになるんだろうと興味がわいた。
「ユタは、私はかわいいと思うのです?」
ユタが目をパチクリさせている。
なんか、ものすごく恥ずかしいことを聞いた気持ちになった。
「う、うそなのです! 何も言ってないのです!」
ティアは慌ててしまった!
マリーがニヤニヤしている。
「今のは、だいぶあざとかったよ?」
くそ! なんか負けた気分なのです!
ティアは思いつきを言葉にする危険さを学んだ
しかし、ただでは転ぶわけにはいかない。
ティアは、ニコニコと優しい笑みを浮かべるのであった。
「どんな感情なのよ? その顔は!」
マリーは笑いながら言うが、それはティアの小さな抵抗であった。
ユタを見ると、声を出して笑っていた。
う! 恥ずかしい!
なんなんだ! なんなんだ! なんなんだ!
この気持ちは!!
ユタは確かに、かっこいいのです!
でも、おじさんなのです!
変な気分なのです!
ティアがもだえていると、マリーがそれに気づいたようだ。
「ユタは女たらしだから、やめておいたほうがいいよ」
「何を言っている! 俺はいつも嫌がっているだろうが!」
ユタがなんか必死だ。あたふたしている。
ティアの視線に気づいたユタ。
「待て! 俺にそんな趣味はないぞ!」
はて? どういう意味なのです?
ティアはポカンとしている。
「ティアが子供で良かったね」
マリーがユタの腰をポンと叩く。
ユタはガクッと肩を落とした。
よく分からないけど、ユタには何かあるのだろう。
ティアは、できればユタを応援してあげたいと思った。
その後は、食事の片付けをしながらユタが言う。
「他の星には、できるだけ痕跡を残してはいけない。特に、種なんかは星に影響を及ぼしてしまう可能性が高いからな。落としてはいけないぞ」
ユタは、テキパキと鞄に食事に使った葉っぱなんかをしまっていく。
手伝っていたマリーと目があった、マリーはにこりと笑う。
ティアもつられて笑った。
すると、マリーは落ちていた豆を、おもむろに水の小島の外へポイッと投げた。
ユタがびっくりしている。
「お、おいっ!」
ユタは見たこともない速さで、豆を追いかけて空へ飛び込んでいった。
すぐさま、ティアとマリーは小島の端へ移動して落ちていくユタを眺める。
「すごく速かったね」
「うん! 速かったのです!」
ユタが落ちていく。
お! ユタが喜んでいるのです。
「キャッチしたみたいね。さすがユタ様」
マリーが笑っている。
ティアも面白かったので、笑ってしまった。
ユタは、そのまま海にボチャンと落ちた。
水の小島で正座するマリーとティア。
二人の前には、ユタが腕を組んで不機嫌そうにしていた。
ユタの身体は無事だったが、服は少しボロボロだ。端の方とかは溶けてる。
「やっていいことと、悪いことがあるな」
ティアが、ピシッと手を上げる。
「ユタ! なんで私も怒られるのです?」
「ティアは絶対にマリーの真似をする。これは予感ではない、確信している。今のうちから教えておかないといけない」
「そんなのないのです!」
ティアはそれを聞いて、涙ぐむ。
ユタはハッとして、慌てる。
「ティア! ほんとに怒ったりはしていない! ティアの今後を心配してだな! す、すまん! 泣くのだけはやめてくれ!」
ユタはうろたえている。
なんか、すぐ許してもらえたのです。
ま、私はなんにもしていないのです!
怒られるのは心外なのです!
「ユタが悪いよ」
マリーが真面目な顔で言う。
ユタは泣きそうな顔でマリーを見て、肩を落とす。
こうして、食事の片付けは、滞りなく終わるのであった。
太陽が水平線に隠れようとしている。
オレンジ色の光が、世界を照らしている。
「きれいだね」
「ステキなのです」
マリーとマリーの肩に乗るティアは、夕暮れを楽しんでいた。
ユタが話しかけてきた。
「ティア。この島はどれくらい持つんだ?」
「私が意識してる間は、ずっと大丈夫だと思うのです!」
「ティアが寝たとしても大丈夫なのか?」
ティアはニッと笑い、親指を立てて答えた。
マリーが笑っている。
ユタは休む準備を始めたようだ。
マリーも背筋を伸ばして、あくびをする。
ティアはその拍子に肩から滑り落ちた。
「ごめん、ごめん」
謝るマリーは眠そうだ。
「マリーとユタは、ずっと起きていたのです?」
「そうね。二日は起きっぱなしだよ。ちょっと疲れてるかもね」
「二日? マリーの星からここはすぐに来れるものなのです?」
「私たちの移動には儀式が必要なのよ。儀式の準備さえできれば、ここまでは少しの時間で来れるんだよ」
マリーが目をこすりながら答えてくれた。
ユタは水のイスに座っている。
「夜番はする。ティアも寝ていいぞ」
「夜番? 危ないことでもあるのです?」
「何が起こるか分からんからな。念には念をってやつだな」
「ユタは寝ないのです?」
「ティアが、これだけ快適な場所を作ってくれたのだ。夜番をしながらでも、しっかり休めるぞ」
ユタにお礼を言って、ティアは横になったマリーの身体に飛び乗った。
日が沈み、辺りは一気に暗くなる。
星たちが夜空を輝かせ始めた。
マリーが空に向かって指をさす。
「あれが私の星だよ」
夜空には、無数の星たちが輝いている。
「多すぎて、どれがどれだか分かんないのです」
「あはは。そのうち分かるようになるよ」
マリーとユタは、星のことをたくさん教えてくれた。
とても優しい時間が過ぎていく。
いつしかティアは眠ってしまった。
「不思議な子。私、この子を気に入っちゃったよ」
「そうか」
「ユタ。本当にありがとう」
「そうか。マリーも少し休むといい」
マリーは目を閉じると、すぐに眠りに落ちた。
夜は更けていく。
ユタは、マリーとティアの寝顔を見て微笑んだ後、寂しい顔をする。
夜空に流れ星が光る。
「運命を変えてくれ」
ユタは真剣な表情で、星に願った。
儚く消えた流れ星に、その願いは届いたのであろうか。




