どん底からの➎
応急処置を施し終えた後、私達はとある場所に向けて外道を進んでいた。
「なあ、ルジスト」
「なんだい?」
「私の前から居なくなった後、何をしていたのか答えられる範囲で良いから教えてくれ」
「答えれる範囲で……」
ボソリと呟くと、上を見上げながら顎に指を当てる。
「旅をしていた。様々な国を周り成すべき事を成して来た」
「どんな事を……」そう口に仕掛けたが、無意味だと思い出し口を閉ざす。
「色々な事があった。この国に居ては経験できない事を経験した」
そう語るルジストの声は重かった。
辛いこと、悲しいこと、嬉しかったこと、出会いと別れ、様々な経験をしたが故に込められた感情が多すぎて重く感じたのだろう。
「だが、私の旅は終わっていない。まだ終わる事は出来ない」
声が変わった。
執念すら感じる声で、ルジストは空を睨めつけながら漏らす。
「終わらせない」
一瞬、空間が凍ったように感じた。
ルジストから感じる気配が全く違った。
ルジストがルジストである筈なのに別人のように感じた。
私の知るルジストは何処に行ってしまったのか。共に居る筈なのに不安に駆られる。
このままだとルジストとまた離れ離れになるような、私の知らない何かが起きる気がして空気を変えるべく声を上げる。
「な、なあ、ルジスト……」
「どうしました?」
「い、いや……なんでもない」
普段通りのルジストに、謎の焦燥感が消えた事に私はホッと安堵する。
そんな私の様子にルジストは疑問に思ったのか眉を顰めた。
「そうですか……おっと、着いたみたいですよ」
言われてルジストが指した方を見るとボロい一家屋が目に入った。