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20話 写真

 玲奈さんにベンツで送ってもらい、結愛と俺の二人は自分達の家があるマンション前に降ろしてもらった。楓姉さんを送り届けるためベンツは走らせて去っていった。



「今日はすっごく面白かったわ」


「俺は地獄だったよ」



 結愛と楓姉さんが興奮して、玲奈さんや奏ちゃんもノリノリで、撮影は大騒ぎとなり、俺は着せ替え人形のような扱いを受けた。


 もう身も心もクタクタだよ……早く風呂に入ってメイクを落としてー。



「楽しかったね。悠人、可愛いよ」


「うるせー」



 エレベーターが十階に着き、結愛が満足そうな顔をして、手を振りながら家に帰っていった。


 そして十二階で降りて、玄関のカギを開けて家の中に入ると、澪姉ちゃんが下着姿でPS5のゲームをしていた。



「ただいま」


「遅かったね。今まで何をしていたんだい? 早く夕食を作っておくれよ。私は腹ペコなんだよ」



 そう言いながらモニターから目を離して、俺の方へ振り返った。そして硬直した。一瞬の静寂の後、大爆笑。



「ワハハハハハハハ。ヒーーーー。アハハハハハハ。その顔ー」



 俺の顔を指差して、澪姉ちゃんがソファに転がりならが腹を抱える。


 だから帰って来たくなかったんだ。絶対に大笑いされると思ってた。



「髪型も変わって、メイクまでして、プッ……可愛いぞ。ギャハハハハ」



 澪姉ちゃんは真面目な顔をしようとして失敗して、また大笑いを始めた。どうにも笑がと止まらないらしい。俺は諦めてダイニングの椅子に座る。



「もう笑うのは止めてくれよ。夕飯、作んねーぞ」


「悪い、悪い。あー、堪能したわー。それで何があったんだい? 話してみなよ」



 今日あった出来事を澪姉ちゃんに話した。澪姉ちゃんは時々俺の顔を見て笑いながらも話を聞いてくれた。



「そういうことがあったのかい。悠人も厄介なことに巻き込まれたね。悠人は前髪で隠していなければ、顔が可愛いからね。昔を思い出すわー」


「勝手に昔を思い出すな」



 澪姉ちゃんに着せ替え人形にされていた小学校時代は、俺にとっては封印したい黒歴史だ。


 冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぎ、澪姉ちゃんがテーブルの上にコップを置いた。

そして俺の顔をジーっと見る。その眼差しに笑いはない。



「それで悠人は読者モデルにでもなるのかい?」


「そんなのする訳ねーじゃん。俺がこの顔にコンプレックスを持ってるのは知ってるだろ」


「それを聞いて安心した。悠人は私だけのおもちゃだからね」


「だれがおもちゃだ」



 確かに毎日のようにからかわれてはいるが。


 今日はなし崩し的に撮影されてしまったが、モデルになんかなりたいとは思わない。女子にキャーキャー言われても厄介なだけだ。もし男子に人気が出たら鳥肌もんだ。絶対にヤダ。



「俺、風呂に入るわ」



 椅子から立ち上がり、脱衣所へ向かって歩こうとすると、いきなり澪姉ちゃんから抱きしめられた。背中に柔らかくて暖かい何かが押し付けられる。



「悠人は私の弟だ。誰にも譲らないからね」


「何を訳のわかんねーこと言ってんだよ。背中におっぱいが当たってんだよ。下着姿で抱きつくな。離れろ」


「昔はお姉ちゃん、お姉ちゃんって、可愛かったのに。最近は生意気になりやがって」


「うるせーよ。風呂入る」



 逃げるように脱衣所へ入り、服を脱いで浴室へ入る。ボディーシャンプーでメイクは落ちるのだろうか? メイクの落とし方がよくわからん。




◇◇◇




 風呂を終えて、バスタオルで髪を拭きながら脱衣所から出てくると、リビングに澪姉ちゃんと結愛がペタンと座っていた。



「結愛、こんな時間に何してんだよ?」


「澪ちゃんにLINEで呼び出されたの。今日、撮影した写真を澪ちゃんが見たいんだって」



 そんな公開処刑みたいなことは止めてくれ。


 リビングの床を見ると、何冊かアルバムが広がっている。どこかで見たような気がするぞ。



「それ、何のアルバムだよ?」


「悠人の小さい頃のアルバムに決まってんじゃないか。私の秘蔵コレクションさ」



 ギャー! 何てもんを結愛に見せてんだよ! 止めてくれ! 



「そんなモノ、どこに隠してあったんだよ?」


「あんたに見つかったら、破り捨てられるからね。私の部屋に保管してたのさ」



 俺がリビングへ駆け寄ると、結愛に腕を掴まれて、止められた。



「いいじゃない。写真なんて見ても減るもんじゃないじゃん」


「結愛が気にしなくても、俺が気にするんだよ」


「澪姉ちゃんと交換条件だもん。私が今日の撮影の写真を見せる代わりに、悠人の小さい頃の写真を見せてもらうことになってるんだもん。だから絶対に見るの。悠人は邪魔しないで」



 どちらにしても、俺の恥部じゃん。


 結愛と澪姉ちゃんはリビングにアルバムとスマホを置いて、キャッキャッと騒ぎながら俺の写真を見ている。



「この頃は悠人も可愛かったのさ」


「この写真も可愛い」



(女性は過去を懐かしむのが大好きだ。写真は大好物。もうこれは止められない)



 呆然と立ち尽くしていると、ポケットのスマホが振動した。スマホを取り出して画面を見ると、LINEのグループチャットに撮影された俺の写真が貼られていた。



 楓『悠人が可愛くて、皆に自慢しちゃった♪』



 写真とコメントを見て力が抜ける。これで皆に知られてしまった。もう後戻りはできない。


 どうしてこうなった? 今日は厄日か!

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