3周年記念7
ちょっと黒猫の設定考えてきたんですけど、「こやつ、思った以上に重要人物だな?」ってことに気づいた。
ヒロインと出会いまでの繋ぎだったはずなのに、使い捨てられない立場にたったの2話でランクアップしやがった。
「こんにちわ、黒じぃ。そして、初めまして」
訪れた私たちを前に彼女は、猫を撫でる手を止め、微笑んでそう挨拶する。
不思議な雰囲気を身にまとう人だと思った。
落ち着きがあり大人びている。それが近寄り難さを醸しだしているが、それだけではない。
彼女の周囲だけが別世界のような、俗世とは隔離された空間のように感じた。
その雰囲気がゆえか、不思議と暑さを感じず、涼しさを感じるのだ。
疑問に思う私のまえで、黒猫ーー黒じぃが声を発した。
『凪。分かっていると思うけど、紹介したい者を連れてきた』
そこで黒じぃはこちらを振り向き、挨拶しろと目で促してくる。
私はそれに分かっていると頷きで応え、彼女ーー凪と呼ばれた少女を見上げる。
『初めまして、私は沙月と申します。訳あって、貴女に会いにきました。凪さんとお呼びしてもよろしいですか?』
「さん、なんて要らないよ。凪、て呼んでくれるかな? 僕の友達はみんな僕のことをそう呼んでくれるから、逆にさん付けされると違和感を感じるんだ』
『分かりました。では、凪と』
社会人として、すっかりさん付けに慣れてしまった身としては違和感を感じてしまうが、それもしばらく呼ぶうちに慣れるだろう。
神妙な面持ちで頷く私に、凪は微笑む。
「無理に、とは言わないよ。君が呼びやすい方で良いんだ。そうだ、君のことはサラちゃんって呼んでも良いかな?」
『さ、サラちゃん……?』
なぜにサラちゃん? 私はこれでも男だぞ? くんならまだしも、ちゃんとは……。
いや、駄目とは言わないが、違和感が強い。
こう、体がムズムズするのだ。
困惑する私に、凪はほんの少しだけ悲しげにする。
「ごめん、自分勝手だった。沙月って呼んでも良い?」
『いや、サラちゃんで良い。それで別に困ることはないしな』
「無理しなくて良いよ。よくあだ名を付ける癖でつい、君にもしてしまった。ごめんなさい」
頭を下げて謝る凪。
これは駄目だな。いくら話そうとも平行線のままだ。
なら、こちらが折れた方が話は早いだろう。私としてもそちらの方が助かるしな。
『謝罪は受け取った。だから、そう気に病まないでくれ』
私の言葉に凪はフッと笑う。
「ありがとう」
『話は終わったようだね』
切りの良いタイミングで黒じぃが会話に入る。
なんとも空気を読むのが上手いものだと思う。
ちょうど会話が途切れ、次はなにを話そうかと考えていたところだった。
すぐに本題に入っていいものかと、迷っていただけに助かる。
私は聞き手に回り、黒じぃがなにを話すのかと耳を澄ます。
『沙月が少し言っていたが、今回はただの挨拶だけじゃない。凪の力を借りに来たんだよ』
「良いよ、貸してあげる」
にべもなく凪は言った。内容も聞かず、あまりにもあっさりというものだから虚を突かれた。
呆然とする私の横で、黒じぃがため息を吐く。
『はぁ、そんな簡単に約束するものじゃないよ。悪事に手を貸すとは思わなかったのか?』
「黒じぃがそんなことする訳ないって信じてるから」
『嬉しい言葉だ。だけど、そういう話じゃないんだよ』
「分かってる。ちゃんと話を決めてから約束する」
『それで良い』
なんと言えばよいか。まるで祖父と孫の会話のようだと感じてしまう。
孫のことが危なっかしくて心配になる祖父といった構図か。
なんとなく、2人の関係性が見えた瞬間だった。
後で細かい修正やら加筆するかも?
一応、これ2話に分けての投稿になるんで。
後さ、「」と『』の使い方間違えることあると思うけど、できれば誤字報告で教えて欲しいな。
意図せず、ミスること絶対にあるし。というか、これ書いた段階でもあったし。
できればで良いんで、おなしゃす!