続き④
前話に関して。
初回投稿より追加で内容付け足したので、まだ見てない方はそちらを見てから読むことを推奨します。
「―――は?弄られ……?何言ってんだ?」
「困惑するのも分かるが、事実じゃよ」
そう言われるがとても信じがたい。
弄られた覚えもなければ記憶もないのだ。
信じろ、という方が無理だろう。
神が嘘を吐いてるとは思えないが、疑いの目を向けるのも仕方がない。
それは神自身も分かっているらしく、少し触れると言って俺の胸に手を当てる。
「例えばここじゃ。何か違和感を感じたことはないかの?」
「違和感?いや、感じたことはないが……」
俺の返答に神は顎に指を添えて一考。
「ふむ、心臓由来の眩暈や発作にも覚えはないかの?」
「それなら覚えがあるって言うか、持病だな。それが何か関係あるのか?」
「それじゃ」
「は?本当に関係があるのか!?」
持病だと思っていたものが実は、なんて言われたらそんな反応になるのも仕方がないだろう。
正直、疑問よりも驚きが勝ったほどだ。
「何かの見間違いなんじゃないのか?信用してないって訳ではないんだが、どうにも信じられなくてな」
「無理に信じる必要はない。違和感も感じぬ程の小さな歪みじゃ。それを信じろ、という方が無理な話じゃろ?」
「分かってくれているようでどうも。で、俺はどこら辺がおかしいんだ?」
心臓と言われたが、具体的に何処か知りたくて問う。
それに答えるように神は手を動かし、ある一点を前に指を突き付ける。
「ここじゃ。ここに小さな穴が空いておる。それも物質ではなく精神的な方じゃ」
「ここに……」
意識を向け、手で触れてみるがやはり違和感を感じない。
それはそうだ。
この歳まで一緒に過ごして来た。
今さらおかしいと言われたところで俺に分かる訳がない。
「ここに穴が空いておるから流れが歪になり、悪さをしとる。手を加えた者の考えが分からぬ。なぜ力を塞き止めるよなことをしとるのか。まるで楔のようじゃ」
後半は独り言のように呟かれたが、正直に言って何を話しているのか理解ができない。
力を塞き止めるとか、楔とか、なんでそんな物が俺の体に施されているのかという疑問の方が強いぐらいだ。
「これは治せる物なのか?」
「可か不可かで言えば可じゃ。じゃが、安易に治せる物ではない。下手すれば吹き飛ぶぞ?」
「意識が……という訳ではないっぽいな」
こんな感じでと、両手を大きく広げて爆発を表現する神。
冗談めかすものだから意識が吹っ飛ぶ程度かと思ったが、どうやら違うらしい。
思わず溜め息が漏れる。
「じゃあ、俺はずっとこのままなのか?」
「早とちりが早いのぉ、お主。このまま妾の娘として過ごさぬか?」
「俺の早とちりでした!どうか治す方法を教えてください!!」
すぐさま謝罪する。
あの神本気だ。
本気で俺のこと娘として受け入れようとしていた。
ここに来て別の人生歩むのは想定していない。
元の体に戻って普通の人生を歩むために俺はここに来たのだ。
その想いを目に籠めて見詰める。
「残念じゃ……もし気が変わったらいつでも言うのじゃよ?妾はいつでも受け入れる準備は出来とるからの?」
下手な発言は避け、分かったと言わんばかりに大きく、何度も、頷く。
耳をへたれさせとても残念そうではあったが、神は続きを話し始めた。
「して、その方法じゃが。専門家を呼ぶことにした」
「専門家?」
「そうじゃ。妾の古い知り合いでな、研究一筋の偏屈な奴じゃ」
「あぁ~、頑固一徹タイプか」
「ふっ!そうじゃな、頑固一徹な奴じゃ」
思わず漏れでた言葉はどうやら神の琴線に触れたらしい。
口元を隠して必死に笑いを堪えようとしているが、笑い声が抑えきれていない。
素の笑みを初めてみたかも知れない。
先程までの蠱惑的な綺麗な笑みとは異なり、少女のように笑う。
魅力的な笑みに見惚れてしまうが、興奮はしない。
精神が段々と女性へと変化しているのだろうか。
そう考えるだけで恐ろしいと思うものの、意外と落ち着いていた。
希望が見えた故か、手遅れ故か、それは分からない。
だが、猶予が迫っているのは間違いないだろう。
身震いする。狐娘としての自分を受け入れ、神と一緒に過ごす。
悪くはないのだろう。幸せですらあるのだろう。
ニコニコと神を母親と呼ぶ姿が簡単に想像できる。
だが、それは果たして俺なのだろうか。
考えたくもない未来に頭を振る。
そうはならない。ならないために来たのだと言い聞かせる。
「その専門家はいつぐらいに来れそうなんだ?」
「ふむ、今から連絡をしたとして、3日もあれば来るじゃろ」
3日。その言葉を聞いて俺は落胆した。
すぐには無理だと分かっていたが、思った以上に掛かる。
一刻も早く来て欲しい身としては、その時間が焦れったい。
高望みし過ぎだとは思うが、言っていられるほど俺に余裕はない。
無礼を承知で俺はお願いする。
「これ以上お願いするのは申し訳ないが、早く来てもらうことは出来ないだろうか」
頭を深く下げ、丁寧語を持って頼み込む。
少しでも可能性を上げたいという打算的な面もあるが、その大部分は無理なお願いをしているという申し訳なさから来ている。
これで駄目なら持つことを受け入れよう、そんな覚悟を持って返事を待つ。
「ハハッ!そう畏まらんでも元よりそのつもりであった。じゃが、その心意気は良いのぉ。ふふ、妾の取って置きで早く呼んでやろう」
「っ!!ありがとう!!」
作戦は大成功も良いだろう。
思わぬ発言もあったが、お陰でより早く来てくれることになった。
俺は感謝いっぱいの表情で神を見る。
すると、何故か神は目を眇め昔を思い出すように言う。
「ふっ、懐かしいものじゃ。そんな表情を見たのは」
神は柔らかく笑い、俺の頭に手を乗せるとポンポンと軽く叩き、それから左右に撫で始めた。
優しい手つきが心地好く、無意識に目を細め動きに合わせ揺れる。
胸がポカポカと温かくなり、心地好い眠気が襲う。
(あれ………俺ってこんなに撫でられるのが好きだったか?)
ボンヤリとした頭でそんな事を思うが薄れ行く意識の中で消えて行く。
(まぁ……いっか……)
それを最後に俺の意識は落ちた。
最後らへんもしかしたら変わるかもです。
中々、しっくり来なくて。




