続き⑨
「ふむ、なるほど」
じろじろと一鬼が見詰める先、瞳に映るは俺の姿。
正直言って恐い。至近距離から強面に見詰められるのは診察のためとは言え、生きた心地がしなかった。
それも体格差もある相手だ。幾ら座っているとは言え、子供と巨漢では誤差も良いところ。
その差から発せられる威圧感に気が付けば俺は自らの尻尾を抱いていた。
早く終わって欲しい。その願いが通じたのか、一鬼は数度頷くと俺から距離を取る。
「恐かっただろう。すまぬ」
「い、いや………気にしないでくれ。診察のためだって分かってるからさ……」
申し訳なさそうに謝る姿に逆に此方が申し訳なくなった。
問題ないと言う俺の言葉に一鬼は苦笑する。
「無理せんで良い。この顔の恐さは鬼の宿命みたいなものだ。恐れるのも仕方がない」
「ふはっ!そうじゃな。なんなら、もっと大袈裟に恐れてやる方がこやつは喜ぶぞ?」
「えっ……ドM?」
「むっ!ドMが何かは分からぬがナヨの言葉を真に受けるな!ワシは恐がられて喜ぶような変態ではないわ!!」
「ひっ!」
ナヨの一言に一鬼は怒りを顕に反論する。
強面が発する睨み付けは俺に向けられていないにも関わらずチビりそうだった。
「そう怒るでない。冗談じゃ。それよりほれ、お主のせいで鏡の腰が抜けとるぞ?」
「貴様ッ!―――はぁ、すまぬな、鏡」
「気にしないでくれ。これはナヨが悪い」
ナヨの意図も分かる。
場の空気を払拭しようと冗談を言ったのだろうと。
だがしかし、言って良いことと悪いことがある。
俺の一言に一鬼は目を丸くしたかと思えば爆笑した。
「ふはっ!ハハハハハハハハ―――!!確かにそうだ!!ナヨが悪い!おい、ナヨ!どうやら貴様の味方はいないようだぞ?!」
「ふん。お主の笑い声は相変わらず煩いのぉ。煩くて敵わん」
そっぽを向いて悪口を漏らすが、どう見ても負け惜しみだ。
「はぁ~~……はぁ~……はぁ……こんなに大笑いしたのは久しぶりだ」
そうでしょうね。腹を抱えて笑う人を初めてみたよ。
声には出さず、心の中で同意する。
「落ち着いたところで悪いが、結果を聞いても良いか?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。ナヨ、そっぽを向いてないで此方を向け!」
「だから、煩いと……まぁ、良い」
溜め息1つ。ナヨは此方に顔を向ける。
そこには不満があったが、結果は気になるのだろう。
さっさと言えと、顔に書いてあった。
「結論から言おう。ナヨの予想は外れだ。薄々気付いていただろうがな」
「えっ!マジ!?」
思わずナヨの顔を見る。
「やはりか……変容させるにはアレでは些か無理があると思っておった。して、お主の見解を聞かせてもらおうかの?」
「その前に1つ。聞いても良いか?」
「なんじゃ。無関係な質問なら妾は応えぬからな?」
その言葉に一鬼は1度頷くと口を開く。
「ナヨ、貴様―――”子“はいたか?」




