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お待たせしました!ぎっくり腰が落ち着き始めたので投稿再開します。


「えーすっごいロマンチックな話ですねー。いいなーいいなー」


 いつの時代も女の子というのはコイバナが好きらしい。どちらかといえば硬派な雰囲気を感じていたサーシャがノリノリだ。

 普段は資料と格闘していて静かな研究室に、女子二人の華やかな話し声が響いている。


「そうですね。年齢を重ねてからでも恋愛ってできるんだな、と素敵に思いました」


 話題は先日訪ねたシスターシャルロッテだ。

 彼女は結局あのあと、勇気を出して番であるダーヘルに会いに行った。その結果十数年の時を経て彼らは結ばれた、というワケだ。

 物語として売り出せば、かなりウケるのではないかと思えるくらいにロマンチックな話である。


「ほんとですよー。

『今まで待ったんだから、あと数年待つくらいなんてことない』だなんて言われてみたーい!」


「重ねた年月分の重みを感じる言葉でしたね」


 離れていた期間の苦労を考えるととても切なくなる。それでもシスターシャルロッテとダーヘルの幸せそうな笑顔を見られたので良しとしたいところだ。

 これからも二人はそれなりに苦労をするだろう。それでも二人がお互いを思い合っているということがわかっているからこそ、乗り越えられそうな気がした。

 ちなみに、今後も研究には協力してくれるとの言葉を貰っているのでその点に置いても頼もしい。


「でも研究結果として考えると、あんまり芳しくないんですかねー?

 だって結局は番の魅力には抗えなかったってわけですし」


 サーシャの言うとおり、シスターシャルロッテは番の魅力に最後まで抗ったわけではない、ということになる。それでも、抗うことができる、というだけでも十分な成果と言えた。少なくとも今までの通説では番の魅力には何人たりとも抗うことは出来ない、と言われていたのだから。

 それに、今回の件でヒントをえることもできた。

 シスターシャルロッテの日課である祈りや瞑想のことだ。


「あ、そうです。それで肝心なことを聞くのを忘れていました。

 確かサーシャさんは騎士の家系の方と聞いていたのですが」


「えぇ、そうですー。

 結構古くから代々騎士をやらせてもらってますよー」


「ええとそれで…ちょっと変な質問なのですが。

 騎士の方って瞑想や祈りなどをすることってありますか?」


 少し変な質問かもしれない、と思いながら聞いてみる。

 ただ、今までの資料の統計とシスターシャルロッテの話を総合すると見えてくるものがあった。

 まだリルム自身も半信半疑だ。いや、疑いが8割と言っても良いかもしれない。それでも一縷の望みをかけたいと思ったのだ。

 もしかしたら、瞑想や祈りというものが番の魅力に対抗できる手段になり得るのではないかと。

 そう思っての質問だったのだが、サーシャは少し不思議そうな顔をしつつも事も無げに答えてくれた。


「瞑想ですか? えぇ、勿論やりますよー」


「ほ、ほんとですか!?」


「えぇ。騎士は命を奪う職業ですからねー。慣れるまではどうしても精神病みがちなんです。繊細な方は野生動物の駆除であってもしんどそうですもの。

 だから、そういうのの対策として瞑想を取り入れてますよー。

 瞑想って怪しげに聞こえますけど研究者もいますし、騎士たちで効果は保証済みなんですー」


「えっそうだったんですか?」


 リルムとしては藁にもすがる思いで聞いたのだが、思った以上の反応が得られた。

 まさか瞑想が研究にまで発展しているとは思ってもいなかったのだ。しかも、研究をしている人までいるというのだから驚きだ。


「えぇ、多分この研究棟のどこかにいるんじゃないですかね、研究してる方。

 騎士団では研究者の方に基本のやり方を教えて貰いますから。

 でも、瞑想がどうかしたんですかー?」


「ええと…まだ仮説の段階なのだけれど」


 まだ確証は何一つない。ただ、シスターシャルロッテの言葉からヒントを得ただけだ。そういうことも交えながら、リルムはサーシャに説明をする。

 シスターシャルロッテの話から、瞑想や祈りといったものが番の魅力に抗う効果がありそうだ、という仮説を得た。その仮説をもって今までの資料の統計をもう一度見直してみる。

 そうすると、番をフッた人達の中には聖職者や教会が運営する孤児院出身の者がいた。彼らは恐らく瞑想や祈りをする習慣があったはずだ。では、他の人達はどうだったのだろうと考えたときに、騎士という職業もいたことを思い出したのだ。

 そして、たまたまサーシャは騎士の家系に生まれている。確証はないものの聞いてみたところ、思った以上に騎士は瞑想に慣れ親しんでいたというわけだ。

 そんな説明をしてみたところ、サーシャは目を輝かせた。


「え? それって、もしかしたら凄い発見なんじゃないですか?

 番の魅力に対抗できるって」


「でも…まだ確証は一つも無いわ。

 だからこそ、瞑想に詳しい方に話を聞きたいと思っていたのだけれど。

 サーシャの話からすると意外と身近にいるかもしれないですね」


「えぇ。たぶん研究棟にいると思います」


 爆発などの危険を伴う研究であれば場所を移されるそうだが、瞑想であれば危険性などもなさそうだ。恐らくこの研究棟のどこかにいるはずだ。


「そうと決まれば善は急げですよ。

 アポとりましょうアポ!」


「いえ、あの…。アポをとるにしてもちゃんと順序立てて説明できるようにしておかないと…」


 シスターシャルロッテと話していて思ったが、リルムはどうも初対面の人に説明をするのが不得意だと自分で感じていた。きちんと質問事項や話すことの論点をまとめておかないと、咄嗟の時に言葉が出てこない。


「リルムちゃんは慎重ですねー。

 ま、私は助手なのでちゃんとサポートしますとも。どうせなら軽いレポートレベルになるまでまとめますか?

 あちらとしてもわかりやすい数字があった方がいいでしょうし」


「ありがとうございます。お手数をおかけしてすみません…」


 そんな会話をすると、二人はすぐさま作業にとりかかる。研究をはじめて暫く経ったが、これはやっと見つけた手がかりだった。今までの雲を掴むような、見通しがあるかもわからない資料集めの日々に比べれば同じ研究でもやる気が違う。

 少なくとも仮説は立てられたのだ。

 その仮説があっていればそのまま進めば良い。

 間違っていたとしても、別の可能性を探れば良いのだ。間違っていた場合は、瞑想や祈りは何の効果も無いという確証が持てる。どちらにせよ、指標を得られたというのは大きい。


「あ、一つ忘れてましたー。

 このことってラスティンくんは知ってますか?」


「瞑想や祈りが、という仮説はラスティン様にも伝えています。

 ただ、やはりそういったものは獣人であるラスティン様には馴染みがなく、かなり否定的でしたね」


「ふむー。じゃあちょっと難しいかなぁ」


「何がですか?」


「えーと、私たちはまだ研究といっても初歩の初歩段階だから全然お金かかってないですけど、普通研究って言うのはお金かかるんですよね。

 で、瞑想の研究も多分例外ではないと思うんですよ」


「あ、なるほど。

 相談を持ちかけた場合、協力あるいは金銭を要求される場合もある、と」


「そうなっちゃいますねー。なので、ラスティンくんには話を通しておかないと、と思いまして」


「わかりました。帰宅後そのこともお話してみますね」


 後日リルム達は研究棟の事務員を通して、正式に瞑想の研究をしている人に協力を願い出た。

閲覧ありがとうございます。


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