シャドーボクシング
帰還まで後1時間、俺は倒れずにやり過ごす事を強いられている。
「来ねえのか?そんじゃこちらから行かせてもらうぜ。」
ミスター・オトンがボクシングみたいな構えをとり右で拳を突き出した。
ぐっ・・・。
拳が届く間合いには居ないのに直撃した。
「今のを耐えられるとはな。久しぶりに本気でやれそうだ。」
今ので様子見かよ・・・。
「次はこうだ。」
ミスター・オトンはジャブ2回、ハイキック1回を繰り出した。
今度はその位置からミスター・オトンに近づき間合いを詰める。
しかし、軽く2回ほど殴られ、その後蹴られたような感覚に襲われた。
相変わらず直接触れる距離には居ない。
魔法か?それともその系統のスキルなのか?
どちらにしても技の種が分からなければ潰しようが無い。
「さて、次で決めるか。」
ミスター・オトンはそういうと先程より速くジャブをし始め、その後思いっきり拳を突き出し、アッパーを行なった。
ん?ミスター・オトンの視線が俺に向き続けている。
まさかだが・・・試してみる価値はあるな。
ただし、ラッシュとストレートに耐えなくてはならないが。
先程と同じでミスター・オトンとの間合いを詰める。
顔を殴られた感覚が始まった瞬間、俺は腕で顔をガードした。
思った通り顔を殴られる感覚ではなく、腕に殴られた感覚になっていた。
ラッシュは止んだ。次はストレートか。
ラッシュは10秒程だった。その後、2、3秒の後に来る。
よし、今だ!
俺はしゃがんだ。頭の上を何かが掠めた。
その後、直ぐに立ち上がり体を後ろに晒した。
「ほぉ〜。よく躱したな。」
「ネタをばらして大丈夫ですか?」
「構わねーよ。このギルド所属はみんな知ってる事だ。」
「まず、俺に触れられたくないという事はスキルですね?」
ミスター・オトンは軽く頷いた。
「眼を使う事で発動するスキル。内容は時間と空間の操作といたところでしょうか?予め、シャドウボクシングの様に何もないところに打ち込み任意の場所に設置し相手が来た時に解除。おそらく本来は時間差で当たるのと同時にミスター・オトン自身も打ち込みに来る技では?」
俺がそう言い終えるとミスター・オトンは豪快に笑いながらこう言った。
「ガハハハ!初見で見破れるとはな。姪の婿云々関係なしにうちに欲しい人材だ。だが、どうやって俺にダメージを与えるつもりだ?」
確かにそうだな。