アイドル勇者
ミス・アルディスに無限収納箱と誘惑・魅了耐性を交換してもらい、 広場に来た。
一時的とは言え、無限収納箱を使う事が出来ないので事前に、端末と非常食を出しておいた。
広場には簡単な舞台が出来上がっておりそこに、この世界では珍しい黒髪の10代の少女が立っていた。
「みんな〜今日は来てくれてありがとう〜。
ラストナンバー行っくよ!!!」
彼女が勇者だよな?異世界来てまで何してるんだよ、この娘は・・・。
「オオオオー!」
それにしても凄い熱気だな。
元の世界でアイドルに興味が無かったからな。
ライブ会場ってこんな感じなのかな?
そんな事を考えながら端末を弄りながら暫く彼女の歌を聴いているとある異変が起きた。
俺の体では無く、端末の方に。
電池が凄い勢いで減っている。
具体的には10秒に1%減っている。
歌自体に精神に何かしらの悪影響があるのだろう。
90%あったのが60%程まで減った所で、歌は終わった。
「勇者の姿絵の販売と握手会兼サイン会を始めます。姿絵の販売はこちらに、握手会の方はこちらに並んでください。」と鎧姿の男が言った。
物販!?サイン会?
・・・もうツッコむのはやめよう。キリがない。
俺は目的の為に握手会の方へ並んだ。
どうやら最後尾らしい。
1時間くらい待って順番が来た。
「あ、それ最新のタブレットじゃん!おじさんも異世界の人?」
おじさんか・・・まだ、20代なんだがな。
このくらいの年頃の子にはそう見えるのだろう。
「ああ、そうだ。先日こちらに来たが、俺は勇者ではないんでな。異世界から来た勇者がいるって聞いて見に来ただけだ。因みにタブレットは貰い物だ。」
万が一、相手が嘘を見抜く術を持っていると困るので、当たり障りのない事だけを言った。
「あ、握手ね。」
と言って彼女は腕を伸ばして来たのでそれに応じる。
よし、第一条件はクリアした。
問題は第2条件だ。
こればかりは賭けになる。
「同郷だし、特別にチェキしていいよ。」
ありがたく、チェキさせて貰おう。
「では、お言葉に甘えて・・・」
ここだけ切り取ると俺がHENTAIみたいになってしまうが、この端末は撮った被写体のステータスを確認できる。
広場から近いカフェに行きそこで彼女のスキルを確認した。
確かに、勇者向きのスキルは持っていたが、それ以前に高レベルの裁縫、道具製作、歌唱スキル、絵描きスキル等を持っていた。
本当にアイドル向きだな。
陽は傾きはじめており、広場にあった特設会場の片付けが終わりかけていた。
「良かった、まだここに居て。おじさん、私の護衛をやらない?」
「勇者の護衛ね。俺は冒険者でも傭兵でもないんだけどな。それ以前に強くないぞ?」
「どうしてもダメ?」
「駄目だ。」
「それなら、私のスキルでおじさんをおとすまで!」
やっぱりそうくるか。
さぁ、一か八かの勝負だ。
暫く沈黙が続いていたが、コトっとビー玉みたいな物が落ちた。
どうやら賭けには勝ったようだ。