異世界の町
ミス・アルディスに連れられて来たのは雑貨屋だった。
「いらっしゃい、アルディスちゃん。おや、今日はデートかい?」
店の奥から出て来たのは膨よかなマダムであった。
「ち、違いますよ。」
「アンタ、アルディスちゃんが男を連れて来たよ!」
「何だと!?」
正直に言う。こっちが何だと!?と言いたい。
奥から旦那と思しき人物が出てきた。
誤解を解くために事情を説明した。
「つまり、そっちの兄ちゃんは冒険者で、互いの依頼を消化してる訳かい。」
そういう事です。決してミス・アルディスの男では無い。
ミス・アルディスは休暇を一緒に楽しむ相手、俺は観光案内を依頼としている。
誤解を解くのに少し時間がかかってしまった。
「兄ちゃん、コレを買ってきな。まけとくよ。」
それはイヤリングだった。
そうだな彼女への礼も兼ねて贈るとするか。
雑貨屋を出て、ふと向かいの建物を見ると巻物の形をした看板があった。
文字は読めないが翻訳アプリを起動しているので直接脳内に「スキル屋」と浮かんだ。(未だに馴れないし、物凄く謎なアプリだと思う。)
「へぇ〜、こんなお店もあるんですね。」
「えぇ、ココはスキルを販売しているんです。
一般的に誰でも扱える様な技能系のものですけどね。興味ありますか?」
「ええ、あります。」
「じゃあ、入りましょうか。」
店の中に入ると御老体が椅子に座っていた。
「いらっしゃい。おぉ、アルディスか。うん?そちらの方はコレかい?」
何故、この町の人達は、コレか?と聞いて小指を立てるのだろうか?
この町の流行だろうか?
「ハイ。」
否定してくださいよ・・・。
「違いますから。彼女に観光案内を頼んだだけですから。」と即座に対応する。
「そうか、そうか。」
何納得してるんだ?この店主は・・・。
「ふむ、ちょっと失礼を・・・。」
ん?何をしているんだ?
店主は俺に顔を近づけて視線を合わせた。
「鑑定の眼です。いわゆる魔眼と言うものです。」
「お主、便利なものと、難儀な固有スキルを持っておるな。まぁ、お主自身がその特性を理解しておればよい。」
「異世界人じゃろ?お主。」
表情を崩さずに「何故、そう思いで?」
と聞き返した。すると・・・
「理由は2つ、固有スキルを複数所持している。その固有スキルにレベルがある。他の世界では知らんがこの世界ではありえんのでな。」
成る程、そういった些細な事で
俺が異世界から来たのがわかってしまうのか。
気をつけなくては。
店内を少し見ていると技能系よりも割高だが、魔法も
スキルとして販売していた。
「基本の魔法スキルを売ってもらえますか?」
「合わせて、銀貨5枚じゃが手持ちは大丈夫か?」
お金なら大丈夫だ。依頼主から頂いた袋の中に金貨が2枚と銀貨6枚が入っていた。
因みに金貨1枚で1週間程は余裕を持って暮らせるとの事。
「お買い上げありがとう。読めば使える様になる。使い捨てじゃからスキルを覚えたい者が読むんじゃぞ。早速使って覚えてみるとよい。」
店主に促され早速使ってみる事にした。
手始めに火属性魔法スキルの巻物を読んでみた。
「あれ?何も起きませんね?」
「本来なら光が出てそれが収束する筈なんじゃが・・・?」
理由は不明だが、俺には使えない様だった。