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21話 湊斗の決意

 教室のドアを開けて中へ入ると、クラスの生徒達が「誰だ?」というような顔で俺を見る。

クラスの生徒達は視線を外すことなく、ジーっと見ている。視線が痛い。


 自分の席に座ると「え? 悠人くん?」「別人じゃないの?」など様々な声が聞こえてきた。

以前はモサモサ髪と前髪で顔を隠していたから別人と思われてもしかたないよな。

今日も前髪を降ろしてきているが、髪を切られているので目を隠しきれていない。


 湊斗が教室に入ってきて、俺を指差して笑う。



「ニャハハハ。昨日、写真が送られてきた時は腹を抱えて笑ったわ」


「うるせーよ」



 湊斗がスマホを取り出してすかさず撮影する。もうどうにでもなれだ。


 大和と凛が入ってきた。凛は俺を見ると口を両手で塞いでプププっと笑いながら席へ行く。

大和は顔を絡めながら近寄ってきて、俺の前で立ち止まった。ほんのりと顔が赤い。



「惚れそうだ」


「断る」



 何を言いだすんだ。気持ち悪いよ。


 大和から視線を外して周りを見回すと楓姉さんが静かに席に座っている。気配を消して、俺に見つからないようにしていたな。昨日、LINEで写真をバラまいたことは覚えているからな。後で文句を言ってやる。



「おーい悠人」



 俺が楓姉さんを睨んでいると、前の席から湊斗が声をかけてきた。いつになく真剣な顔をしている。いったい何だろう。



「悠人に伝えておこうと思ってな」


「何が?」


「あのな……俺、楓姉さんのこと諦めるわ」



 は? 何を言ってるんだ? 意味がわからんが。あれほど楓姉さんのことを好きだったのに、どういう心境の変化だ?


 湊斗が肩の力を抜くようにフッと笑った。



「楓姉さんって誰にでも優しいし、誰にでも穏やかだし、笑顔が可愛いし、こんな女の子と付き合えればいいなと思ってたんだけどさ」



 そのことは十分に存知あげてたぞ。



「それで?」


「楓姉さんだけを追いかけ続けるのも、おかしいと思ってよ。楓姉さんには惚れてるけど、別に他の女の子と素敵な出会いがあってもいいと思ってさ」



 言っていることがよくわからん。



「もっと簡単に言ってくれ」


「楓姉さんも追いかけるが、他の女の子とも出会いも追いかける。以上だ」


「そんなこと真顔で宣言すんな」



 もっと深い意味があるのかと思ったじゃないか。楓姉さんに惚れる前の湊斗に戻るだけだろ。湊斗が席を立って、俺に向かってニヤリと笑う。そして女の子の集団の中へと走っていった。


 人によって色々な恋愛があるのだろう。女嫌いの俺にとっては無関係の話しだけどな。女の子と付き合えば、絶対に面倒くさいことになって、絶対に巻き込まれる。そんなのはイヤだ。


 そんなことを考えていると燈子がプンスカと怒りながら俺の元へやってきた。



「その髪の色は何? 校則では金髪は禁止よ」


「これは一応茶髪だが?」


「先生に一応、報告するからね」



 顔を晒しているのに、燈子の態度はいつもと変らない。燈子らしいなと思う。



「燈子は良い友達だよ」


「そんなこと言ったって、先生に報告しますからね」



 そう言って、燈子はサッサと自分の席に戻っていった。さすがはクラス委員長だ。


 しばらくすると、湊斗がニヤニヤと笑いながら戻ってきた。湊の後ろには女子の集団が付いて来て、なぜか俺をずーっと見ている。何か嫌な予感がするな。



「悠人、少し頼みたいことがあるんだが」


「断る」


「クラスの女子達が、お前と一枚撮影したいんだってよ。悠人もクラスの一員じゃん。クラスの女子達のためにお前も協力しろよ」



 そんなの絶対にイヤに決まってるだろ。そんなこと絶対に許すもんか。


 すると湊斗が顔を寄せてきて、小声でささやく。



「もう約束しちまったんだよ。撮影させてくれたら、女子達が俺と遊んでもいいって言ってんのよ。俺を助けると思って撮影に協力してくれよ」


「断固、ことわる。絶対にイヤだ」


「ちょっとくらい、いいじゃねーか。お前も誘ってやるからさ」


「俺は女嫌いだ。女子の集団と遊ぶなんて、お断りだ」



 俺と湊斗が揉めている間にも女子の集団はスマホを構えて、勝手に撮影を始めている。



「撮影を止めなさいよ。悠人がイヤがってるじゃん」


「結愛の言う通りですよ。もうすぐHRですから、解散しましょうねー」



 いつの間に教室に来たのか、結愛が仁王立ちで立っていた。その隣に楓姉さんも立っている。楓姉さんがゆっくりと静かに湊斗に近寄る。湊斗は変な汗をかいて直立している。



「湊斗、ちょっとイタズラが過ぎると思うの。少し私とお話しましょうね」


「はい……」



 クラスの全員が見ている中、楓姉さんが湊斗を連れていった。楓姉さんにコッテリと絞られろ。



「はい、かいさーん、かいさーん」



 結愛が両手を広く振って、皆を解散させる。



「悠人はやっぱり私がいないとダメね」


「助かった。ありがとう」



 お礼を言うと結愛は満足そうに笑んだ。


 ドタドタドタと足音が聞こえてきて、見知らぬ男子が首からカメラをかけて、教室の中へ入って来た。そして一直線に向かって来る。



「君が写メにあった美少女男子か! 特集を組みたい! 撮影させてくれたまえ!」



 なんだかよくわからんが、頭が痛くなってきた。今度はいったい何が起こったんだ?

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