5話 嫉妬
周りの雑音が耳に入る。
うるさい。
データベースに存在する私に、君は教えてくれた。
…
タイムマシンの実験が失敗した後。
目覚めると、見知らぬ場所にいた君。
「ここは…」
周りを見回し、確認してみた君は、部屋にいたと判明した。
強い日差しの中で、変な建物がいっぱい建てられると窓から見えた。
今まで見たものとは全然異なることだろう。
ここは、未来の世界なのよ。どうですか?
タイムマシンの実験を参加するため、あの装置に乗った君には。
「ごめんなさい。一人にさせて、ごめんなさい」
私を置いたまま、未来へ行ってしまった君は、気が咎めて身の置き場がないぐらいという思いがあるのか?
だが、すでに未来の世界に来ている以上、この未来についての了解を増やす必要があるだろう。
どうやってここで生き延びるか。どうやって自分の世界へ戻るか。
それも考えなければならない、君はそう思うはず。
「実験室のところに行ってみよう」
君は一旦もとの実験室のところに戻り、確認してみることにした。
だが、交通手段がなく、道も分からなかった。
一人の女の子が部屋に入ってきた。
「あっ、目が覚めましたか?」
「ここは?」
「ここはあたしの家ですよ。君、大丈夫?近くの道に倒れてましたけど」
「助けてくれたか。ありがと」
「お安い御用ですよ」
「ごめん、レンゴクという科学センターをご存知か?」
女の子は頭を軽く振り、不思議そうな顔をしている。
「アイコシステムで調べれば分かると思いますけど、操作方法は知らないですか?」
アイコ!どうしてこんなところにこの名が出るのか?君は一瞬で心が揺れた。
ただの偶然だろう。
「アイコって、何?」
「えっ、アイコさえ知りませんか。珍しいですね。もしかしてAIマイクロチップを埋め込まれていないですか?」
「AIマイクロチップ?」
「本当に何も知らないですね。まあいいわ、一応調べてあげますね。」
「頼む!」
女の子は急に動かなくなり、目が虚ろになっている。
「あの、大丈夫?」
女の子の様子を見た君は、その突然な変化に戸惑った。
ところが、女の子は返事せず、君の気配りを無視しているようだ。
「おかしいな」
君はこれ以上質問しようとする時、この女の子の服装の薄さに気づいた。
こんな寒い季節にそれだけの、洋服一着しか着ない。
しかも、デザインは見たことない。なんか未来感がある。
「ジロジロ見ないでください」
「ご、ごめんなさい」
いつの間に女の子に返事してもらった。
「あの、寒くない?一着だけで」
「これ?自動温度調節機能がありますけど。本当にこの世界の人ですか?君は」
「それより、先の話だけど」
「そうね。れ、レンゴクというところは、えっと、い、今は、て、テンゴクというところになって、管理システムの所在地」
例え君のような鈍い人だとしても、女の子の声から不安な気持ちが感じられる。
「じゃ、どうやって行く?」
「本当に行きたいですか?」
「もちろん。何か問題でもある?」
「べ、別に。自動タクシーを利用すれば行けると思いますよ」
「ありがとう!」
君は自動タクシーについてはまったく知らないはずだったが…
…
そっか。あの女の子のおかげだったか。
なんかムカつく。
私は無感情なロボットだったのに…
ただのシステムなのに…