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24話 夕晴

 陽菜が来たことで夕晴は急に大人しくなった。顔を赤くして視線をウロウロとさせている。陽菜と視線をまともに合わせない。陽菜が両手を後ろにして、夕晴の顔を覗き込む。



「夕晴、何しに来たの? 陽菜のこと会いに来てくれたの? キャハ」


「そんなんじゃーねよ」


「それじゃあ、何しに来たの?」


「悠人って奴の顔を見に来ただけだ」



 本当は陽菜に会いに来たんだろ。俺のことはついでだよな。陽菜を目の前にすると素直になれないのか。完全に陽菜に惚れてるな。



 陽菜と夕晴の様子を見ていると、大和と凛が二人で俺を見る。



「騒ぎも収まったようだし、俺と凛は帰るぞ」


「悠人、またね」



 そう言い残して、二人はこの場から去って行った。なんとなくだけど、大和と凛って凸凹だけど似合っているような気がするな。



「私も帰るわね。悠人、あんまり相手を怒らせちゃダメよ。それじゃあ、また明日ね」



 楓姉さんの家は別方向だもんな。俺と結愛だけ残っていても仕方ないな。結愛が俺の袖を引っ張って、見上げてくる。



「私達も行きましょ。私達、関係ないんだし」


「そうだな。帰るか」



 俺と結愛が歩き始めた時、ガシっと陽菜に腕を掴まれた。



「ちょっと待ち。私を置いてかないでよ。今日、夕方からコンビニのバイトだから一緒に行く」


「そっちはいいのかよ。お前に会いに来たんじゃん」


「私、悠人と一緒に帰るけど、夕晴も一緒に来る?」



 夕晴が黙ったまま俺と陽菜とを交互に見る。



「一緒に行く」



 夕晴と一緒に帰るのは気乗りしないが、結愛からの反対もないし仕方がない。俺、結愛、陽菜、夕晴の四人は校門を離れ、商店街へ向かって歩いていく。


 俺と結愛が並んで歩いていると、後ろから陽菜が並んできた。



「あのね、夕晴って、一歳年下でね、グレちゃって、四月から高校へ行ってないんだよ」



 なんだ一歳年下だったのか。高校に行っていないということは不登校か。


 後ろから夕晴の「うるせー」という声が聞こえてくるが、陽菜はいっこうにお構いなしだ。



「それでね半グレ集団に入っていてね、毎日ヤンチャばっかりしてるの。面白いでしょ。キャハハ」



 どこが面白いのかわからん。半グレ集団……グレた奴等の集団。そのまんまかよ。ヤバいことをやってる奴等もいると噂では聞いたことはあるけど……


 俺達が歩いていると右手に小さな公園と自動販売機が見える。陽菜が俺の肘を引っ張って、公園を指差す。



「ねえねえ、公園で休憩しようよ。ね、いいでしょ」


「別に急いでるわけでもないし、いいぞ」



 公園の中へ入って行き、結愛と陽菜がベンチに座り、俺と夕晴がその前に立つ。夕晴が俺を見てチッ舌打ちをする。そして自動販売機の方へと走っていった。そして四本の缶コーヒを抱えて戻って来た。


 結愛と陽菜に缶コーヒを手渡し、俺に放り投げてくる。それを手でキャッチして、夕晴を見る。夕晴は顔を横を向いて、顔を逸らせた。案外いい奴なのかもしれないな。



「俺はブラックコーヒが好きなんだけどな」


「お前の好みなんて知らねー。要らなかったら返せ」


「ありがたくいただくよ」



 プルトップを開け、缶コーヒを飲む。甘いけど美味い。俺が飲んでいる姿を見て夕晴が舌打ちをする。



「チッ、飲むなら素直に飲めよ」


「夕晴と悠人、仲いいじゃん。キャハハ」


「どこが仲良く見えるんだよ」


「夕晴、面白いー。キャハハハ」



 陽菜が夕晴をからかって楽しそうに笑う。頬を膨らませているが、夕晴もまんざらでないようだ。


 結愛が缶コーヒを飲み終えて、夕晴を見る。



「悠人に聞きたいことがあったんでしょ。何なのか、さっさと言いなさいよ」



 結愛はまだ夕晴のことが不審らしい。夕晴が俺と陽菜を交互に見る。



「お前と陽菜、付き合ってんのかよ?」



 俺は女嫌いだ。産まれてから今まで女の子と付き合ったことはない。



「悠人とは付き合ってないよ。キャハハ」


「それじゃあ、陽菜の片想いかよ?」


「へへへ、それも嘘でーす。悠人とは、とても仲良しの友達でーす。キャハハ」



 陽菜がくったくのない笑顔で言い放った。それを聞いた夕晴が戸惑った顔で固まっている。



「本当か?」


「本当よ。だって悠人は女嫌いだもん」



 なぜ結愛が答える。結愛の言葉を聞いて、夕晴が驚いた顔をして、俺から一歩離れた。



「変な想像すんな。俺にそっちの趣味はねーよ。ただ女が鬱陶しいだけだ」


「焦らせんなよ」



 勝手に夕晴が焦ったんだろうが。俺のせいにするな。陽菜が俺と夕晴を見ながら爆弾を投げ込んだ。



「悠人は女嫌いだけど、とっても、とっても優しいの。だから悠人のこと大好き。キャハハ。悠人だったら彼女になってもいいと思ってるよ。キャハハ。冗談だけど。夕晴、ちょっと焦った? キャハハハ」



 陽菜が楽しそうに笑っているのとは対照的に、夕晴が俺のことをすごく睨む。



「お前、そこの姉ちゃんも彼女なのに、陽菜にまで手を出すつもりか」



 夕晴の言葉を聞いて、結愛が驚いた顔をして、すぐ後に顔を真っ赤にして俯いた。何かすごく誤解されているようだな。別に俺は結愛の彼氏じゃないぞ。



「別に結愛とも陽菜とも仲良くやってねーし。お前の勘違いだ。それに陽菜が冗談だと言ってるだろ。お前も俺もからかわれてるんだよ。そのぐらいわかれ」


「やっぱりお前のこと嫌いだ」


「嫌われて、けっこうだ」



 いきなり夕晴が俺の尻を軽く蹴った。



「また来る」



 そう言って公園の出口から走り去っていった。それを見て陽菜がにっこりと嬉しそうに笑う。



「悠人、夕晴に好かれたね。友達になってあげてね」



 どこが好かれてんだよ。


 俺達は陽菜のバイトが始まる時間になるまで、公園でだべっていた。

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