暇つぶし2
さっきの続き。真面目な戦闘というよりかは、おふざけ要素が強いです。
襲いくる魔物。先に攻撃を仕掛けたのは獅子の上半身に、鷹の下半身、尻尾は蛇で背に生えるのは山羊の頭をもつキマイラ。
伝説的な存在を前に、震える体を拳を強く握ることで抑える。
「さっすが女神の一撃を食らって生きてただけあるな。初手がキマイラとか、俺ほんと勝てるのかよ。いや、勝たなきゃいきのこれないんだけどさ」
敵を前に余裕綽々だと思うじゃん?これが違うんだよなあ。
一撃でも食らえば死にそうな相手が何体もいるだぜ?言葉だけでも気楽でいなきゃやってられないって。
それにさ。俺の倍はある巨体が迫るのは、たとえ弱くたって恐ろしいに決まっている。
それがいま、俺に向けて突撃からの噛みつきを繰り出している真っ最中だ。
「っ!!」
反射的に下がると同時。さっきまで俺がいた場所で閉じられる口。ガチン!と甲高い音が鳴る。
「ははっ……これ軽く死ねる。転生してすぐにやられるとか何の冗談だよ」
あれ、一撃でも食らえば耐える間もなく死ぬ。
死にそうじゃなくて、死ぬ。いま確定した。
攻撃を回避されたことに不機嫌そうに鼻を鳴らし、敵意の目で俺を見るキマイラ。
前足で地面を掻き、次なる攻撃を放とうと準備万端みたいだ。
おしっこチビりそうなんだが?
えっ、どうして俺ごとき塵芥に敵意をむけるんだよ?簡単に殺せるんだから見逃してくれたって良いだろ?
さっきの発言が気に食わなければ謝るからさ。あれ、言ってみたかっただけなんだよ。
「グルルル」
はい、ですよね、無理だよね。
「ああ!もう!!どっこらでも来い!!」
「ガアアアアアーーーー!!」
俺の発言を機に襲いかかるキマイラ。
右足から繰り出される斜め切りを回避しながら、キマイラの弱点を下がる。
とはいうが、何も情報が無さすぎるし、時間もない。ないない尽くしといったところか。
こうなると分かっていたら神話の勉強でもしとけばよかった!
いま心の中で愚痴ってる間もずっと攻撃を回避し続けているが一向に弱点が見つけられない。
背後から攻撃しようにも蛇が邪魔をするし、死角から攻撃しようにも山羊から情報を共有されているのか、攻撃が避けられる。
これぞ無理ゲー。どう攻略しろってんだよ!!
「って、うおっ!!」
ブオン!と耳を掠める音。次いで鳴る地面を砕く震動に体勢を崩しかけ、体勢を整えると同時に犯人を見れば、単眼で巨大な棍棒をもったギガンテスみたいな魔物が武器を振り下ろした状態で俺を見ていた。
正直いって、恐怖よりも興奮が勝った。
だって、あのギガンテスだぞ?ドラクエといえばなキャラの登場に興奮しない者はいるか?いないだろ?
たとえ居たとしても、ここにいるのはいま俺だけだ。だから俺が正しい。異論は認めない。
で、これどうしよう?
興奮であれやこれや言っていたが、絶体絶命であることには変わらない。
隙を見せない程度に遠くを見れば、まだ駆けてくる魔物の姿が。で、左右を見ればキマイラとギガンテス。
絶望に絶望をかけて、とんでもない絶望の中。唯一、この状況から助かる方法がある。
だが、それはあまりにも無謀な賭けだ。
俺の読みが外れていたら賭け失敗だ。
だけど、やるしかない。
襲いくる攻撃を右に左と回避しながらタイミングを狙う。
いつ死ぬかも知れない状況で神経を勢いよく磨り減らし続けながら、あえてキマイラの前に移動する。
好機とみとったキマイラが噛みつきを繰り出す瞬間、俺は笑い顎下を潜る。
獲物を見失い困惑するキマイラ。その上から大きな影が迫り、ドン!!と強烈な衝突音を響かせる。
「同士討ちってな」
首から先を失い、赤い染みを作るキマイラだった物を前に俺はそう呟いた。
きっかけはギガンテスの一撃だ。あの時、ギガンテスの一撃はキマイラに掠りかけていた。
味方相手にそんなギリギリなことをするのかと思ったんだよ。
そもそもの話、こいつら敵味方の区別ついてるのかよ?
たぶん本来、相容れないもの同士なはずだ。今のような状況を除けばな?
だから、同士討ち。もしくは殺し合わせることができるんじゃないかと思った訳だ。
咄嗟の思いつきではあったが、上手くいったことにほくそ笑む。
仲間を殺したというのに困惑を見せないギガンテスは再度、俺を襲おうとするが、俺は避けない。
「なあ、避けないとやられるぞ?」
逆に忠告してやるんだから、俺はなんて優しいやつか。
なのに、その忠告を無視して棍棒を振り下ろすギガンテスだが、次の瞬間、上半身が吹き飛ぶ。
もちろん、犯人は俺じゃない。
さきほど背後から迫っていた魔物が犯人だ。銀色の毛並みを持った狼。キマイラ、ギガンテスに続くとしたらフェンリルか。
神殺しを冠する化け物が相手では、ギガンテスといえど敵うはずがない。
これで敵が2つ減った。あとは二体。
さあ、次はどうしようか。
たぶん、これで最後かな?




