続き(ボツ)
「………は?」
中は荒れていなかった。
空気も険悪な物ではなく、和やかな物である。
予想外と言えば予想外だが、雰囲気が良い分にはこれと言って問題もない。
だが、そこに居た人物に俺は呆気に取られた。
鬼だ。筋骨隆々の赤い鬼が居た。
妖怪の代表格と呼べる鬼が厳めしい顔で胡座をかいていたのだ。
その顔が此方を向く。ただそれだけ。
なのに、俺の足は震える。
生物の格とでも言うべきか、根本からして人とは違うと分からせられる。
腰を抜かさなかったのを誰か褒めて欲しい。
「ほぉ……ナヨが見て欲しいと言っていた子供は貴様か」
「は?え?」
見定めるように見詰めるその瞳が恐ろしかった。
気分は肉食獣に目を付けられた小動物のようだ。
声からして怒ってる訳でも、食べようと思ってる訳でもないのに俺は1歩後退る。
頭ではなく本能がそうさせた。
逃げなければという生物の生存本能だ。
それぐらい目の前の存在は危険だった。
だが、次の光景を見て俺はまたも呆気に取られた。
「何をやっとるイッキ!少しは気配を消す努力をせぬか!」
「うわぁ……」
音にすればドン!だろうか、軽く叩いたとは思えない音が鬼の頭から鳴る。
叩いたのは神――ナヨ。鬼は「何すんじゃ貴様!?」と怒鳴っているが、効いた様子はない。
思わずドン引いた声を漏らしてしまったが、そこはやはり鬼なのだろう。
生半可な攻撃は通じないらしい。
そこから繰り広げられるは口撃。
攻撃ではなく、口撃。間違ってはいない。
お互い武ではなく口を持って攻撃し合っていた。
「ビビっておるじゃろ!!それが分からぬとはとてもではないが千年も生きた鬼には見えぬよぉ?」
「ッ!!アア!?そんぐらいワシにも分かるわぁああ!!」
「はっ!それが口先でしかないことを自覚せぬとはお主も可哀想な奴じゃ」
涙も出ていないのに拭くそぶりを見せるナヨ。
それに更に切れ散らかして食って掛かるイッキと呼ばれた鬼。
正直に言って、なんで殴り合わないのか分からないやり取りだ。
というか、お互い本気で口撃し合っているがために漏れ出る気配。
格の違いをこれでも分からされる気配という名の力のぶつかり合い。
いつ気絶してもおかしくはないが、何故か気絶しないのだ。
お互いの力がぶつかり合うことで中和されるのか、此方に届く頃にはそよ風程の力しか感じない。
これならいっそのこと気絶した方がマシだと思いつつ、このやり取りを眺めるしかなかった。
「はぁ、それだからお主は妾以外の友が出来ぬのじゃ」
「ふん!研究できればワシはそれで良い。余計な節介だ!」
「はぁ~~~」
それが終わったのはあれから数分も経たなかった。
思ったよりも短いというのが素直な俺の感想だ。
だが、話を聞くに昔からあのやり取りが当たり前だったのだろう。
ナヨのあんな疲れた声、初めて聞いた。
よほど苦労したのが伺える声色だ。
ボツった理由はまぁ、キャラの性格や話が逸れた点がボツになった理由です。




