第5話「新たに異世界」
俺の名は多田野貞道。歳は18だ。
剣道で全国大会を制覇した帰りにトラックと衝突。気づけば森の中に立ち尽くしていた。
「キャー」
女性の悲鳴がどこからか聞こえてくる。
状況はわからないが、助けを求める女性の声があるなら、助けるのが剣士の務め。
俺は声のする方向へ向かって走り出した。
助けを求める声が段々近づいて来る。
木々の間を抜けた先に人影のような物が見えた。俺は一足飛びで木々の間を抜けると、そこには粗暴そうな恰好の男達が一人の少女を蹂躙していた。
いやいやいやいや、えっ?
「た、たすけてください」
目に涙を浮かべ、必死に助けをこう少女。
衣類は全て剥がされたのか、服らしきものの布の残骸が辺りに散らばっている。
「おいおい、楽しんでる最中だってのに、なんだおめぇさんは?」
ゲラゲラと笑いながら、ゲスな笑みを浮かべる男達。
その中心では、少女がレ●プされていた。
「おかしいだろ!」
チート能力を発動し、即座に男どもを倒した。全員白目を向け口から泡を吹いているが、多分生きているだろう。
「あ、あの。助けていただきありがとうございます」
涙ながらにお礼を言ってくる少女に俺の上着を着せ。そして叫ぶ。
「おい女神! っつうかダ女神出てこいやあああああああ」
急に俺が叫び出したことに少女がビクっとしてしまうのは申し訳ないが、叫ばずにいられなかった。
「さっさと出て来いこのダ女神!」
「誰がダ女神よ!」
両手を腰にやって頬を膨らませて怒っていますよアピールをするダ女神。
俺はソイツの頭に思い切り竹刀で面を打つ。
「いっっったいいいい、何するのよ!」
「『何するのよ』じゃねぇよこのダ女神! お前はバカか? バカなのか?」
「誰がバカよ!」
竹刀で叩かれた場所を抑え、涙目になっているダ女神が必死に反論を試みてくる。
「お前だよお前、なんでレ●プなんだよ、おかしいだろ?」
「バカね。レ●プ現場から助けたのよ、主人公に惚れる完璧な展開よ」
ドヤ顔で語るダ女神に、もう一発面を食らわせてやった。
「なろうでヒロインをレ●プとか禁忌の一手だわ! 下手したら感想欄に批判大量で以後そのアカウントで何を書いてもアンチが生まれるレベルだぞ! 何を参考にしたらそんな発想にたどり着くんだよ!」
「そういうフレーズの人気少女漫画を参考にしたのよ! 悪い!?」
あぁ、うん。そのフレーズだったか。
いや、でもそっちもギリギリで。だめだ最後にやられてるわ。
「基本ヒロインは処女で、主人公の為に大切なものをあげるってのが良いの! なろう以外でもそれは基本だから!」
「うっわ、処女厨かよ。めんどくさ、これだから童貞は」
どどどど、童貞ちゃうわ。道貞や!
確かにそう読めるけど違うし。今までさんざんそのネタで弄られてきたけど。
「ど、童貞ちげぇし!」
「童貞じゃない! いつも魔法少女みらくるくるりんちゃんの薄い本を読んでシコってる童貞じゃない!」
えっ。
ちょっと待って、何でそれ知ってるの?
「アンタをずっと見て来たって言ったでしょ」
ずっとって、そこまでずっと見てたわけ?
もしかしてナニしてる時とかも全部見てたわけ?
「うあああああああああああああああああああああああああああああああ」
俺は叫んだ。
膝を落とし。頭を抱え亀のように自分の体を丸め、甲羅に隠れるが如く小さくなりながら叫んだ。
女神を名乗る悪魔の声が聞こえないように。
『別に脳内に直接語りかけれるのよ?」
うあああああああああああああああああああああああああああ。
最悪だ。俺に逃げ道が無い。
っていうかちょっと待って。というと、この女神の髪型って、魔法少女くるるんちゃん?
「なんでくるるんちゃんの髪型にしてるんだよ!?」
「だからアンタの趣味に合わせたって言ってるでしょ」
あぁ、うん。
確かに俺の趣味だ。
「えっ。というと、このシチェーションって」
「アンタが好きなレ●プ物じゃない。いつもサブキャラのくるるんちゃんのレ●プ本読んで」
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ」
俺は必死に叫んだ。隣に居る少女が「訳が分からない」という表情で本気で怯えているが、そんな事を気にしていられない。
とにかくあの悪魔の言葉を邪魔したかった。
『だから脳内に直接語りかける事が出来るってば』
詰んだ。
俺の負けだ。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
必死に土下座をしてゴメンナサイを繰り返した。今の俺にはそれしか出来ない。
心を無にして必死に土下座をしながら謝り続けた。
「それで、わかるように説明してもらえる」
「はい、説明させていただきます。えっとですね、ヒロインが危なくなったところで颯爽と登場して悪者を懲らしめるのがウケるんですよ。なのでこの場合レ●プしちゃダメなんですよ。なので女神様、この少女の記憶と体を元に戻してもう一回やり直す事は出来るでしょうか?」
「まぁそのくらいなら出来るわよ」
「それじゃあ、テイク2をお願いしても宜しいでしょうか女神様」
「はぁ、わかったわよ」