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23話 珍客

 今日は大変な一日だったな。早く家に帰ってゆっくりしよう。机の中を整理し、適当にカバンの中へぶち込んで席を立つ。


 すると湊斗が俺に肩を組んできた。


「なあなあ、今日は女の子達と遊びに行かないか。お前が来れば、女の子達も一緒に遊んでくれると思うんだよ」


「は? 何言ってんだ。断るに決まってんだろ」


「友達がいのない奴だな」


「まだ楓姉さんに惚れてるんだろ。そんなことしてると楓姉さんに呆れられるぞ」


「バレなきゃわからないだろ。俺、ちょっと女の子達と話してから帰るわ」


 そう言って湊斗は女の子の集団のほうへ歩いていった。


 俺は女嫌いだぞ。女の子の集団と仲良くするわけないだろ。


「悠人、行くか」


「ああ、帰ろうぜ」


 大和と二人で教室のドアまで歩いていくと、結愛と凛が楓姉さんの席に集まっていた。


「悠人、帰るの?」


「ああ、帰る」


「私達も帰るから、一緒に行こ」


「断る」


「なんでいつも素直じゃないのよ」


「うるせー」


 結愛を無視して大和と二人で廊下に出る。結愛と凛と楓姉さんの三人はカバンを持って後ろを歩いてくる。


「悠人、歩くの早い」


「結愛がチビだからだろ」


「私、チビじゃないし、悠人、デリカシーさなすぎ」


 俺の隣に並んできた結愛が絡んでくる。どうしていつも結愛はうるさいんだよ。


「あらあらあら、本当に二人は仲良しさんね。ウフフ」


 楓姉さんが俺と結愛を見て、おかしそうにクスクスと笑う。


 いつの間にか俺の隣には結愛と楓姉さんが歩いていた。振り返ると大和と凛が二人並んで仲良さそうに歩いている。大和の顔がデレデレだ。


 階段を降りて、靴を履き替え、校舎を出る。校門まで行くと、見慣れない金髪の男子が、派手なパーカーを着て立っていた。誰かを探しているようだ。そして俺と目があった。


 パーカーを着た男子が俺達に近づいてくる。


「なあ、聞きたいんだけどもよ。七瀬陽菜ななせひな柊悠人ひいらぎゆうとを知ってるか?」


何だ、こいつ。陽菜の知り合いか? うっとうしいことに巻き込まれるのはゴメンだぞ。


「知らん」


 俺はそれだけ言って、パーカーの男子を無視して歩き出す。すると俺の前に回り込まれた。


「待てや」


「何だよ。帰る所なんだが」


「お前、陽菜と悠人って奴を探して来い」


「嫌だ。断る」


 俺が歩き出すと、パーカー男子がまた回り込んで、行く道を遮った。


「なんかお前の態度、気に入らねーんだよな」


「気のせいだろ。俺は家に帰ろうとしてるだけだ。邪魔すんな」


 俺とパーカー男子が揉めていると、結愛が間を割って入って来た。目を吊り上げてパーカー男子を見ている。かなり機嫌が悪いようだ。


「悠人、嫌がってるじゃない。いい加減止めなよ」


 あちゃー、俺の名前を言うなよ。ほら、奴の目の色変わったじゃん。


 パーカー男子は眉間に皺を寄せて、俺を睨み付ける。


「お前が柊悠人か。さっきは知らないと言っただろ」


「面倒事は嫌いなんだ」


「誰が面倒事だ。舐めてんのか」


 パーカー男子のボルテージが段々と上がっているようだ。胸を掴むような勢いで俺の前に立つ。そこへ結愛が割り込んできた。


「だから校門で揉めるのは止めなって。騒ぎになったら先生達が駆けつけてくるわよ」


「うるせー女だな。痛い目見せるぞ」


「女に暴力を振るおうなんて最低!」


 結愛が言い終わった瞬間にパーカー男子が結愛の胸倉を掴もうと手を伸ばしてきた。咄嗟に手を出して、パーカー男子の腕を掴む。


「何考えてんだ。止めろ」


「うるせーよ。腕、離せや」


 女に手を出してはいけない。澪姉ちゃんから徹底的にそう教わってる。俺は女嫌いだが、女を殴ったことは一度もない。そんな奴は許せない。


 俺が臨戦態勢で構えていると、大和がゆっくりと動いて、パーカー男を見下ろす。大和は百七十cmを超える長身で、体格もいい。争いごとが嫌いで、根が優しいため、怒った所を見たことがない。


「このぐらいにしておけ」


 大和が出て来たことで、二対一になったからか、大和の体格に躊躇したのか、パーカー男子が一歩退いた。そして静かに楓姉さんが俺の隣に歩いてきた。


「こんにちは。陽菜ちゃんのお友達かしら? 悠人に何かご用だったの?」


「うるせーよ」


「あらあらあら、そんなこと言ってると、陽菜ちゃんに迷惑がかかるわよ。それでもいいの?」


「……」


 楓姉さんがやんわりと微笑みながら、パーカー男子に話しかける。段々とパーカー男子は楓ねえさんの雰囲気に呑まれて、落ち着いてきた。さすが楓姉さんだ。


「今日は何しに来たの? 陽菜ちゃんに会いに来たの? 悠人にご用なのかしら?」


「お前に言う必要はねーよ。うるせーよ」


「はいはい。そうですねー。私に言う必要はないですねー。陽菜ちゃんを待っててもいいけど、悠人と喧嘩しちゃダメよ」


「俺から仕掛けたんじゃねー。こいつが嘘を言うからだろうが」


 結愛がパーカー男を睨んだまま口を開く。


「誰だって、あんたみたいな男に言い寄られたら、知らないフリするわよ」


「うるせーよ。黙ってろ」


「黙らないわよ」


 まだ怒っている結愛が噛みつく。さっき殴られそうになっているから、怒るのも無理はない。


 周りを見回すと下校途中の生徒達がガヤガヤと遠巻きに集まって俺達を見ている。このままでは誰か先生達を呼びに行きそうだ。


 そう思っていると生徒達の輪の中からひょっこりと陽菜が顔を出した。そしてパーカー男子と俺達を見てニパッと笑った。


「何してんの?面白そうだから私も混ぜてよ。キャハハ」


場に似合わない陽菜の言葉に、思わず力が抜けた。


「陽菜、お前にお客さんだ」

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