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15話 お泊り会

結愛視点です。

 今の時刻は午後八時三十分。私達はお泊り会を開いている。参加者は私、燈子、楓姉さんの三人だ。凛は学校を休んでいたので今日は不参加。


 三人共、既にパジャマに着替えてゴロゴロタイム。テーブルの上には今日買ったお菓子がてんこ盛りに置かれ、紙パックのジュースもペットボトルも準備は万端。


 私の部屋のフローリングの上には、布団が敷き詰められ、その上で皆でゴロゴロ。



「本当に悠人って、いつも俺には関係ないって態度がムカつくのよね」



 リラックスしているせいで、いつもよりも愚痴が多くなってしまう。でも本当にムカつくんだから仕方がない。


 枕にアゴを乗せて、頬を膨らませていると、燈子が私の話を聞いて、うんうんと頷いている。



「悠人は少し協調性が欠けてると思う。クラスのことにも積極的に協力しないし、決められたことも、いい加減にやるし」



 楓姉さんが柔らかい笑顔でジュースを一口飲む。



「そうは言うけど、悠人は協力しない訳でもないし、いい加減だけどやることはやってると思うけどな」


「だから注意が中途半端になって、イライラするんじゃない」



 燈子が口を尖らせる。



「悠人があんな調子だから、湊斗も大和も私の言うことなんて聞かないんだもん」



 ゴロゴロと布団の上を転がりながら燈子が言う。すると楓姉さんが不思議そうに首を傾げる。



「あらあら、湊斗はとっても素直よ。少し甘えん坊だとは思うけど」


「それは湊斗が素直なのは楓姉さんだけよ。楓姉さんも湊斗の気持ちわかってるんでしょ」



 燈子がここぞとばかりに楓姉さんに突っ込む。楓姉さんは何事もなかったように、テーブルからポッキーを取り出して一本口に咥えた。



「湊斗は素直ないい子よー」


「湊斗が告白してきたらどうするの?」



 燈子が好奇心の目で楓姉さんを見る。私もそこに関しては興味津々だ。



「そうねー。いい子だけだと物足りないかもー」



 楓姉さんがケロッとした顔で言う。やっぱり湊斗では楓姉さんを落とすのは無理か。


 燈子がゴロゴロと転がってきて、私の体をギューッと抱きしめる。



「結愛は誰がいいの? 怜央も遥馬もいるじゃん。二人共イケメンだよ」


「ん……怜央は性格がアレだから論外かも。遥馬は良い人そうだけど、あまり絡んだことがないからわかんない」



 楓姉さんが私を見て「ウフフ」と笑う。



「結愛は悠人のことが大好きだものね」


「え?」



 楓姉さんの言葉を聞いて、燈子が目を見開いて私を見る。ちょっと燈子、顔が近いよ。



「べ、べつに悠人のことなんて好きじゃないよ」


「へー、そうなんですねー」


「楓姉さん、何か知ってるなら、教えなさいよ」



 燈子がゴロゴロと転がって楓姉さんの体にしがみつく。


 楓姉さんは何を知ってるの? 胸がドキドキする。顔が熱い。


 楓姉さんが悪戯っ子のような表情で私を見る。



「だって、課題プリントを何回も教室に忘れて帰ってるんだもん。悠人に会いに行く口実なんだなーと思ってたんだけど」



 あー楓姉さんにバレてた。何も言い返せない。私は枕に顔を埋めて黙り込む。



「それにねー。密かに悠人と二人で下校するのを楽しみにしていること、私は知ってるよー」



 図星だ。顔が赤くなるのがわかる。もう二人の顔を見れない。



「ウー……それ以上、楓姉さん言わないで……」


「結愛って、行動がわかりやすくて、可愛いね」



 楓姉さんが優しく私の頭を撫でる。枕に突っ伏していると、燈子が強引に枕を引っぺがす。



「どこがいいの? 悠人のどこがいいの?」


「……優しい所……」


「え、何でも真っ先に断る、言うことを聞かない悠人が?」



 燈子が唖然とした顔で問い返してくる。すると楓姉さんがクスクスと微笑んだ。



「言葉だけ聞いていたらそうよねー」


「どういう意味よ。具体的に教えなさいよ」


「悠人は言葉では必ず反論するの。でもね、行動は違うの。行動はいつでも私達の言う通りに叶えてくれているのよ」



 なぜ楓姉さんが悠人の良い所を知ってるの? 私だけが気づいてると思ってたのに。


 思わずガバっと顔を上げると、楓姉さんが包むような温かさで笑んでいた。



「楓姉さんも悠人のことが好きなの?」


「そうねー、湊斗や怜央や遥馬よりも、悠人のほうが好きかもー」



 そんなのダメよ。楓姉さんに勝てるはずない。悠人を取られちゃう。私がアワアワと焦っていると、楓姉さんが優しく、私の額を指先でチョンと押した。



「私は悠人も好きだけど、結愛のこと、もっと大好きよ」



 それってどういうこと? 意味わかんない。



「悠人には中学の時に助けてもらった思い出があるの。悠人は覚えていないかもしれないけど」



 私の頭の中を中学時代の思い出が流れる。私も悠人に助けてもらったことがある。その時から悠人のことを目で追いかけるようになった。悠人のことが頭から離れなくなった。


 その頃から私は悠人のことが好きだったんだと今ではわかる。



「私も悠人に助けられた。本人は覚えていないと思う……」


「悠人って、本人は全く気にせずに他人を助けてしまうような、そんな男の子よね」



 そう言って楓姉さんが昔を懐かしむように微笑んだ。



「悠人の中学時代の話を私に聞かせなさい。私は中学が違ったんだから教えなさいよ」



 燈子が楓姉さんと私のパジャマを引っ張る。



「あれはねー……」



 楓姉さんが中学時代の話をし始めた。それから私と楓姉さんは交互に悠人との思い出を燈子に語った。


 やっぱり楓姉さんも悠人のことが好きなのかも……でも絶対に負けないんだから。


 三人のパジャマパーティは深夜まで続き、私達は遅刻ギリギリで学校へ登校することになった。

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