どん底からの➋
もしかしたら続き書くかも?
「今から貴方は喰い殺されます。残念ですね、国の為に一身を賭した貴方が最後には喰い殺される運命を迎えるとは……」
「さようならです、王子様。来世は良い生を送れる事を祈ってます」
心の底からこれっぽっちもそんな事は思ってない男が去って行く姿を袋の中から見やる。
(ああ、さよならだ……本当に……)
忌々しげに心の中で悪態をつく。
万全であれば投げ捨てられる事も、魔物に殺される事もなかっただろう。
「なぜこうなってしまった、か……」
未だに心の中を埋め尽くす疑問を自嘲を含んだ声で言葉にする。
「それは私のやり方が間違っていただけのこと。選択を誤ったが故に今ここに居るのだ」
心に語りかけるように、言葉にした声には諦めと疲れが宿っていた。
ドドドドドドドドッ!!!
段々と大きくなる音が死へのカウントダウンのようだ。
(私は今から魔物に喰い殺される。あの男の言った通りに……)
生きたまま喰われた経験が無い故にどれだけの苦痛が待ってるかも分からない。
だが、そんな事はもう、どうでもいい。
一度は私を陥れた者を呪い殺そうかとも考えたが、そんな気力は今の私には無い。
折れてしまったのだ。
私が貫き通した信念の果ては自滅。
道化だと、自嘲気味に笑う。
脳裏にふと、あの男が祈る姿が過った。
「神、か……」
この世に果たして神は存在するのだろうか。
もし、存在するとして私の姿はどう映っているのだろうか。
私は見えもしえぬ空を、月を見上げる。
「月の神たるイエスタルよ。もし存在するのなら教えて欲しい。私の人生は、私の信念は無駄だったのだろうかーー」