ヒロインの母➎
月日は流れ7歳になったメイアは好奇心旺盛で屋敷の中を探検するようになった。
夕餉の度、メイアはその日に見付けたことを楽しげに語る。マナーとしてははしたないけど、家族だけの団欒でそんな事を指摘するのは不粋よ。それに一日の疲れもメイアの話を聞いてると癒やされるの。
それは夫も同じみたいで、時々顔を見合わせてはお互い笑みを浮かべた。
でも、そろそろこの時間も無くなる。夫から先生を雇わないかと提案されたの。
時期も悪くはない。だけど、メイアの無邪気な姿が見れなくなると考えてしまうと私は素直に受け入れる事が出来なかった。
夫も私と同じ気持ちらしく苦い表情を浮かべていたが、決して遅らせようとは仰らなかった。
無邪気だけでは、無知だけでは生き残れない。教養と強かさを持ち合わせてこそ貴族社会で生きて行く事が出来る。
その機会を私の、私達の想いだけで奪ってしまっては未来のメイアが困る事になる。引いては家にも影響を与えてしまう。
ここは親としての情より貴族として、侯爵夫人としての考えを優先さざるを得ない。
私は一度、静かに目を瞑り覚悟を決めて目を開ける。真っ直ぐと夫を見つめ口を開く。
「雇いましょう」




