どん底からの➓
ルジスト案内の元、無名のダンジョンへと向けて森の中を進んでいると草原へと出た。
「この先、あの草原の真ん中の辺りに無名のダンジョンはあります」
「あそこにか?」
ルジストが指差す方を見るが、これと言って何かがあるようには見えない。
そもそも、視覚で把握できるダンジョンではないが。
「行けば分かりますよ」
そう言って先を歩き出すルジストの後を追い掛けること数分。
ルジストが足を止める。ここにあるのかと前を見ると、景色が揺らいでいた。
「これが無名のダンジョンの入り口か」
「ええ、何が待ち受けているかも分からないダンジョンの入り口ですよ」
可笑しげに笑いながら言うルジスト。
「楽しそうだな」
「はい。私の推測が当たったのですから」
「確かにそうだな。よく不可能と言われた事を成し遂げた」
私が心からの称賛の言葉を送るとルジストは珍しく恥ずかげに頬を染める。
「素直に褒められると恥ずかしいものですね。らしくもなく頬を染めてしまいましたよ」
「フン!褒めなれてない影響が出たな」
「そうですね。今度から色々な方に褒めていただきましょうか」
「くくっ!相変わらずの減らず口だ」
「そうでしょう。もっと褒めてくださっていいですよ」
「はは……」
「ふふ……」
なんとも言い表せぬ心地の良い気持ちと嬉しさに私達は大きな笑い声を辺りに響かせるのだった。