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9話 お弁当

 授業が終わり、昼休憩になった。その途端に湊斗と大和の二人は、学食へ向かって走っていった。


 人気の日替わり定食は、売れ残りがないように少なめに作られている。だから早く行かないと売り切れになってしまうのだ。


 二人が行ってしまった後、俺は机の中から弁当箱を取り出す。楓姉さんがやってきて、湊斗の席に座る。凛がソロリソロリと歩いてきて大和の席に座った。そして俺の隣の席に結愛が座り、その後ろに燈子が座る。いつもの光景だ。


 俺は毎日朝六時から起きて弁当を作って学校へ持ってきている。父さんは仕事で忙しく、澪姉ちゃんに料理をさせたら、壊滅的なモノが出来上がるので、仕方なく俺が弁当を作っている。


 袋から弁当を取り出し、蓋を開ける。ハンバーグ、アスパラベーコン、エビフライ、卵焼き、生姜焼き、これが本日の俺の弁当のおかずだ。我ながら満足のできだと思っている。



「毎日見ているけど、やっぱり悠人のおかずはレパートリーが多くて鮮やかね」



 楓姉さんのお弁当は重箱で、専属の料理人が弁当を作ってくれるそうだ。楓姉さんの家って絶対に金持ちだよな。庶民の家に専属の料理人なんていない。


 凛は学校に来る途中でコンビニに寄り、コンビニ弁当を買ってくる。今日はカツ丼だ。


 燈子は中学の時から自分で弁当を作っているらしく、料理が得意らしい。弁当の料理も色鮮やかで、美味そうだ。


 結愛はいつも弁当の蓋を開ける時に、少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。結愛は今年の春から弁当のおかずを自分で作っているらしい。でも、おかずのできはイマイチ。味が濃かったり、薄かったりと日によって違う。中にはコゲコゲのおかずもあったりする。


 凛がカツ丼を頬張りながら、箸で俺のアスパラベーコンを奪っていく。



「本当に悠人は器用よね。私の彼氏になってほしいよね」


「凛は彼氏がほしいんじゃなくて、弁当を作ってほしいだけだろ」


「当り」



 凛は将来、大学卒業後、ニートになる予定で、家事全般もする気はないらしい。どこまでも親の脛をかじる算段だという。ご両親が不憫だ。



「凛も少しは悠人を見習って、少しは料理ぐらいしなさいよ。料理なんて慣れなんだから。私なんて中学から作ってるから、今では弁当ぐらいは簡単よ」



 さすが燈子、学級委員長、良い子の鏡だね。そんなお堅い性格だから男子に一目置かれるんだよ。彼氏が欲しかったら、少しは柔軟になればいいと思うけど、そのことは言えない。



「本当に悠人のおかずは美味しいわ。はい、私のおかずと交換ね」



 結愛が箸で次々を俺のおかずを奪っていく。そしてコゲコゲの物体を俺の弁当の蓋に置いていく。こんなに焦げたモノを食べても大丈夫なのか。毎日おかずを焦がすなんて、結愛には料理のセンスがないと思う。言うと泣かれたら困るので黙っているけどさ。


 女性陣は会話を弾ませながら、俺の弁当のおかずを次々と奪っていく。代わりに色々なおかずを置いていってくれるからいいんだけどさ。少しは遠慮しろよ。



「楓姉ちゃんは湊斗のこと、どう思ってるの? 湊斗が楓姉さんに惚れてるのは皆知ってることでしょ。とぼけても無駄なんだから」



 結愛が弁当を頬張りながら楓姉さんに話題を振る。楓姉さんは箸の先を咥えて、少し考えているような顔をした。



「あらあら、そうね……良い子だとは思うわよ。良い子だけなんだけどね」


「湊斗って、チャラ男を気取っているけど、チャラ男に成りきれない人の良さがあるのよね」


 良い子……いい人。人畜無害という意味だよな。


 凛が軽い調子で指摘する。湊斗、女性陣には全てを見透かされているぞ。本人を目の前にしたら言えないな。



「大和はどうなの? 凛はどう思ってるのよ」



 凛が大和のことをどう思っているのか。大和も知りたいだろうが、俺達も知りたい。



「そうね……少し変な所もあるけど、元気で明るいし、ハッキリしているから好きよ。Likeの意味だけどね。恋愛対象ではないね」



 大和は告白する前から友達コースか。不憫だ。でも女心と秋の空という諺もある。想っていれば通じるかもだしな。


 弁当を全て食べ終わった結愛が納得したように笑む。



「私達の近くにいる男子って、私達にとって安全パイなのよね。悠人は女嫌いだし。湊斗も大和もいい人だし。変に言い寄られる心配がないから」


「安全パイと言うな。いい人も言うな。それは男にとって、傷つく言葉なんだぞ」


「だって本当のことじゃん」



 事実は時に人を傷つける。確かにそうだな。



「お前等な、俺は男だぞ。女ばかりで集まって、話してるならいいが、なんで俺がいる前で話すんだよ」


「それは悠人を男扱いしてないからじゃん」



 結愛が大きい胸を張って言う。その胸をもいでやろうか。



「あらあら、私は悠人のことを男だと思ってるわよ。結愛がいらないと言うなら、私が貰っちゃおうかな、ウフフ」



 楓姉ちゃんの爆弾投下で結愛が口をパクパクとさせている。楓姉ちゃんは悪戯っ子のように微笑んでいた。


 二人で盛り上がっているが、俺はどちらのモノでもないからな。

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