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底辺へようこそ!【旧:頑張れ!毎日投稿!!】  作者: 冬空
鬱なる世界にお別れを(作者イチオシ)
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アホの子ノーア

「大丈夫か?」

「えぇ、難しけれど楽しいわね」


私達は首都から遠く離れた地まで来ていた。

国境を越えるにはまだ遠いけれど、十分距離を稼いだと思う。

そんな私は今、火起こしに挑戦していた。

火種の籠った薪に息を吹いて火の火力を高める。

最初はハリーがやる予定だったのだけれど、私がやってみたいと志願したのだ。

平民になったからには覚えられることは覚えたいとの願いから。

ハリーに見守ってもらいながら吹くのだけど、中々どうして火が燃え広がらない。

逆に火が弱まっているような気さえする。

調整は難しかったけれど、何度か繰り返す内に安定して火力を高めることが出来た。


「ひゅ~、上手く行ったじゃねぇか。素人でこんなに早く上手く行く奴はいないぞ」

「ありがとう!」


ハリーに褒めてもらえるのは嬉しい。

頑張ったご褒美に頭を撫でて欲しいと願い出れば、ハリーは物好きだなぁと言って撫でてくれた。

正直、病み付きだ。

あの時撫でられた感触が忘れられなくて事ある毎にお願いしている。

私が頑張って火起こしした焚き火の回りに串に刺した魚が並べられて行く。

何時もは干し肉を炙ったりするのだけれど、川が近くにあったためハリーが捕って来てくれたのだ。

火に炙られて脂が滴る。魚の香ばしい匂いが漂って来て、その美味しそうな匂いに腹を空かす。

不意にくぅ~と可愛らしい音が私のお腹から鳴った。


「うぅ!」

「ハハハ!後もう少しで出来るから楽しみにしてろよ。旨いもん食わせてやるからよぉ」


赤面してお腹を抑える私を見てハリーは笑う。

さらに羞恥心が強くなる。


「そんなに笑わなくても良いじゃない!!生理現象よ!生理現象!!」


お腹が空いたら誰だって鳴るでしょう?

それがごく普通なんだし。

それを笑うなんて酷いわ!

プリプリと怒る私の頭をハリーはなでる。


「すまんすまん。これで許してくれ」

「もぉ!!」


撫でられた程度で怒りが収まるほど私の怒りは安くない!

それを分からせてやらなきゃ私の怒りは収まらない!!


「えい!えい!こうしてやる!!」

「プハッ!や、やめろ!そこは駄目なんだ!!アハ!ハハハハハハハ!!」


ハリーの脇腹を擽る。

ハリーはここが弱点だ。

この前、偶然手が脇に触れた際、とても可愛らしい声を上げたの。

ひゃう!?よ。ひゃう!?。

とても可愛らしい声に私の中の何かが目覚めそうになったわ。

またその声が聞きたくて脇腹を擽るのだけど、中々あの時の声を上げてくれない。

手強いわね。

どうすれば良いのかと考える私に迫る魔の手。

私はそれに気付くのが遅れた。

ドン!と音が鳴る。

気が付けば私は床に押し倒されていた。

バクバクと鳴る心臓。

恐る恐る顔を上に向ければ私を見るハリー。

その顔がゆっくりと私に迫る。

更に激しくなる心臓に赤く染まる顔。

壁ドンに迫る顔面。

ここまで来て悟らない私ではない。

受け入れる準備は出来ていた。

目を閉じて唇を差し出す。

今か今かと待ちわびる私にハリーは囁き掛ける。


「キスでも期待したか?」

「ひぅ!?」


心臓が飛び出るかと思った。

あまりにもイケボで一瞬、頭が真っ白になる。

耳を擽る心地好いボイスは続く。


「悪い子には仕置きが必要だ。何をしたらノーアは嫌がる?」

「そ、それは……」


思い浮かぶ数々のアイデア(嫌なこと)

その中でも今もっともして欲しくないことは――。


「さっ!魚を食べられないことです……!!」


あの美味しそうな魚を食べれないなんて地獄だ。

ハリーだけ美味しい物を食べて私が干し肉なんて嫌だ。

美味しい物は一緒に食べたい。

そう涙目で訴える私にハリーは笑う。


「じゃあ、もう2度としないって約束するか?」

「うぅ……はい。約束します」


本当は嫌だったけれど、ハリーと一緒に食べれなくなることに比べたら些末な事だ。

私は断腸の思いで約束を交わす。


「契約成立ってな。魚も焼けたことだし、食べようぜ」

「………はい」


しょんぼりしつつ食べた魚はしょっぱかった。

でも、美味しい。

それはやはりハリーと食べられて嬉しいからだろう。

そこでふと思った。

これ、私の起こした火でハリーの捕って来た魚を焼いた。

もしやこれ、共同作業と言えるのでは?

思い出すは結婚式の映像。

新郎新婦が2人がかりで包丁を持ち上げケーキを切る光景。

これもある意味そうではないかと思うのだ。

そう考えるだけでネガティブな思いが吹き飛ぶ。

嬉々として食べ始めた私にハリーは不思議そうにしてたけれど、気にしない。

この料理を味わわねば。

2人の合作の味を記憶に刻み込むのだ。

その時の私はそれだけの事を考えて食事を楽しんだのであった。

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