8話 怜央と遥馬
「やあ、結愛、遊びに来たよ」
後ろの教室のドアから入って来たイケメン二人のうちの一人が結愛に声をかけた。
Bクラスの風祭怜央と天沢遥馬だ。二人共、イケメンで三条院学園高校の中では有名だ。
特に怜央は雑誌の読者モデルもしていて、校内でも有名で熱烈なファンクラブまである。そして遥馬はバスケット部の副主将を務めていて、スポーツ万能、頭脳明晰で有名だ。
この二人は時々休憩時間になると結愛と楓姉さんに会いにくる。結愛も楓姉さんも美少女として有名だからな。俺はモブ的な立ち位置だから相手にもされていないけど。
「今日も結愛はきれいだな。そんな君の笑顔を僕に見せてくれないか。楓のことも忘れていないよ」
「怜央は冗談が上手いんだから。私の笑顔なんて見ても仕方ないでしょ。毎日いっぱい女の子からキャーキャー言われてるんだから」
結愛が少し引きつったような笑顔で怜央を躱す。すると遥馬が申し訳なさそうに笑んだ。
「怜央のことは適当に流してね。結愛に会うと怜央はテンションがおかしくなるんだ」
怜央は性格があれだが、遥馬は人間ができている。二人を見て結愛が首を傾げた。
「それで二人して何しに来たの? 私に用事?」
「今日の放課後、少し時間が空いたから、一緒にお茶でもしないかと思ってね。今日の放課後は空いてるよね? 一緒に楽しもうじゃないか」
怜央が結愛に向けて手を差し伸べた。その手を見て結愛が固まっている。すかさず遥馬がフォローに入る。
「怜央って読者モデルとか、色々と芸能活動で忙しいでしょ。スケジュールの空いた時しか遊べないんだよ。結愛とお茶したいって言ったから、一緒に来たんだ。もちろん俺も同行するし、どうかな?」
結愛が少し考えるように指で口を押える。
「私の友達も一緒ならいいよ。皆も来てくれるよね?」
勝手に決めるな。俺はこいつ等みたいなリア充と一緒に遊びたくなんかねー。湊斗も大和も渋い顔をしている。
「俺は関係ないから行かない」
「俺はパスするよ」
「俺もパスだな」
俺、湊斗、大和の三人は行かない方向で。女子達は考えているようで、怜央と遥馬の顔を交互に見ている。黙っていれば二人共イケメンだもんな。
楓姉さんがペコリと頭を下げる。
「今日は家で用事があるので、辞退するわね」
さすが楓姉さん、上手い躱し方だな。
「私は放課後に同人誌サークルの友達と遊ぶ約束をしているので遠慮します」
凛がオドオドと答える。アニメオタクの腐女子にとって、リア充のイケメン男は苦手だろう。それに凛は人見知りだからな。
「私は学校に残らないといけないから。放課後、先生に頼まれていることがあるの」
さすがは学級委員長の燈子。先生に頼りにされているな。
気づくと結愛を除く全員がパスだった。誰も好んで巻き込まれたくないよな。遥馬は気さくそうだけど、怜央の性格があれだから。皆が敬遠するのも頷ける話だ。
結愛が困ったような視線を俺に向けてくる。嫌だぞ、絶対に付き合わないからな。
「ねえ、悠人、付き合ってよ。少しでいいからさ」
「イヤだ。俺も家で用事があるから、放課後は付き合えない」
「意地悪言わないでよ。少し付き合ってくれてもいいじゃん」
ここで折れるわけにはいかない。中途半端に折れると女の子は増長するからな。
「もういいわよ。悠人のバカ」
馬鹿でケッコー、コケコッコー。
楓姉さんがニッコリと笑って、結愛と俺の間に体を割り込ませた。
「結愛も悠人も意固地にならないの。私も一緒に行ってあげるから、三人でいきましょう」
楓姉さんが俺と結愛を取りなす。楓姉さんのおっとりとした雰囲気には敵わないんだよな。
楓姉さんの提案を聞いて、湊斗が急に慌て出した。
「お、俺も行くぜ。別に用事があった訳でもねーしな」
これで怜央と遥馬と一緒にお茶に行くメンバーが決まった。俺、結愛、湊斗、楓姉さんの四人だ。結愛が安堵の息を吐いて、怜央と遥馬の二人に向き直った。
「メンバーも決まったし、お茶に行くわ。でもお茶だけだからね」
遥馬が俺達に向かって、ペコリと頭を下げる。遥馬はイケメンなのに、なんだか苦労人臭がするのは気のせいか。
「話合いは終わったかな。俺は誰が来てもウエルカムさ。放課後が楽しみだ。結愛、楓、放課後にまた会おう」
怜央が爽やかに笑んで、髪を搔き上げる。その様がコマーシャルに出てくるアイドルみたいで腹立たしい。イケメンなんだけど、なぜかムカつく。
「それでは皆、お邪魔したね」
怜央は片手を大きく振って、教室の外へと歩いて行った。
「怜央も悪気はないんだ。誤解されやすい性格をしてるんだよ。本当はいい奴なんだ。だから皆、仲良くしてやってね。怜央は実は友達が少ないんだよ」
そう言い残して遥馬は怜央の後を追いかけて教室の外へ消えていった。
怜央はそうなんだろうな……イケメンだけど、性格があれだもんな。
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