ミッションスタート
都内某所 探偵事務所〈億屋〉
交渉の結果、前払いはスキル2つと15万円となった。
何にせよこの2つのスキルは生命線だ。
出来るなら死なないスキルが欲しいのだか、それは、それで困った事になる様だった。
依頼主に聞いた所、常時死ななくなる。
つまり寿命でも死ぬ事が出来ないそうだ。
正に不死である。
他のスキルでも常時発動型は同様の事が言えるそうだ。
これから行く異世界について詳しい説明をしてもらった。
要約すると
・中世のヨーロッパ風
・魔法有り、亜人在りのファンタジー世界
・魔物、魔王在り、勇者召喚あり、転生者あり
・レベルやパラメータよりもスキルレベルがモノを言う。
↑
このスキルに関するルールはかなり重要そうだ。
「スキルの内容重視なら能力増強よりも・・・この2つにするか。」
と決定ボタンを押した。
まず1つ目のスキルを試してみた。
このスキルは直ぐに使えるようになっていた。
もう1つのスキルは、この世界では使えないのでブッツケ本番となる。
残りの時間は4日分の食糧と護身用の武器等の準備。
それと路銀を稼ぐ為の物を仕入れる。
そんなに荷物を持って大丈夫かって?
大丈夫だから買い込むのさ。
あっという間に1週間が過ぎ、事務所の電話が鳴り響いた。
「時間です。まず、私の領域に来て頂きます。」
と依頼主が告げると周囲の景色がどこかの庭に変わっていた。
机と椅子が置かれていたのでティータイムにちょうど良い空間があるのはいいなって思っていたら
「直接会うのは初めてですよね?初めまして、私の名前は、マリア・ケイオス・クロノ。マリーとお呼び下さい。〈億屋〉様。」
いつの間にか少女が佇んでいた。
女神様ならロ・・・依頼主に失礼なのでやめておこう。
「初めまして。ミス・マリー。〈億屋〉の萬屋家達と申します。屋号の億屋でも姓でも名でもお好きにお呼び下さい。」
「はい。それではヤヤさん。依頼の確認です。4日間の勇者の素行調査。可能なら排除も。危ないと判断したら直ぐに逃げて下さい。」
「概ねその内容で依頼を遂行する予定です。ただ、排除は今の所考えておりません。」
(屋家ね。偽名として使えそうだな。)
と考えていると
「ところで・・・」
と少女が話しかけてきた。
「もっと他に強力なスキルありましたよね?
本当に不老とか不死じゃなくて良いんですか?」
「ええ。不老とか不死は帰ってきた時の事を考えるとね・・・。」
「差し支えがないのなら理由が聞きたいのですが・・・。」
そう、俺が選んだのは・・・
・無限収納箱(LV.10MAX)
容量や制限なしのアイテムボックス。
ボックス内の時間は停止しております。
気分は青いロボット。
・S-KILL (LV.1)
敵対者からスキルを切除する。
自分は対象外です。
諦めて下さい。
(説明文は誰が考えたんだろうか?変なセンスのユーモアが書かれている。レベルは俺の知識に依存するらしい。)
荷物を持たないってのは身軽だし、
その上収納が無限なら変装道具や時間停止しているとから出来たての食糧だって持ち放題。
しかも直ぐに取り出せる。
2つ目のスキルは相手が勇者って事は何かしらの特殊なスキルを持っている筈。だからこそ無力化する事に特化したものを選んだ。
まぁ、何を持って敵対者なのかは不安だけれども・・・
「成る程。確かに私の世界なら、その2つが最善かもしれませんね。
帰還は4日後。私がここに転移しますのでご心配なく。その時に追加の報酬をお支払い致します。こちらは少ないですが、こちらを。中身は私の世界のお金です。」
俺は女神様からお金入りの袋を受け取って
「ミス・マリー。転送をお願い致します。では、また後で。」
と言った。
「行ってらっしゃい。ヤヤさん。」
見送る少女は笑顔で手を振っていた。