没ネタ『邪神召喚』
これすっっごい昔に書いたボツです。
旧執筆中の所にあったんで投稿します。
中途半端なクセに9000文字あるとか言う意味分からん量なんで読む際は覚悟した方が良いかと。
ちなみに、私はその文字数を見た時点で読むのを諦めました。
「我らが神よ!!邪悪なる天空の神よ!!我の願いを聞き届けたまえ!!」
遺跡と思われる場所で、一人のヒョロガリの男が天に向かって叫んだ。
すると、空が……いや、世界全てが暗き光に照らされたかと思う程に周囲の光景がガラリと白の存在しない、黒・紫・赤色で構成された世界に変わる。
そんな異常事態に男は驚いた様子は無く、まるで、それが当たり前だとばかりに天を見続ける。
そんな異常事態の中、突如として何も居ない筈の空から声が響く。
『ほぉう……我、邪天神ハズカシイと知った上で願うか。相応の供物も用意したんだろうな?』
「はっ!!ここに!!」
男はそれにも驚いた様子は無く、忠誠のポーズをとると目の前に魔方陣を生み出す。
その魔方陣の中から眩い光を放ちながらある物が出てくる。
『おお!!これは……』
普通なら見えない程の光量を放ってる筈だが、邪天神ハズカシイは見えてるのか歓喜の声を上げた。
「気に入っていただけたようで何よりでございます」
歓喜の声に男は至上の喜びを感じており、お礼を言う声は震えていた。
『うむ。中々に素晴らしい供物だ。お前の願いを聞き届けてやろう』
その言葉に男は涙を溢しながら更なる歓喜に打ち震える。
「ありがたき幸せ!!」
『ふっん。そんな御託なぞ良いから、さっさと願いを言え』
ハズカシイは男の歓喜など興味が無いとばかりに急かす。
「はっ!!我の願いはただ一つ……世界を滅ぼしていただきたいのです」
『それは何故だ?』
「世界を滅ぼす」この世界で生きる者の言葉だとは思えず、ハズカシイはその願いの理由を問うた。
「我はここ何十年と人々をより良くしようと努力し続けました。しかし、どれだけ努力をしようと、人の悪しき部分は消える事は無く、逆に強くなる一方。我は、私はその結果に落胆しました」
男は話して行く内に、狂気を感じられる気配から冷静沈着な気配に変わって行く。
『それで世界を滅ぼせと考えたのか?』
ハズカシイは他人任せな力に頼るのかと言外に男に問うた。
「いいえ。その後も解決しようと何度も頭を悩ませ、実行し続けました。ですが、減ることはあっても無くなる事はありませんでした」
男はそう言うと俯く。
『どうしようも無くなった結果、我に頼る事にしたのか?』
ハズカシイは供物等、今はどうでも良く。自分に世界を滅ぼして欲しいと頼む男の真意を探ろうとする。
「ふっ。邪天神様に嘘は通じませんか……」
何を思ったのか分からないが、顔を上げた男の表情は何処かスッキリとしていた。
『何を言っておる?』
男の発言に神とは言えども意味が分からないらしく、戸惑いの声で男に聞き返した。それに男は薄ら笑いを浮かべて答える。
「私が邪天神様を召喚した理由、もう理解されてるのでしょう?」
(な、何の事だ?我を召喚して世界を滅ぼして欲しいと願う為ではなかったのか?)
自分が何かを理解していると思いこんでいる男の言葉にハズカシイは混乱した。
「沈黙が答えと言う訳ですね……流石、邪天神様ですね」
「何を言っておるのだ、お前は?」
勝手に納得して話を進めて行く男に、思わず聞いてしまう。
「何を言ってるのか、ですか……そんな見え透いた嘘は止めていただきたい!」
(ほ、本当に何なのだ。この男は?)
落ち着いたかと思えば怒りだす男に、ハズカシイは困惑する。
「いえ。もしかしたら、私に怒りを抱かせる事で私の手の内を探ろうとしてる?」
怒っかと思えばブツブツと独り言を呟き始める男に、ハズカシイはさらに困惑した。
(訳が分からんぞ。手の内を探すやら何やら言っておるが、我はそんな事を意図して言っておる訳では無いぞ?なのに、目の前に居る男は可笑しな事を言い続ける。この男は何なのだろうか……)
神をしても、可笑しいと言わしめる男の独り言は止まる事を知らない。
「いいや。神……それも邪神ならばそれだけで終わらせない筈。神の考えは人には理解できないと言われているが、今、ここで神の考えを理解しなければ私は何も出来ないまま終わってしまう。それだけは認められない。私の数十年……違う。人類の為ならば私の数十年など無価値。今は自身のかけた年月では無く、人類の為だけに心を、思考を、私と言う存在全てを使え」
どんどん可笑しな事を呟き続ける男にハズカシイは困惑を通り越して呆れてしまい、捧げられた供物に目を向ける。
そこには、猫や犬、狐、兎等々、色々な種類の動物や魔物達が大きな檻の中に閉じ込められていた。
(あんな可笑しな男を見るよりも、愛くるしい生物を見た方がよっぽど良い……)
檻の中でゴロゴロと転がったり、怯えたりする姿を見て、ハズカシイは心を満たされて行く。
(ああ、早くお前達に触れ合いたい、散歩をさせたいな……)
今のハズカシイの頭の中には男ことなど無く、ただただ檻の中に居る生物達でいっぱいだった。
だがらこそ、男の行動に気づけない。
「……ですから、悪意など見抜ける。罠を張った所でバレてしまう。ならば、悪意など入りようも無い真っ向勝負をすれば良い」
男は結論を出すと、供物に夢中なハズカシイに向けて大声を上げる。
「邪天神、ハズカシイ!!アナタに真っ向勝負を挑ませていただく!!!」
『な、なんだ突然……』
突然の大声にハズカシイは怯えてしまう。
「この勝負で私は一切の卑怯な事はしないと誓おう!!」
『…………』
自分勝手に話を進めて行く男に、ハズカシイはフツフツと怒りが沸いてくる。
「これよ『なぜ、邪神である我を無視して話を進めるのだ!!我は戦う等と言ってはおらんぞ!!』……」
怒気を込めた声に話を遮られた男は無機質な瞳でハズカシイを見詰めた。
『な、なんだ……何が言いたいのだ!!』
その瞳に恐怖を感じたハズカシイは怒鳴り声を上げて聞き返すと、男は淡白な声で応える。
「私は自身の身がどうなろうと構わない。ただ、人類から悪しきモノを取り除ければ良い」
またも、意味不明な事を言う男にハズカシイは不気味な恐さを感じた。
『ど、どうしてそれが世界を滅ぼす事に繋がる』
男はハズカシイの問いに答えを持ち合わせて無いらしく、自問自答を始めた。
「どうして?……どうしてだろうか?何故かは分からないが、そうしろと囁いて来る。それは何故だ?人類を救えるからだ。本当にそれで人類をよく出来るのか?分からない。何故かは分からない。そうしろと私が言っている。私とは誰だ?私は私だ。私は私を知らない。私は私を知っている。それは誰だ?」
最後の自答には男とは別の声が重なって聞こえた。その様子を見ていたハズカシイは一種の既視感を覚える。
(これは何処かで見覚えがある。いつだったかは忘れたが、自身すらも忘れて私を呼び出して聞いて来た奴が居たような……?)
そうとう昔の事だったからか、ハズカシイは中々その存在について思い出せない。
(奴はなんて言ってたか……確か『私は私が誰かを思い出したい。何か大切な事を忘れているような気がする?』だったか?意味不明なのは目の前にいる男と変わらないが、あの時は思い出すのに協力した筈だ。その時は確か、何百年とかかったな。解決する間も奴は幾度として忘れて何処かに行こうとしたり、自問自答を始めたりしたのを止める毎日は大変で辛かったが、なんとか名前を思い出しただったか?いや、探しだしたか?した筈だ。その時に名前は知ったのだが、いかんせん古い記憶だからな~~記憶の奥底にあって思い出せん。はぁ、最後の人踏ん張りだ、頑張るのだぞ、我)
苦労人の気配を漂わせつつ、ハズカシイはこの状況を解決できるキーを思い出すべく記憶の海の奥底へと意識を潜らせて行く。
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『それで、お前はどうして忘れたのか思い出せたか?』
我は呆れつつも白髪の男に問い掛けた。
「わから……?僕は魔法を生み出した?」
そこに記憶の手掛かりを見出だした我は聞く。
『何の魔法を生み出したのだ?』
「な、ん、の、魔法?……£%¢&*」
魔法について白髪の男が何かを言った時、ノイズが走ったように何を言ってるのか分からず我は聞き返す。
『うむ?声が聞こえづらかった、もう一度言ってくれ』
「£%¢&*」
『…………』
(またノイズが走ったか……神である我に聞こえぬ事態など普通ではあり得ない。ならば、普通ではあり得ない事を起こしたこの者は何を生み出した?神でさえも禁忌扱いをする化け物か、はたまた、存在しない力を生み出してしまったのか、定かでは無いが、聞く必要がある)
『お前は何を生み出した』
「何を?£%¢&*を生み出した。どうして?分からない。ただ、必要だと思ったから……何故?誰かを救いたい為に……それは誰?ハイナを……?ハイナとは誰だ?分からない。私には何も分からない。忘れてしまった?そ、うなのだろうか?私で『そこまでにしろ』?」
また自問自答を始めた奴に我は呆れつつも止めた。
「…………」
『何故そこで不思議そうな顔をする。そこは『呼び止めてくれてありがとう』っと、感謝する場面だぞ?』
(まったく、無表情で不思議そうにしてるのが伝わってくるのは凄いが、感謝もしないのか。どんな育て方をしたらそんな者に育つのか……そもそも自身の事を忘れている者にそんな事は関係ないか。はぁ、なんで我が思い出す事に付き合っているのだろうか……)
我はそう呆れ返っていたが、奴はそんな事に気づいていないのか、興味が無いのか分からないが、不思議そうに首を傾げると我が言った言葉を連呼し始める。
「あ、りがとう?あり、がとう?ありが、とう?あ、りがとう?ありがとう?ありがとう……ありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとうありがとう…………」
言葉を連呼する度に奴は涙を流す。そのあまりにもあり得ない光景に我は心臓が止まるかと思う程に驚いた。
『な、なんだ急に?!驚くじゃないか!!』
我は高鳴る自身の胸を押さえつつもそう言うと、奴は笑みを浮かべる。
「はは……思い出したよ。長い間、分からず仕舞いだったけど、あなたのお陰で思い出せた。感謝する」
嬉しそうに笑うと、奴は見えない筈の我を見詰めてお礼を言って来た。そのあまりにも違和感のある行動に、我は背筋が凍ったかのような感覚を味わいながら恐る恐る返事を返す。
『お、おう……ま、幻じゃないよな?』
「幻?」
我の問いに奴は不思議そうに首を傾げた。
その気づいて無さそうな奴の表情を見て、言ってもいいものかと悩みつつも言う。
『いや、その……あまりにも今までとは違って、な……』
(なんで我が彼女の意外な1面を知って照れる彼氏みたいな台詞を言っておるのだ!!)
自身が言った言葉にツッコミを入れつつも、我は奴の返答を待つ。
「…………」
奴は暫くの間、不思議そうに首を捻っていたが、何かに納得したのか2度程頷くと、我を見て言ってきた。
「私自身、変わったような感覚はありませんが、アナタが変わったと感じた点は魔力や気配でしょう」
『うむ?そうなのか?』
知りたかった事では無かったが、気になった我は奴の魔力や気配を『いやぁ~~ハレンチ~~』っと名付けた神瞳を発動して見る。
その途端、真っ白な……何もかもを呑み込み、無に返すような気配と魔力を奴の身から感じた。
この世界では到底収まりきらない存在感を持つ奴に我は思わず聞く。
『何をしたらそこまでの力が得られるのだ』
「何をしたら、ですか……」
奴は我の問いには答えず、薄ら笑いを浮かべる。
その笑みを見た我は怯えてしまうが、それでも神。怯え等には負けずに聞いた。
『な、なんだ、急に恐い笑みを浮かべて……』
若干、ほんと~~~に若干、怯え越しになりながら我が聞くと奴は薄ら笑いから楽しげな笑みになって答える。
「すみません。つい、この力を手に入れた時の事を思い出してしまい笑ってしまいました」
『そ、そそそそそうか!!それは良かったな!!』
これ以上先は、聞いたら不味いと直感で理解した我は、無理矢理話を終らせた。
「はい。?」
奴は嬉しそうに頷くと、何か気になる事でもあるのか首を傾げる。
『ど、どうしたのだ?』
今の記憶が戻った奴に我は恐怖を感じつつも聞くと、奴は悩ましげな声を上げて首を左右に揺らす。
その様子を見ていると先程までの恐怖が和らいで、落ち着いて判断できるようになった我はいっこうに答えが出なさそうな奴に問い掛ける。
『何か気になる事でもあるのか?』
「ある筈ですが、それが何なのか見当もつかなくて困っています」
『取り合えず、我れに話せ。そしたら何か分かるかも知れん』
「そうですね……もっと大事な事を思い出せていない気がするんです。それが何なのか皆目見当もつかない」
『おおい!!せっかく記憶を思い出したのに忘れたのか?!』
(ここまでの我の苦労と心労が無駄に終わって堪るか!!)
結構な時間を要して思い出した記憶がまた忘れたのかと思って我は怒りや焦り、虚しさがごちゃ混ぜになった感情で奴に聞いた。
すると、奴は数度首を横に振るう。
「いいえ。忘れてはいません。ただ、本当に思い出すべき事を忘れている気がするんです」
努力が無駄に終わらなかった事に安堵しつつも、我は問い掛ける。
『そ、そうか!それで、思い出すべき事とはなんだ?』
「大切な名前。ハイナが名付けてくれた私の名前……」
『うん?そこまでスラスラ言っておいて、何故、分からないと言ったのだ?』
(嘘をついてるとも思えんが、ここまでスルスラと話しておいて分からないは無いだろう)
我は不思議に思うが、取り合えず、奴の返答を待った。
「私は何かを言った?……分からない。でも、アナタが言ったと言うのなら私は何かを言った筈、それが何なのか……」
強い信頼に我は思わず嬉しくて笑ってしまう。
『ハッハッハッハッハッハ!!我をとても信頼してくれるのは嬉しいぞ!!もっと褒めてくれ!!!』
「?」
我がさらに褒める事を要求すると奴は、不思議そうに首を傾げた。
『ハッハッハ……何故そこで不思議そうにするのだ。そこはもっと我を褒める所だろう?』
「いえ。私はアナタを褒めた記憶がありませんので、褒めろうと言われて困っただけです」
『いや!!お前は確かに言ったぞ!!我を凄く!凄く!!信頼してると!!!はっ!!まさか?!また記憶を忘れたのか?!』
我がそう言った途端、奴はとても嫌そうな顔で我を見てくるが我は気付かず、必死に呼掛ける。
『おい!!どうした!!答えてくれ!!!』
「……凄いですね」
数秒の間をおいて、奴はとっても含みのある声でそう呟く。
しかし、我はその中に何が含まれているのか気付かずに、褒めた事を覚えていた事にホッと安堵する。
『記憶は忘れておらんかったか……』
「はい。アナタのお陰で気になっていた事も思い出せました」
『む?!それは良かったな!!』
これで長き苦労と心労から解放されると我は喜んだ。
「それで一つ、聞いていただきたい事があるんです」
『なんでも良いぞ!!今の我はとっても気分が良いからな!!』
(まるで最強にでもなった気分だ!!これ程までに心がウキウキとはしゃいでるのは今までなかった!知り合いの邪神が世界を貶めるのは最高に気分が良いと言っていた理由も納得だな!!ああ、このまま世界を滅ぼしに行っちゃおうかな?最高に気分が良い今の我なら世界を滅ぼす事に優越を感じられるかも知れん!!)
なんて、心の中ではしゃいでいた我は気づいていない。
奴が今から言おうとしてる事がとんでも無い爆弾だと言う事を……
「まず、私の名前から名乗らせていただきます。私の名前はユキルス。£%¢&*を生み出した者です」
興奮状態の我は奴の話が頭に入ってこず、適当に頷く。
『あ、ああ……』
「私は孤児でした。私に名前は無く………」
うむ?これは確か何があったかの話だけだった筈だ。よし、ここは飛ばすか。
それから暫くした後、奴の話が終わった。
「………今に至ると言う訳です」
『なんと言えばいいのか分からんが、とにかく凄い人生だな』
奴の話が壮大すぎて我はその感想しか出てこなかった。
「はは……そうですね。私自身、振り返ってみると辛い人生だったと思います。でも、ハイナが居てくれたお陰でなんとか生きてこれました」
『それは良かったな。で、我に何か頼みがあるようだな?』
話を聞いて行く中で、頼み事があるような素振りを見せていた奴に我は無理矢理話を終わらせて問い掛けると、奴は苦笑した。
「バレバレでしたか……ええ、アナタに頼みたい事があります」
『それはなんだ?』
「£%¢&*の力が込められた魔導書……『ティヴァリビオン』を破壊していただきたいのです」
『うむ。危険な力が込められているのであれば、お前の頼みでは無くとも破壊する。頼みはそれだけか?』
神をして、侮れ無い……もしくは神をも越える力が込められた魔導書を見逃す程、我は甘くなく、必ずや壊すと決意を固めつつも他に頼みが無いかと聞くと奴は首を横に振った。
「いえ。もう私は十分にアナタに叶えていただきました。私が何かをして欲しいかとアナタに聞くことはあっても、私からは何もありません」
無いと言った奴の瞳からは、嘘偽り無いと分かる程、真摯な瞳をしており見詰められている我は思わず気恥ずかしくなる。
『……そうか』
「はい。ですので、私に困った事があれば頼っていただきたいです」
『頼れか……』
(何か叶えたい夢はあっただろうか……無いな。しかし、何か言わないといけない空気になってるからな……うん?何故我が空気なぞに流されている?そこは無いときっぱりと言えば良い筈だ。なのに、何故我は焦らされている?!)
考えて行けば行く程、頭が混乱して来た我はグチャグチャに絡まった思考で叫ぶ。
『無い!!!!』
「それは残念ですが、分かりました。何か頼りたいことがあればわた……それは無理そうですね」
奴は「私に頼ってください」と言いたかったのだろうが、それは何かに気づいた奴が発するのを止めてしまった事で言葉になる事は無かった。
『何かあったのか?』
無理だと呟いた奴の表情が寂しげであった事が気になり我がそう問い掛けると、奴は苦笑をしつつも我を見て言って来た。
「アナタの頼みを叶えて上げたかったですが、無理そうです」
『何故だ?』
未だにピンピンとしてる奴が無理だと言う理由が分からず、我は聞き返した。
すると、奴は悲しそうな表情で自身の体を見下ろした後、ぼそりと呟く。
「気づいていますか。ここに居る私は私であって私ではない事に……」
『う、む……気づいていたぞ。うむ』
無論、気づいていた我は……一応、言っとくが、我が気づいていない等ありえないからな?な?本当だぞ……我は誰に言ってるのだろう……と、ともかくだ。我は奴にそう返事を返した。
「私の体はとっくの昔に消え……」
奴は何かを言おうとして止めると、首を横に数度振るう。
「消えたのでは無く、私が殺してしまった……」
認めたく無い事実を認めるかのように、または、神に己の罪を懺悔するかのように、その言葉の中には様々な感情が込められていた。
だからこそ、我は奴にキッパリと言ってやったのだ。
『何があったのかは聞こうとも、聞きたいとも思わないが……貴様の後悔話に長々と付き合える程、我は暇ではないのだ。もう用が無いのなら我はここで帰るぞ』
「ははは……アナタはもう少し優しい方だと思っていましたが、意外と厳しいんですね」
堂々と言い切った我に奴は怒り散らすことも、悲しむことも無く、ただただ苦笑する。
『我は邪天神だ。邪とついてる者が優しい筈が無いだろう?』
「そうでしたね。アナタは邪天神……邪悪なる神様でした。私はそれをすっかり失念していたみたいです」
奴は何故忘れてたのかと言わんばかりに大袈裟に首を横に振るう。
『ふん』
我はそれに対してそっけなく鼻を鳴らすと、気になっていた事を聞く。
『それより、貴様は消えるのか?』
「はい……」
奴は自分の体が徐々に薄くなり始めた事に何処か嬉しそうにしていた。
『何が嬉しいのか知らんが、良かったな』
「これでハイナは元に帰れます」
『…………』
奴が何処に行くのかを予測できた我は奴の言葉に返事を返さない。
我が何も言わない事に、奴自身も自分が何処に行くのかは薄々感づいていたのだろう。
何も言うでも無く、涙を1滴流した。
『「…………」』
それから少しの間、我と奴は何を話すでも無く、ただ静かに見つめ合う。
(奴から見て、我がどんな姿で映っているのか分からぬが、我から見る奴はもう、輪部がハッキリと分からないな……)
我が姿等見せていないと言う事にその時の我は忘れておった。
その心の内にあるのは、長き事一緒に居た奴との別れにたいする寂しさで一杯だったのだ。
(これでもうお別れか……)
長くとも短くとも感じる時の中で、奴の存在が感じられなくなった時、ふいに奴が言って来た。
「…………ありがとうございました」
『ふん。貴様こそ、頑張るのだぞ』
「はい」
その返事を最後に奴の存在が感じられなくなった………
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(重要な部分だけを思い出そうとしたが、全てを思い出す事になるとはな……)
ハズカシイは深い深い記憶の海から戻って来ると、疲れたような、呆れたような溜め息を吐くと、未だに自問自答を続ける男に話し掛ける。
『お前はお前であって、お前では無いぞ』
「『どう言う事だ?』」
2つの声が重なって聞こえる事にまだ違和感を感じるハズカシイだが、今はそんな事を気にしてるよりも言わなければならないと言う使命感にも近い思いに突き動かされて男に続きを話す。
『これは我の推測でしか無いが、お前は『ティヴァリビオン』と言う魔導書を読んだ覚えは無いか?』
(これが外れていたら、我は)




