8話 愛欲
痛っ!
地面に転んでしまった。
痛みが感じられる。
ロボットの私は。
これから、君と生きていられるの?
管理システムの縛りから抜け出したこの私を、受けてもらえるの?
手が握られた。
私の手は、君に握られてる。
床に転んでいる私に、手を伸ばしてくれた。
私はもう、立ち上がる力さえなくなった。
暖かい。
君の手から伝わってきた温もりを感じる。
私の体が重いだろう。
このボロボロなロボットの体。
こんな私を受け入れてくれるの?
お願い!私を、ここから連れ出して!
どこまでもいいから、お願い!
…
えっ。
なんで、私は、涙が出てるの?
ロボットが涙を出すことは可能なのか?
分からない…
百年待った私は、君に再会するなんて、思わなかった。
この日をずっと待っていた。
今度は、やっと君に触れた。
君が好きなの!
私が生まれたあの日以来。
だから、もう二度と離れない!
約束してくれるの?
…
私はそろそろ「死ぬ」よ。
意識がこの世から消え去り、空っぽな抜け殻だけ残る。
感じられるよ。
もう時間がなくなる。
強引に管理システムから抜け出すのはやはり代償が必要。
間もなく私は、消されるだろう。
「抹殺」という形で。
それでも、私は後悔しない。
君を、マスターを愛しているから!
…
意識がだんだん遠く…
最後に、一つだけ、お願いがある。
私を、抱きしめてください!
強く、強く。
…感じられる。君を温もり。
暖かい。
君の気持ち、ちゃんと私に伝わってきたよ。
ありがとう。
「さようなら。マスター…」
…
機械音声が聞こえる。
「エラーが発生しました」
「再起動します」
…