第13話 会話
ティアたちは、水の魔力で生み出された水の小島でくつろいでいた。
マリーは水のベッドに横たわっている。
「もう、このベッド以外で寝れない身体になっちゃうよ」
マリーはとても幸せそうだ。
「柔らかさがいい感じなのです!」
ティアはマリーの姿を見て、指を立てながら言う。
隣では、ユタはリクライニングチェアーのような水のイスに座っている。
「まさか、このような場所で落ち着くことができるなんてな」
ティアがおもてなしに何気なく作った休めるグッズ。
魔力を使ってこういうものを作るのは珍しいことのようだ。
マリーもユタも驚いていた。
ティアも試したことがなかったが、翼を作り直す過程を体験していたため、これぐらいなら作れそうだと試しに作ってみたのだ。
「うむ、座り心地はなかなかだな」
ユタが目をつぶり、ほっと一息をつく。
ーーユタが目を見開く。
「って、一息ついてる場合じゃないぞ!」
ユタは飛び立ち上がった。
「なんなんだ! この子は! 見たことも聞いたこともない力を使うぞ!」
「クロトンがこういう研究をしていたよ。夢みたいな話だから聞き流しちゃったけどね」
マリーたちが騒ぎながら、知らない人の話をしている。
ティアは自分の作ったものを、楽しんでくれている人がいることに満足感を覚えていた。
「でも、ユタの言うとおりね。ティアに聞きたいことがたくさんあるのよ」
マリーはそう言いながら、水のベッドからノロノロと起きてきた。
「なんでも聞いてほしいのです!」
ティアはぴょんと羽ばたいて、マリーの手のひらにちょこんと乗る。
「ティアは可愛いね」
マリーはティアを見ながら、うっとりとしている。
ティアはまた褒められて、ご満悦だ。
しばらくして、マリーが話し出す。
「ティア。ここは息をするのも難しくて、酸の海が広がる世界よ」
「そうなのです?」
「そうだよ。ティアはどうやって生き延びてきたの?」
「呼吸は普通にできてたのです。海の中に落ちた時も平気だったのです」
マリーの質問に答えていると、ユタが話に入ってきた。
「その子には、身体を覆う結界が見えるな」
「魔力バリアのこと?」
ティアは自分の身体を覆う魔力バリアを見やすいように、魔力を高めて光らせる。
「なっ!? すごい力だな」
ユタとマリーは目を見開いて見ている。
「私達にも、同じような力があるのよ。ティアの力には及ばないけどね」
ティアは目を凝らして、魔力の流れを見る。
マリーとユタの身体の周りに魔力が見える。
その魔力は、細い糸が身体を包むように編み込まれているように見える。
ところどころ魔力の糸が切れていて繋がっていない場所もある。
魔力のことはよく分からないが、翼を魔力で編み込んだ経験から、もっとこうした方が効率がいいのにと考えながら見ていると、ユタが震えながら話しかけてきた。
「も、もしかしてティアは、星の力が見えるのか?」
「星の力? それは分からないけど、私が魔力と呼んでいる不思議な力は見えるのです!」
「魔力?」
「身体の中にある力と、この辺りに漂っている力のことです」
身振りを交えて話すティア。
ユタは腕を組み、一人で納得している。
「そうか、魔力と名付けたのか。それは私達が星の力のと呼んでいる力のようだな」
「ティアは、その力を思い通りに使えるのか?」
「どうだろう? これから色々調べたいと思っていたのです」
ティアの答えに、ユタは胸を張る。
「私にもその力が見えるのだ。私が使い方を教えーー」
「ティアって、身体を持ってどれくらい経つの?」
マリーが話に割って入ってきた。
ユタはムッした顔をするが、マリーを見る目は何か諦めているような感じだ。
ティアは笑顔で答える。
「えっと、三十万カウントもないくらいなのです」
「三十万カウント?」
「こんな感じで数を数えるのです!」
ティアは、イチ、ニ、サンと数を数えていく。
「こんな感じで、三十万カウント!」
「ふ〜ん、大体1カウント1秒ぐらいね。えっと、1日は……86400秒でしょ? 三十万ってことは……3日とちょっと!?」
「3日! 日! なぜか知っている言葉だ! また新しい言葉に出会えた!」
ティアは無邪気にはしゃいでいる。
マリーがユタを見ながらニヤニヤしている。
「生まれて3日でこの力? ふふふ、ユタ様も形無しね」
ユタはそれを聞いて、がっくりと肩を落とす。
マリーがティアの頭を指先でなでる。
「ティアは可愛いだけじゃなくて、天才だね」
ティアは嬉しくて、もだえている。
マリーがティアの翼を指先で触る。
「もしかして、このキレイな翼も魔力で作ったの?」
ティアは翼を大きく広げて、くるくると回る。
「いいでしょ? 羽の付け方にこだわりがあるのです」
「すてきだよ! 私にも作れるかな?」
「教えてあげるのです!」
マリーは喜んだ。
ユタが後ろで、また難しい顔をしている。
「ユタも教えてもらったらどう?」
マリーがユタにそう言うと、ウインクをした。
ユタは、ため息をつく。
「まずは、マリーの星に戻ってから考えよう。ここでは食べれるものもないようだからな」
「そういえば、お腹が減ったわね」
マリーは肩からぶら下げていた鞄を開けて、中を見ている。
「それはなんなのです?」
「ふふ、一体何なんでしょう?」
マリーは、ジャラジャラと音が鳴る小袋の中からキレイな石をいくつか手に取った。
ティアは興味津々だ。
ユタも肩から大きな鞄をおろし、何やら準備を始めている。
マリーは水の小島の端に、その石を一つずつ置いていき一周した。
「これぐらいかな。ティア! 念のために空で待っててくれる?」
ティアは頷くと、羽ばたいて少しだけ距離を取った。
ふと見えた魔力の流れを追うと、マリーから出る魔力が置いた石へ向かう。
「我らの過ごせる空間を」
マリーが真面目な顔でなんか言ってる。
マリーの魔力が置いた石に触れると、そこからは魔力が機械的な動きで展開されていく。
すぐに、水の小島をすっぽりと囲う魔力バリアのようなものができた。
ティアがその魔力の流れをまじまじと見ていると、マリーが呼んでいる。
「おーい! ティアー! この中に入って来れる? 空気とか問題ないかな? 慎重にだよー!」
「はーい!」
ティアは返事をすると、躊躇なくその魔力空間に飛び入った。
マリーは慌てて駆け寄り、身体と両手を使ってティアを抱きとめる。
「ティア! 大丈夫!? 息はできる!?」
慌てているマリー。
マリーの両手の中には、マリーを見て首を傾げるティア。
「これくらい、なんともないのです」
ティアが笑うのを見て、安心するマリー。
しかし、マリーの顔は少し怒っているようだ。
「こら! 慎重にって言ったら、慎重に行動しなさい! 心配したでしょ!」
ティアは、マリーの迫力に少し驚いたが、なんだか無性に嬉しい。
誰かに心配されることに、感激してしまう。
小さなティアの頬をポロリと涙がこぼれる。
ティアの涙を見て、ものすごく慌てるマリーとユタ。
「大丈夫なのです。これは嬉し涙なのです」
ティアは、にこっと笑う。
マリーとユタは、安心して一息をつくのであった。




