どん底からの➍
ルジスト
彼は私の幼馴染で、親友だった。
お互いにライバルとしてそれぞれの分野で競い合った物だ。
今も昔も私に着いて来れたのはルジストしかいない。
そう、私にとってとても大切な親友だった。
なのに、ある日を境にルジストは私の前から姿を消した。
「今まで何処にいたのだ。心配したのだぞ」
「それは悪い事をした。だけど、謝らないよ。私には私がすべき事があったから」
「まったく、意味深な事を言う……それが何なのかは教えてはくれないのだろう?」
「さすが私の親友、よく分かってる。ああ、そうだ、そうだよ。教えるつもりは全くない」
成長しようとも全く変わらないルジストの性格に私は苦笑を浮かべる。
「だろうな。それより早く袋の中から出してはくれないか?」
早くこの窮屈な袋から出たいと漏らせばルジストは「了解」と返事を返して袋を開けてくれた。
「久しぶりに外に出た気がするよ」
実際には2、3時間ぶりなのだろうが。
中の曇った空気は違い、外の空気はとても新鮮で胸一杯に空気を取り込んだ。
「それは良かった。それにしても、手酷くやられたね」
「ああ、そうだな。手酷くやられた」
全身に負った打撲痕、切り傷、火傷。
どれも私が守った者達に負わされた傷だ。
「塗り薬あるけど使うかい?」
「ああ、貸してくれ」