すーちゃんの夢の国
すーちゃんが目を覚ましたとき、部屋には誰もいませんでした。
「まま?」
すーちゃんは、辺りを見回してままを探します。すると、ソファーに座っていたくまさんのぬいぐるみが、すーちゃんをじっと見つめて言いました。
「ままは部屋で寝ているよ。
今は、子どもと僕たち夢の住民の時間だからね」
「夢の住民ってなあに?」
「夢の住民というのは、僕たちのことさ。
ほら、すーちゃん。見てごらん。みんなすーちゃんの事を見ているよ」
くまさんに言われて辺りを見渡すと、いろいろなおもちゃや妖精達がすーちゃんを見ています。中には、すーちゃんがかんしゃくを起こして窓の外に投げてしまい、なくしてしまったキリンさんの小さなぬいぐるみもいました。
「キリンさん、ごめんなさい。すーちゃんのところに戻って来てくれたの?」
「もちろん、もう、窓の外へ投げたりしないでね」
キリンさんは、すーちゃんにそういうと、背中に乗るように言いました。
「でも、キリンさんに乗るには、すーちゃんは大きくない?」
すーちゃんは、小さなキリンさんの背中に乗るのをためらいます。
すると、くまさんがにっこり笑っていいました。
「大丈夫だよ、すーちゃん。
ここはすーちゃんの夢の国だからね」
促されて、すーちゃんがキリンさんに乗ろうとすると、すーちゃんの身体はどんどん小さくなり、キリンさんの背中にストンと収まりました。
「すごいすごい」
キリンさんは、すーちゃんを乗せて走り回りました。
すーちゃんの子ども部屋を抜けて、リビングを抜け、キッチンの窓から外へ飛び出し、夜空を駆けていきます。
「すごいすご〜い」
すーちゃんはまた叫びます。
その間も、キリンさんはどんどん走る続け、夜空に高く駆け上がって行きました。
甘いミルクの河をわたり、透明なキャンディの星々の間を通り抜け、すーちゃんときりんさんとくまさんは、たくさんキャンディを舐めて遊びました。
そして、いつの間にか空の一部が赤くなっていました。
「そろそろ、あそびの時間も終わりだね」
くまさんとキリンさんは、すーちゃんを目の前に真っ暗な空間が広がる場所へ連れて来ました。
「怖い」
あまりの暗さに、すーちゃんはキリンさんの首にしがみつきます。
「どうする?、すーちゃん。
ここから先は、僕たち夢の国のじゅうみんが入れない、夢の失われた王国だよ。
ここを通ればすーちゃんはままのところへ戻れる。そのかわり、ボク達は元のぬいぐるみに戻ってしまう」
「ここを通らないと、もうままに会えないの?」
「そう、ままには会えない。
そのかわり、すーちゃんはずっとボク達と遊んでいられる」
「いや〜、まま!!」
すーちゃんは、大声で叫んで駆けていきました。キリンさんとくまさんが、いっしょうけんめいすーちゃんを止めようとしています。しかしすーちゃんには、もうキリンさんの声もくまさんの声も聞こえてはいませんでした。
そして、すーちゃんが闇にとけ込んだとたん、すーちゃんは闇のそこに落ちていってしまいました。
「すーちゃん、すーちゃん」
ままは、寝ながら泣いているすーちゃんをやさしく起こしました。
「すーちゃん、もう起きて幼稚園へ行くしたくをしなきゃ…」
「まま!!」
すーちゃんは、ままにがばっと抱きつきました。
「あのね、あのね、
すーちゃん、もうままのところへ帰れないかと思った…」
まだ半分泣きながら、ままに夢の話をはじめるすーちゃんを、ソファーに座ったくまさんとキリンさんがやさしく見ていました。
すーちゃん、夜になったらまたあそぼうね