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11話 マネージャー

 六人で校舎を出て校門に到着すると、校門の前に濃紺のツーピースのスーツを着た女性が姿勢正しく立っていた。下校する生徒達が珍しそうに視線を向けるが、涼しい顔をして立っている。


 俺達が校門へ到着すると、スーツ姿の女性が近寄って来た。近くで見ると眼鏡美人だ。



「怜央と遥馬のマネージャーをしている秋月玲奈あきづきれなです。皆で仲良く下校されているようですが、怜央と遥馬とはどのような関係でしょうか?」


「玲奈、皆は僕のベストフレンドさ」



 怜央、何を言いだすんだ。俺はお前と友達になったつもりはないぞ。偶然、隣のクラスなだけで、ほとんど話したこともないだろ。そもそもお前、俺の名前も覚えてないだろ。


 遥馬が困ったような顔で玲奈を諫める。



「玲奈さん、そんなにピリピリしなくて大丈夫だよ。皆は怜央と俺の知人で、これからお茶を飲みに行くだけだからさ。明日から撮影でグァムだし、今日はオフだから、少しだけ羽を伸ばそうとしただけだよ」


「では個人的に親密な方はいないということでいいのですか?」



 すると怜央がいきなり結愛の腕を掴んで、体を引き寄せた。結愛は慌てるが止められない。



「結愛は俺の特別に大切な子猫ちゃんさ」



 その言葉を聞いて、玲奈さんが目を鋭くする。



「怜央の恋人だと?」


「そうだよ」



 え、そうだったのか。知らなかったぞ。いつの間に。


 確かに結愛は学園一の美少女と言ってもいいし、顔だけみれば、イケメンの怜央とお似合ともいえる。


 結愛が顔を赤くして、両手をアワアワと大きく振る。



「ち、ちがいます。私は誰ともまだ付き合っていません。一度も男子と付き合ったこともありません。ちがいます」



 結愛はモテるから、男子と付き合ったことあると思っていたが、今まで一度も付き合ったことがないのか。恋愛経験0とは、それはそれで寂しいな。


 結愛の言葉を聞いて、皆が少し憐れんだような視線を向ける。視線に耐えきれず、結愛が顔を赤くして俯いたまま動かなくなった。


 玲奈さんが咳ばらいをして、怜央と遥馬に向き直る。



「怜央も遥馬も将来はアイドルになるだから、今から変な噂が出ないように、行動には最新の注意をしなさいと常々言ってるわよね」


「怜央もわかっているからさ。校門で説教するのは止めようよ」



 遥馬が困ったような笑みを浮かべる。玲奈さんはハッとしたような顔になり、咳払いを一つして、俺達を見回す。そしてなぜだか、目を輝かせた。



「さすが怜央と遥馬が一緒にいる子達ね。皆、素質のある子達ばかりじゃない。私もこの子達に興味があるわ。私も一緒に行くからよろしくね」



 素質のある子……結愛も楓姉さんも学園でも人気のある美少女だ。湊斗もチャラ男だけど、顔だけ見ればイケてるほうだ。そうなるとモブは俺だけか。


 怜央が得意げに胸を張る。



「そうさ結愛と楓は芸能界でも通用する子猫ちゃん達さ。玲奈もわかってるじゃん」


 怜央、どうしてお前が得意気なんだよ。


 遥馬が玲奈さんのスーツの裾を引っ張る。



「校門で立ち止まっての立ち話は止めようよ。すごく目立っているからマズイでしょ。見物人も多くなってきてるし、早く行こう」



 周りを見回すと、下校途中の生徒達が輪になって見物している。怜央と遥馬はとにかく目立つからな。このままだと騒ぎを聞きつけて先生達が来る可能性がある。それはマズイ。



「では歩きながら話しましょ」



 玲奈さんが歩き始め、怜央と遥馬もそれに続く。俺達は歩道を歩き始めた。すると玲奈さんが素早く動いて楓姉さんの横に並ぶ。



「あなた可愛くて綺麗ね。ちょっと大人びた雰囲気があるのがいいわ。お名前を教えてちょうだい」


「あらあら、私ですか。瓜生楓うりゅうかえでと言います。よろしくお願いしますね」



 楓姉さんが愛想よく微笑み返す。



「瓜生、変わった名前ね。瓜生と言えば瓜生グループがあるけど、関係者なのかしら?」


「知ってるんですか。そこは私の父の会社だと思いますねー」



 瓜生グループ……系列の子会社だけでも百を超える大会社じゃないか。やっぱり楓姉さんは金持ちの娘だったんだな。


 玲奈さんがうんうんとしきりに頷いている。



「やっぱり育ちの良さが雰囲気に出てるわね。楓さん、良かったら私達の事務所に所属しない? 楓さんなら絶対に芸能界で売れるわ」


「えー、芸能界、興味ないです。テレビもほとんど見ないし、家でスマホを使うのはLINEだけで、他はほとんど触らないので」



 確かに俺も暇な時はスマホをいじっていることのほうが多いからテレビは見ないな。楓姉さんは家ではスマホはLINEだけなのか。珍しいな。


 玲奈さんは結愛の隣へ移動してニッコリを笑う。



「結愛さんは、芸能界に興味ある? 結愛さんならすぐにでも芸能界でアイドルデビューできるけど?」


「興味ないです……多くの人前に出ると緊張するので」


「そんなの慣れよ。慣れれば怜央や遥馬のように楽しくなるわ」


「結構です。お断りします」



 顔を真っ赤に染め、俯き加減で結愛が答える。街でスカウトされても断っていると聞いたことがあるし、結愛は目立ちたがりではないもんな。


 玲奈さんがキリッとした顔で両手を握りしめ、独り言を呟いた。



「まだ諦めないわ。こんな逸材、放っておけないモノ」



 さすが芸能プロダクションのマネージャー。商魂、逞しいっすね。

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