続き(完成)
温度差があり過ぎて違和感あるかも。
「なんだよ………これ………」
鏡を前に俺は呆然とした。
鏡に映るは見慣れた姿ではなく女の子の姿、それも狐耳を生やしているというおまけ付きだ。
(……嬉しくない。全然嬉しくないぞ)
頭を抱える。何が原因かなんて考えるまでもない。
あの神だ。それ以外にいる筈がない。
起きた時から異変に気付いていた。
甲高い声に細い腕、果ては腰から生えた尻尾等々。
気付いてはいた。気付いてはいたが、信じたくなかったんだ。
そんな筈はないと、藁にも縋る思いで鏡を見たが現実はあまりにも非道だった。
「どうすんだよこれ……どうしろってんだよ……朝気が付いていたら性転換してましたってか?そんな物語みたいな現象を誰が信じるってんだよ」
子供の戯れ言としか思われないだろう。
それが分かっているだけに誰に助けを求めれば良いのか分からない。
両親を頼ろうかと思うが、信じてもらえるだろうか。
両親しか知らない話をすれば納得してくれるか、誘拐や脅されてると思われるのが落ちか、試してみないと分からないだろう。
「………取り敢えず電話してみるか」
ウジウジ悩んだところで仕方ない。
充電器に挿したままのスマホを手に取り両親に連絡――いや、先にLINEをした方が良いか。
事前に事情を説明した方が受け入れやすいだろう、多分。
そう思って文を入力するが悪戯メールにしか見えない。
少しは信じてもらえるだろうが、全肯定とは行かないだろう。
やり直そうかと思うが、どれだけやり直したところで変わらない気もする。
両親の俺への信頼度を期待して送ってみるしかないだろう。
(顔写真も一緒に送ってみるか)
ふと、そんな考えが頭を過る。
頭に生えた狐耳は特徴的だし、少しは説得力があるかも。
悪くない気がした。いや、これなら信じてもらえる。
言い様のない自信が湧く。
なんならピースもすれば嫌々やらされてる感じもしないし信じてもらいやすいはず。
この時の俺は頭がキャパオーバーしておかしくなっていた。
いわゆるハイテンション。
笑顔&ピース写真を取り、文と共に両親に送りつける。
後は待つだけ。妙な達成感が胸を満たす。
清々しい思いでもう一眠りしようかとベットに行き布団を被る。
………
…………
……………
「いや、そうじゃないだろ!?」
危うく眠りに付くところだった。
問題はまだ解決していないのだ。
それどころか増えてさえいる。
なのに眠るとかどうかしてるだろ俺。
あまりにも楽観的な行動に我がことながら頭を抱える。
なにやってんだと、寝てる暇あんのかとツッコミが止まらない。
今すぐ叫んで発散したい気分だ。
迷惑になるから出来ないと思いながらも叫びたい気分だった。
変わりに出たのは大きな溜め息。
部屋中に響く溜め息は心のモヤモヤを奪い去り、スッキリとした心地を抱かせる。
頭から手を離しスマホを一瞥。
まだ既読は付いていない。
そんなすぐには無理かと思いながらも今後の予定を考える。
最初に考えるは外出の手段。
今の姿では出た瞬間から好機の視線を浴びるのは確定事項。下手をすれば警察署行きだ。
よしんばそれを逃れたとしてもネット社会の現代だ。
怪しい奴らに目を付けられて誘拐されるのが目に見えている。その後の未来なんて考えるだけで恐ろしい。
何か身を隠せる物はないかとキャリーケースを漁る。
「お?これとか良いな」
手に取ったのはジャンパー。
雨対策として用意していた物だ。
さっそく身に纏い、鏡を見る。
大人用のためブカブカではあるが、耳や尻尾が良い感じに隠れており外に出てもバレることはないだろう。
思わぬ収穫に過去の自分を褒めたい気分だ。
良くやったと、これで誘拐される心配がないと、そう言ってやりたい。
ルンルン気分で後ろから見たり、回ってみたりを繰り返す。
その隠蔽具合に満足して、ふと気付く。
「………これじゃあまるで女児じゃないか」
いや、合っている。合ってはいるが、元大人の男としてとても複雑な気分だ。
自覚はなかったが心も変化しているのだろうか。
帽子の着脱を繰り返した際には耳が飛び出たり隠れたりする光景が楽しいと感じていた。
これはまずい。
早く、早くなんとかしないと戻れなくなる。
気分は氷点下。身の危険を感じた俺はさっそくあの廃神社へと向かうことにした。




