4日目-交渉
ギルドの闘技場
「オトンの兄貴勝たねーで下さい!」
「クソヤロー!勝てよ!」
どうしてこうなったのだろうか。
俺は目を瞑り起こったことを思い返しす。
3時間前
俺は荒くれどもから解放されてギルドに案内された。
「あの・・・うちの人達がごめんなさい・・・。」
ミス・アルディスが申し訳なさそうに謝った。
「いいえ、お気になさらず。」
一応使用者責任はあるものの悪いのは奴らだ。
「そんで、アルディス。どうすんだ?」
とミスター・オトン。
「彼らの処分は先程おじ様に伝えた通りにして下さい。」
「イヤ、そっちじゃなくてな・・・」
「そっちじゃないってじゃあ、何のことですか?」
そうミス・アルディスに返されるとミスター・オトンはモヒカンに肘鉄をくらわし小声で何かを言った。(おそらくだが、お前から言えみたいな感じだろう。)
モヒカンは突然立ち上がり「誰かが怪我をしたみたいなんで助けにいくっス」と言いどこかに行ってしまった。
・・・逃げたな。
ミスター・オトンは溜息をつきながら
「ヤヤさん、俺と決闘してくんないか?」
イヤです。
「だよな。アルディス、自分でどうにかしなさい。」
「・・・私、ヤヤさんの事が・・・」
女性から好意を持たれるのは悪い気はしない。
だが、俺はあと数時間程で自分の世界に帰還する。
彼女の思いに応えてもな・・・。
「それ以上は駄目です。私はあと数時間程でこの世界から自分の世界に帰ります。」
「おじ様に依頼です。何としてもヤヤさんを引き止めて下さい。」
「ってな訳だ。」
どんな理屈だ・・・。
ミスター・オトンが苦笑いをしながら続けて
「あとどのくらいで戻るんだ?」
とミス・アルディスに聞こえないくらいの小声で言った。
「帰還予定が日没くらいなのであと4、5時間程ですかね。」
と小声でミスター・オトンに返した。
「取り敢えず、飯にでもするか。飯はまだだろう?ヨハンナ!いつものを頼む。」
「はいよ、アルディスちゃん、こっちに来て手伝っておくれ。」
食堂のおばちゃんが出てきてミス・アルディスを手招きして厨房の方へと消えていった。
「内容は、いたって簡単だ。俺とあんたで殴り合って決める。アルディスの両親が決めた事で納得のいかない事があるなら殴り合って決めろ!って感じだ。」
解決方法が脳筋すぎる。
「まぁ、今は食事をゆっくりとって時間はギリギリまで稼ぐ。時間を稼げても残り1時間は俺と殴り合いだろうな。」
「ミス・アルディスが自ら戦うのは?」
それなら勝てそうな気がする。
「やめた方がいいな。ヤヤさんに女の子を殴れるとは思わないし、あの娘にはあんたのスキルが発動しない。」
確かに女の子を殴るのは気がひけるな・・・。
スキルの方は悪意ではなく好意を持たれてるしな。
「1番の問題はデコピン程度で俺が壁にめり込むんだぜ?物理的は確実に無理だ。」
ミスター・オトンが壁にめり込んだのはデコピンだったのか・・・。まさに女子力(物理)。
じゃあ、モヒカンは?そう考えていると察したのかミスター・オトンが
「アイツは剣術が出来るが本職は後衛の聖者だ。それにあんたとは一度闘って負けている。それなのにやらせると思うか?」
思わないな。
さてどうしたものか。
初日の自己紹介でミスター・オトンは元Sランクと言っていた。そんな人物を相手にはしたくない。(彼をデコピン程度で吹き飛ばすミス・アルディスの方がもっと相手にはしたくないが。)
なので、ミスター・オトンはスキルなしでも相当強いはずだ。
「ミスター・オトン、八百長できますか?」
「無理だな。あの娘が本気なら心を読まれる。」
それも忘れていた。