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1話 居残り……

「もー悠人のおかげで居残りになったじゃない!」


「だから俺も掃除を手伝ってやってるじゃないか」



 目の前で片手に箒を持ち、片手を腰に手を当てて月城結愛つきしろゆあが怒ってくる。


 あまりにしつこく結愛が英語の課題の勉強を教えろと迫ってきたので、俺がでたらめな答えを教えたのだが……それが原因で英語の課題テストで、クラスで最下位の点数を取るとは……


 まさか本気で信じるとは思わなかった。


 呆れたように結愛が片目を瞑って、顔を斜めにして、口を尖らせた。



「悠人はいつも適当なことばっかり言うだから。その性格直したほうがいいわよ。女の子にモテないからね」



 何を言ってるんだ? 結愛には何回も言っているが、俺は女性に興味を持ったことは一度もない。高校生にもなってと思われるかもしれないが……



「そう思うなら、結愛も俺のこと構うなよ。勉強を教えてもらうなら燈子に教えてもらったらいいじゃないか。あいつなら真面目だし、委員長だし、適任だろ」



 俺のクラスにはザ・委員長ともいえる夢咲橙子ゆめさきとうこがいる。結愛とも仲が良いし、燈子に教えて貰えばいいんだよ。


 燈子は頭脳明晰だし、成績もトップクラスだ。成績が中の下の俺に勉強を教わるよりもいい。


 結愛が少し怯えたように結愛が両手で自分の肩を掴む。



「燈子は答えを間違えると怖いのよ」


「真面目に教えてもらえばいいだけだろ」


「だって怖いの嫌じゃん」



(そんなの知らん)



 面と向かっては言えないけど、女子というのは、どうしてこんなに面倒臭いんだろう。俺は自分に面倒がかからなければ、それでいい。



「じゃあ、楓姉さんに頼めよ。姉さんならおっとりしてるし、頭もいいぜ」



 クラスには瓜生楓うりゅうかえでというお姉さん的存在がいる。楓姉さんも頭が良く、性格はおっとりとしていて、温かく見守ってくれるから、勉強を教えてもらうには適任だ。


 結愛が深くため息をつく。



「だって、楓だと雰囲気がほんわかしていて、勉強する気にならないんだもん。いつも雑談になっちゃうんだもん」



(そんなのもっと知らん)



 もう誰でもいい、俺以外に頼れ。俺だって頭は良くないからな。



「凛に頼めよ。あいつは親友なんだろ」



 東郷凛とうごうりん、あいつなら結愛とは幼馴染のはずだ。持つべきものは幼馴染だろ。


 結愛が片手を振り、首を大きく左右に振る。何かお気に召さなかったらしい。



「凛なんてもっとダメじゃん。私よりも成績悪いんだよ」



(類友か!)



 だったら俺の悪友達でいいか。俺以外の誰かに押し付けられるなら誰でもいい。


 五十嵐湊斗いがらしみなと久遠大和くおんやまとは高校二年になってからの付き合いだが、二人共俺が信じられる悪友だ。



「湊斗か、大和に教えて貰えよ。あいつ等、俺と同程度には成績いいぞ。女子にも優しいし、俺みたいに意地悪しないしな」


「湊斗に教えて貰えって言うの? 湊斗は顔はいいけど、チャラ男だからイヤ」



(正論だな。俺が女だったら、湊斗には近寄らん)



 結愛が苦虫を潰したように顔を歪める。



「大和は論外。勉強教えてもらうなんて無理。絶対に勉強を教わっている最中に筋肉自慢が始まるもの。あんな脳筋は暑苦しくてイヤ」



(何も言い返せない……大和、お前不憫だな)



 女性は時として消去法で物事を考える。結愛もクラスメートを消去法の振るいにかけ、最後まで残ったのが俺というわけだな。悔しいが納得するしかない。



「なるほどな。俺に勉強を教えてくれと言ってきた意味がわかった。だが断る。俺は真面目に勉強を教える性格ではない。これからは他を当たれ」



 結愛が呆れたようなため息をつく。



「男子にはそれなりなのに、女子とは距離を置こうとするのっておかしいよ。こんなことしてると、本当に高校で女子とお付き合いできないわよ。悠人って、まだ頭が中学生なのかもね」



(大きなお世話だ。放っておいてくれ)



 これ以上、結愛とだべっていても仕方がない。全く掃除が進まない。適当に大きなゴミだけ箒で掃いて誤魔化せばいいか。



「俺のことなんてどうでもいいじゃないか。そんなことよりも早く掃除を済ませてしまおうぜ」


「せっかくこの私が心配してあげてるのに。悠人は私と二人っきりになってもドキっともしないのね。なんだかムカつくー」



 結愛が両手を後ろにし、胸を突き出して俺に向かって歩いて来る。間近で立ち止まって、上目遣いで俺を見る。


 結愛はハッキリ言って美少女だ。切れ長でクリクリとした目、小さくて筋がとおった鼻、笑顔が可愛い唇、大きくて揺れる胸。スラリと伸びた長い肢体。


 俺達が通っている私立三条院学園高校の二年生の中では、美少女ランキング一位の呼び声も高い。だが、俺には通用しない。



「どう? 少しはドキドキした?」


「残念でした。俺を誘惑するなど一億年早い。さっさと掃除しろ」


「つまんないの。そんな悠人だから安心できるんだけどね」



 結愛が小さく呟いて、掃除に戻っていった。しばらく二人で教室を掃除する。窓から午後の日差しが温かい。


 ゴールデンウイークが空けたばかりだからな。そろそろ暑くなってくるよな。


 教室の扉が勢いよく開けられた。そして悪友の湊斗と大和が飛び込んできた。何か面白いことを発見したように、二人共笑顔だ。



「今すぐ屋上へ行こうぜ。楓姉ちゃんが、三年生男子から告白を受けてるぜ」



 大和がニヤニヤと俺を誘う。



「三条院学園の女子は全員、俺の彼女候補なのに、俺の楓に告白するなんて許せない」



 そんなこと言ってるから彼女ができないんだぞ、湊斗。


 楓姉ちゃんは和風美少女だからな。三年生男子からも人気が高い。今まで楓姉ちゃんと付き合えた男子はいない。


 こんなイベントを見逃す手はない。行かねばならん。



「結愛、行くぞ。屋上へ急げ」


「ちょっと待ってよ。箒を片付けないと」


「うるへー。急げ!」



 俺達は箒を投げ捨て、一目散に屋上へ向かう階段へ走り出した。

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