13話 大和の頼み
開けましておめでとうございます(#^^#)
本年もよろしくお願いいたします(#^^#)
怜央、遥馬の二人とお茶に行ってから四日が経った。今頃二人はグァムの暑い日差しの下で撮影しているんだろうな。俺達が毎日退屈な授業を受けているのに少しズルいよな。
そんなことを考えている間にチャイムが鳴り、午後のHRが終わった。やれやれ、やっと終わったかと両手を広げて伸びをする。首をコキコキと左右に鳴らして席を立つと、結愛が駆け寄ってきた。
「LINEで話した通り、今日は燈子と楓姉さんと三人でお泊りの女子会を開くから、その準備をしたいから別で帰るね」
別にいつも一緒に帰る約束をした覚えはない。ん……一人少ないような気がするな。
「あれ? 凛は呼ばないのか?」
「だって凛は三日前から休んでるじゃない。LINEしてみたけど、全く既読がつかないんだもん。風邪でも引いたのかもね」
そういえば凛は三日前から休んでるんだった。大和が元気ない訳だよな。
「そういうことだから、私、行くね」
そう言って結愛は駆け出し、燈子、楓姉さんと合流すると三人で教室を去っていった。
「俺、今日は先に帰るわ」
そう言って湊斗がそそくさと教室の出口から姿を消した。
楓姉さんがいないから、湊斗も一緒に帰る相手がいないからな。結愛がいなくなって、うるさい奴もいない。俺も今日はのんびりと帰るとするか。
「悠人、今日は暇か?」
隣を見ると、大和が元気なく、まだ席に座っていた。
「今日は背中の最長筋が元気がないんだ」
何を訳のわからんことを言ってるんだ。俺に筋肉で例えられても困る。何を伝えたいのか全くわからん。
「それで何が言いたいんだ」
「凛がいなくて寂しい」
そのまま伝えろよ。何か心配そうな顔で大和が見上げてた。
「付き合ってほしい」
「ノーサンキュ」
男と付き合う趣味はない。まさか大和に告白されるとは思わなかったわ。ちょっと怖いぞ。大和が呆れ顔で俺を見た。
「そういう意味じゃない」
「知ってる」
「茶化すな。俺は真剣なんだ」
何が真剣なのかはわからんが、とにかく話を聞こうじゃないか。
「言ってみろよ」
「凛の家に行こうと思う」
「行ってらっしゃい」
「俺一人で行くなら、お前に話さないだろ。少しは協力的になれよ」
凛に会いたいなら大和一人で行けばいいと思う。そのほうが凛に大和の気持ちが伝わると思うし、鈍感な凛でもわかってくれると思うぞ。
大和がガッシっと俺の両肩を掴んだ。暑苦しいので止めてください。
「一緒に行ってくれ。一人で行く勇気がない」
「断る」
「少しは悩めよ。即答は止めろよな」
だって面倒くさいじゃないか。男の頼み事なんて聞きたくもないわ。女の頼み事も厄介でイヤだけど。
大和が肩を掴んでまま、俺を大きく揺さぶる。
「凛が心配じゃないのか。三日も休んでるんだぞ。大変な病気をしていたらどうするよ」
「大病していたら、三日も経ってるんだから、病院に行ってるだろうよ。病院に行けないような大病なら、家族が救急車を呼んでいるはずだ。俺達の出る幕なんてない。以上だ」
「お前の心は氷か」
なんとでも言え。俺は真直ぐに帰りたいんだ。家に帰ってから洗濯しないといけないし、その前にスーパーに夕食の食材も買いに行かないといけないの。家の中の片付けや掃除もあるしな。
「俺も結構、忙しい身なんだけど」
「頼むから付いて来てくれよ。PS5のソフトを一カ月間貸すからさ」
「わかった、友よ、一緒に行こう」
俺の言葉を聞いて大和が二パッと笑う。大和は笑顔がよく似合うな。
俺と大和は校舎と出て校門を潜る。すると大和が凛の家に向かう方向ではなく、商店街へ向かって歩いていこうとする。
「どこへ向かうんだ? いつも大和が帰っていく方向と違うじゃないか」
「バカ野郎。凛は栗饅頭が好きなんだよ。だから和菓子屋で栗饅頭を買っていくの。凛の家に行くんだから、手土産を持って行くのが常識じゃないか」
お前は近所のお婆ちゃんか!
手土産なんていらないと思うが、大和がそれで気が済むなら仕方がない。付き合おう。
俺達は商店街にある和菓子屋で栗饅頭を買い、凛の家へと向かう。
「凛、大丈夫かな? 病気で熱を出して、うなされていないかな?」
「そんなのは知らんし、わからん」
「悠人は心が冷たいんだよ」
凛が本当に病気かどうかもわからなし、大和の過度な妄想に付き合うつもりはない。勝手に言わせておけ。
しばらく路地を歩いていると、目の前に少し古びた二階建ての赤い屋根のアパートが見えてきた。それにしても年季の入ったアパートだな。どんな人が住んでいるんだろう?
俺がアパートを眺めていると、大和が人差し指でアパートを示した。
「あれが凛の住んでいるアパートだ」
え……とても家族で暮せるようなアパートに見えないんですけど?
大和がスタスタと歩いていき、アパートの一階にある一番奥の部屋の前で止まった。仕方ないので俺も大和の後に続く。
大和が意を決したようにゴクリを唾を飲む。
「チャイムを押すぞ」
「早く押せ」
待っていられなかった俺が人差し指でボタンを押した。すると家の中からピンポーンというチャイムの音が聞こえる。
しばらくすると玄関のドアがそーっと開かれ、ボサボサ頭の凛が眼鏡をずらして顔を出した。
「はにゃ?」
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