翻訳
「ほぉ〜スキルの巻物が使えんのは意外じゃのう。稀にしかおらんから珍しい物をみれた。少し待っとれ。」
そう言ってカウンターの下から本を取り出した。
「昔、金の無かった転移者から金の代わりに受け取っての。他の世界の言葉で書かれておって読めんがな・・・紙の質がよくて紙束としては価値の高い代物じゃよ。フォフォフォ。」
フォフォフォじゃないだろ。読めない本を渡されてるんだぞ?このご老体、人が良すぎるのでは?
「その者が言うには、異世界の者かつスキルの巻物が使えずに、この本を読める者が現れた時、莫大な財を成すと言われての。」
なんつー条件だ。
大体の異世界人は古代語まで読める様に神々が設定して送り出す。この時点で難しい。
確かに俺は翻訳系統のスキルを持っていない。
「残念ですが、私にそのスキルが無いので読む事は出来ません。」
スキルが無いのだから読めるはずがない。
「そんな事はスキルを見た時に解っとる。じゃが、なぜ言葉が通じとる?試しに読んでみてくれ。」
俺は店主に本を渡された。
本を開くと、こう書かれていた。
「これは古の物語。1人の少女が女神になるまでの物語である。※この本は神の力を持っていないと読めません。」
読めてしまったので音読をした。
なぜ読めたかって?恐らくは翻訳アプリの力だろう。
勿論確証はなかったが、店の看板を読めたのでそんな気がしただけだ。
著者名やタイトルはなく、ありふれた神話の様だ。
「読める者がついに・・・。」
店主は喜んでいた。
「残念ですが、財を成す様なものでは無いですね。」
「まだわからんよ。儂には読めんし、お主にその本を譲ろう。もう役目を終えたのでな。」
「ありがとうございます。それでは行きましょうか。ミス・アルディス。」
「そうですね。おじさま、御機嫌よう。」
こうして俺たちは店を出た。
(いらない本も押し付けられた。)
店を出たらもう日が暮れ始めていた。
宿に帰ろうかと考えていると・・・
「あの・・・もし宜しければ夕食を食べに行きませんか?」
「美味しいお店があるんですか?」
「ええ。」
まだ、ミス・アルディスとの3日目は終わらない。
探偵達が店を出て暫くした後
「いらっしゃいませ。なんじゃお主らか。冒険者のはそっちの方じゃよ。」
「いや、違うんだ。索敵と鑑定のスキルをあるだけ用意してくれ。できるなら100人分頼みたい。」
「あるにはあるが・・・そんな数を何に使うんじゃ?索敵と鑑定は魔法並みに値が張るぞ?本当に良いのか?」
「構わない。それとうちのギルドマスターとオジキと馬鹿神官には黙っといてくれないか。その分は色を乗せておく。」
「悪い事には使うなよ。念を押したからな。儂は知らんぞ。(本当にあの本の効果が出たわい。)」
こうして老人は1日で財を成したそうだ。