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10話 廊下で……

 午後のHRが終わり、クラスメイト達はそれぞれにカバンを持って席を立つ。


 俺もカバンを持って帰ろうとするとガシッと腕を掴まれた。振り返ると結愛が睨んでいた。



「なんで勝手に帰ろうとしてるのよ」


「何か用か?」


「今日はお茶して帰るって言ってたじゃない」



 あ、完全に忘れてたわ。そう言えばアレな奴と苦労人とお茶だったな。あー面倒臭いな。逃げたいなー。逃がしてくれないだろうなー。



「絶対に逃がさないんだからね」



 そう言って結愛が口を尖らせる。お前はエスパーか。俺の心を読むなよ。


 教室のドアの所で楓姉さんが両手でカバンを持って俺達を待っている。湊斗が走っていって、楓姉さんに話しかけた。本当に湊斗は楓姉さんのことが好きなんだな。


 二人の傍まで歩いて行くと、楓姉さんが振り向いてニッコリと笑んだ。



「二人と放課後にお茶するなんて久しぶりね」



 楓姉さんとは帰る方向が違うからな。でも校門を出るまではいつも皆で一緒だぞ。湊斗と大和とは頻繁に遊んでるしな。


 四人で教室を出ると怜央と遥馬が廊下で待っていた。長身でイケメンの二人だから廊下でも目立つ。怜央は洋風の顔立ちで、明るい茶髪が良く似合う爽やか系イケメン、遥馬は和風な顔立ちで、きれいなサラサラな黒髪が似合うイケメン。対照的な二人だが、それぞれに身長も高く、体格もよいイケメンなので、目立つことこの上ない。



「僕達を待たすなんて、結愛は罪な女の子だね。そこがいいんだけどさ」



 怜央は歯をキラリと輝かせて笑む。HRが終わってから、まだ十分しか経ってねーぞ。お前達が来るのが早いんだよ。



「俺達も今来た所だよ。今日は怜央のワガママを聞いてくれてありがとう。一緒に遊びに行けて、俺も嬉しいよ」



 遥馬が人懐っこい笑みを浮かべた。さすがは苦労人だな。


 怜央が結愛の隣に立って、女性が蕩けるような笑みを浮かべる。



「さー結愛、今日の僕は、君のモノさ。僕と腕を組んでもいいんだよ。遠慮せずに僕と腕を組もう」



 結愛は少し引きつったような笑みを浮かべた。



「ん……怜央は有名人じゃない。そんな人と腕なんて組めないよ。それに皆に勘違いされるよ。そうなると怜央に迷惑がかかるから。恥ずかしいし、止めておくね」


「遠慮することはないのに。結愛は照屋さんだな。そこがまたいいんだけどね」



 そう言って、怜央が結愛の手を握って歩き出した。結愛が振り返って、誰か助けてという視線を俺に送る。


 そんな視線を送られても、俺にはどうしようもないぞ。俺は別に結愛の保護者ではない。そんなこと知らん。自分で対処しろよ。


楓姉さんが俺の隣に並んできて、透き通った目で俺を見る。そして俺だけにわかるように小さな声で囁いた。



「悠人はいいの? 結愛が怜央と手を繋いでも、たぶん怜央は結愛に気があると思うんだけど」


「別に俺は結愛の彼氏でもないし。結愛が困っているからといって助けてやる義理もない。結愛が本気でイヤだったら、怜央の手を振り払うだろ。俺の関知する所じゃない」


「そんな言い方、私は好きじゃないなー。結愛を助けてあげてね」



 楓姉さんが俺を諭すように穏やかに笑む。この笑顔に弱いんだよな。


 俺が黙って考えていると、遥馬が俺と楓姉さんの間に割り込んできた。



「今日一日だけは怜央の好きなようにさせてやってくれないか。明日から俺達二人は雑誌の撮影でグァムに行かないといけないんだ。特に怜央は芸能界の仕事もしているから、すごく忙しくて、フリーな時間がほとんどないんだよ。今日の所は許してやってほしい」



 怜央と遥馬も苦労をしてるんだな。今日一日ぐらいは怜央の好きなようにさせてやりたいという遥馬の気持ちはわかった。



「遥馬が言いたいことはわかった。でも結愛の気持ちも気にしてやってほしいぞ」


「それはわかってる。後から結愛には謝るつもりでいる」



 謝られて済む問題ではないと思うが、遥馬の立場だと謝るぐらいしかできないか。


 楓姉さんが悩まし気に首を傾げる。



「怜央の好きにさせてもあげたいし、結愛が恥ずかしがっているから助けてあげたいし、悩ましい問題ね」



 そして少し考えていたが、急に悪戯っ子のような顔で楓姉さんが俺の腕に腕を絡めてきた。

楓姉さんの体が近い。楓姉さんから甘くて爽やかな香りがする。いったい何なんだよ。



「いいじゃない。怜央と結愛も手を繋いでいるんだし。私達も腕を組みましょ。ウフフ」


「わー、やめろ! 悠人、楓姉さんに何てことするんだ! 今すぐ楓姉さんから離れろ! この野郎!」



 湊斗よ、状況を見ろ。俺が楓姉さんに腕を組まれたんだよ。動揺するのはわかったから、パニックになって、騒ぎ立てるのは止めろ。廊下にいる連中が全員俺達を見てるじゃないか。


 楓姉さんも止めてくれ、廊下にいる全員が見てる。このままだと楓姉さんと俺が噂になるぞ。楓姉さんは美少女で有名だから俺が妬まれる。俺は目立ちたくないし、噂にもなりたくない。モブのままでいさせてくれ。


 俺が内心で慌てふためいていると、後ろを振り返った結愛が、目を吊り上げた。



「私が見ていない隙に楓ねえさんに何してんのよ。油断も隙もないわね」



 結愛が怜央の手を振り払って、強引に俺の横へ並ぶ。それと同時に楓姉さんが俺から腕を離して、湊斗の隣へ行き、湊斗の手を握って、ニッコリと舌を出した。


 やってくれたな楓ねえさん。これだと俺が何か起こしたみたいじゃないか。


 俺達が騒いでいるうちに遥馬が怜央の隣に行き、怜央の肩を叩く。



「ここで騒いでいても仕方がない。怜央、早く学校を出よう」


「わかったよ遥馬。結愛、遅れずに俺について来るんだぞ」



 怜央は何事もなかったように歯をキラリと光らせて廊下を歩いていく。

 鈍感か!

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