逆利用
何度か先程と同じように対処してミスター・オトンとの間合いを詰めた。
これで拳が入る。
「ステゴロで勝負ってのは悪くねーがお前さんの拳は効かないぞ?」
実戦で経験を積んだ拳と通信教育で積んだ拳ではそうだろうな。
ミスター・オトンは俺に拳や脚で攻撃をしてきた。
躱したが、その後何かに殴られたり蹴られたりする衝撃に襲われた。
やっぱり至近距離でもできるのか。
一旦50メートルくらい距離をとり息を整えた。
「何度も言うが決め手が無きゃ俺は倒せんぞ?」
そう言いつつ彼はシャドーボクシングを始めた。
俺の腕力等では彼に攻撃が通らない。だが・・・
できるか?いや、やるしかない。
「それはこうするんですよ!」
俺は距離を詰め彼を掴み先程までいた場所に投げた。
「ぐっ・・・これは・・・」
そう、ミスター・オトン自身の攻撃。
「触れられたのに何でスキルが解除されない!」
ある仮説を立てた上で彼自身の攻撃で倒す手段を選んだ。
彼は自身の攻撃を無防備で受けて立てなくなっている。
「俺に悪意や害意を持って攻撃してきましたか?」
この言葉に彼はフッとだけ笑い眼を閉じた。
俺のS-KILLのルールは対象に触れる事、敵対者が俺に明確な敵意、害意、悪意の類を持っている事。
今回ミスターは姪やギルドの為に俺と敵対しており2つ目のルールに当てはまらなかった。
「勝者ヤヤの旦那。今治療するっスね。範囲回復!」
モヒカンが俺の勝利を宣言をし回復魔法を使い始めた。
「スゲー!兄貴を倒した!よし、アイツをうちに勧誘するぞー!」
辞めてくれ。その為に戦ったんだ。
「やめなさい、貴方達!オトンおじ様は負けたのです。」
ミス・アルディスの一言で会場は静かになった。
俺の身体が光り始めた。
「・・・行ってしまうのですね?」
「ええ。」
「そうですか・・・。また会えるといいですね。」
「ええ。」
もう彼女達と会うことはないだろう。
俺の身体は光に包まれて謎の浮遊感に襲われた。
依頼主のバラ庭園に戻ると知らない人物がいた。
「探偵ものにラブロマンスは要らないですもんね?初めまして。いつもあなたの隣に這い寄る女神☆マクロ・ミナセです♡」
物凄く美形な顔立ちなのに残念なイケメン女性だった。