責任者登場
救護室からエントランスまでの道中、アニキとモヒカンにこの冒険者ギルドの事を聞いてみた。
モヒカンは聖人でかなりの高ランクの冒険者、アニキの方はオトンという名前で元Sランクで後進を育てる為にココの職員になり今ではナンバー2だという。
モヒカンの見た目のせいで聖人には見えない。
モヒカンを見ただけで職業を答えろと言ったら、チンピラ等の類で回答するだろ。
元Sランクのアニキがナンバー2ならココのボスはさぞ凄い冒険者なのだろう。
と思ったのだが・・・
「うちのボスは冒険者ではなくてな・・・。創設者の子供だ。あ、名前がそういえば、まだだったな。俺はオトン。宜しくな、ヤヤ。」
とアニキ改めミスター・オトン。
ここでエントランスに到着したので俺たち3人は近くにある椅子に座り会話を続けた。
「こちらこそ宜しくお願いします。ミスター・オトン。ところで先程から気になっていたのですが、どうしてココの冒険者ギルドに出入りする者がいないのでしょうか?」
営業時間の筈だが、彼ら以外の職員と冒険者がいないのだ。
「それはな・・・」
「私から説明しましょう。」
職員以外立ち入り禁止と書かれた扉から小さな女の子が出てきた。
「グス・・」
え?女の子が涙目になった。
「グス・・・アルディスはころもじゃないもん・・・おとななんだよ?」
いや、喋り方とか子供だろ?
「うわーん。あの黒髪のおじさんがいじめるよ。オトンおじさん。」
「初対面の人の心を読むもんじゃありませんよ?ボス。」
あ、この女の子が責任者なのか。
ミスター・オトンが女の子を慰めているとモヒカンが耳打ちでこう言った。
「すいやせんね、ヤヤさん。見た目ではわからないんですが、うちのボスはハーフエルフでして実年齢は・・・」
ドーン!
物凄い音がしたと思ったら隣にいたモヒカンが壁にめり込んでいる。
「グス・・・れでぃーのとしはシークレットなんだよ?ぜったいそんなはなしはしたらダメなんだよ?」
ハイソウデスヨネ。
うん、今のはモヒカンが悪い。
モヒカンが壁にドーンされてから数分後、女の子が落ち着きを取り戻したので話の続きする。
「それで、職員と冒険者がそこにいる2人だけなんですか?ミス・アルディス。」
「モヒカン頭の聖人が何故、壁と同化しているのかは知りませんが、他の者は皆、ある人物の調査をしていたら帰ってこなくなってしまったのです。」
今はモヒカンの事は忘れよう。
ある人物ね、何か嫌な予感がする。
まさかな・・・
「勇者です。」
あ、やっぱりか。
「帰ってこれたのはオトンおじ様と、あのモヒカンだけでした。」
帰ってこれた理由は何なのだろうか?
「おそらくですが、帰ってこれたのは魅了耐性と誘惑耐性だと思います。」
事前に準備をしてない俺が悪いのだが・・・
俺はどうやって勇者に接近すればいいのだろうか?