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第4話「美少女を出せば良いってもんじゃない」

 俺の呼びかけに女神は、ちゃんと来てくれた。

 急に出て来た女神におっさん達が驚いてるが、まぁいいや。


「これ、絶対人気出ないから。面白くないから」


 ストレートに伝える。これは面白い作品にならない。

 だって主人公の俺が最弱だよ? ゴブリンすら倒せないんだよ?

 しかも可愛い女の子が居なくて、おっさん達に囲まれ「流石っす!」なんて叫んでる作品、誰が好んで読むよ?

 俺なら読まない、絶対に読まない。


「じゃあ聞くけど、何がダメなの?」


 少し不機嫌そうな顔だ。ここまで言っても引かないと言う事は、多分途中まで書いちゃったんだろうな。


「いや、だって俺戦ってないんだよ? 何も面白くないからね? その上ヒロインじゃなくておっさんに囲まれてたら更に読まれないよ?」


「あー、はいはい。女の子ね、わかったわかった」


 え、何その投げやりな対応!?

 自分の考えた最高のシナリオにケチ付けられて不貞腐れてる感が出てるし。というか俺が言いたいのはそうじゃなくてだな。

 言い返すよりも早く、俺の足元に魔法陣が浮かび上がり、青白い光を放ちだした。



 ☆ ☆ ☆



「あっ、お兄ちゃん目が覚めた?」


 気が付くと、俺は先ほどの場所で俺は倒れていた。

 倒れている俺に声をかけてくれたのは、赤みがかった茶髪のポニーテールをした八重歯が特徴的な少女だ。周りをキョロキョロしてみるが他に人が居る様子はないから、お兄ちゃんと言うのは俺で合ってるんだよな?

 倒れている俺に彼女が手を差し出してくれる。よくわからないままその手を握り返し、上体を起こして立ち上がってみる。

 少女は俺の体に着いた土ぼこりをパンパンと払いながら「大丈夫?」としきりに聞いてくる。


「オークの集団を倒したのにミチサダ兄さんが倒れてたから、ビックリした」


 不意に後ろから声をかけられた。

 振り返るとそこには漆黒のローブを羽織ったツインテールの少女が、俺をちらりと見ては目線を外してを繰り返している。

 ジーッと見つめていると、顔を赤らめてフードを鼻まで被り「ミチサダ兄さん、なに人の顔を凝視してるんですか。失礼ですよ」と声を荒げられてしまった。しかし、兄さんか……。


「ははっ、にーにー何怒らせてるんですか」


 ツインテールの少女の後ろから、俺の胸元位の身長の少女がひょっこり顔を出した。

 金髪にショートカットでボーイッシュなイメージを受ける少女。俺は三人の美少女に囲まれていた。


「あの、俺の他に3人おっさんが居なかったですか?」


 3人居たおっさん達が居ない。そして代わりに少女が3人いる。まぁ大体何があったか予想できるけど。


「おっさん? さっきからお兄ちゃんは何言ってるんですか?」


「えっと、おっさんってのはオークの事?」


「そんなのは居なかったですよ」


 彼女達から話を聞くと、俺は彼女達と冒険者ギルドで出会って謎の古代遺跡を探索するためにここに来た事になっている。そして彼女達からお兄ちゃん呼ばわりされるのは、どうやら俺が「お兄様に任せとけ!」と言ったのが発端らしい。

 つまりおっさんを少女に変えたと言う事だ。記憶だけを変えて持ってきたのか、おっさんを少女に変身させたのかはわからないけど。

 これが女神の力か、凄いな。うん、凄い。

 でも違うんだ。そうじゃない。

 

「女神さん? 聞いてますか女神さん? 出てきてくれますか? っていうか出て来い!」


 先ほどのおっさん達と同じ反応を示す彼女達をほっといて、女神に呼びかける。

 さっきと違い中々出てこない、早く来いよ。


「もう、今度は何よ。ちゃんと女の子用意したでしょ!」


「ちゃんとも何も、根本的に違います」


 だって、これだと俺弱いままじゃん。


「こうですね、俺がチート能力でTUEEEEして女の子を助けて惚れさせる展開が良いわけですよ。弱い主人公じゃ厳しいんですよ」


「だからこうしてチート級の仲間を用意してあげたじゃない!」


「それが違うんです。読者が求めているのは基本的に強い主人公なんですよ。読者は主人公に自分を重ねて楽しむ物なんですよ」


 必死に女神を説得してみるが中々俺の話を聞いてくれない。

 一時間ほど言い合いをしていたが「ちょっと待って」という女神の言葉で一時休戦になった。

 ノートパソコンを開いて何やらカチカチやっている。ここじゃWi-Fi届かなくね? あっ、届いてるわ。携帯にWi-Fiのマーク出てる。 

 女神は画面を覗き「はぁ?」と叫ぶと、俺を睨んで来た。いや、何でおれが睨まれるんだよ。


「まぁいいわ。アンタのいう事も一理あるみたいね」


 あぁ、今までの話で投稿したけど良い結果じゃなかったんだな。

 手のひらを返したように俺の話に聞き入る女神。


 話し合いの末に、次の世界の設定が決まった。

 俺は剣道で全国大会を優勝する程の腕前で。(という設定、俺自身は剣道なんて体育の授業でしかやった事ないけどな)

 大会の帰りに交通事故に会い。竹刀を持ったまま異世界に飛ばされる。そこで野盗に襲われている少女を発見し、こいつらを退治して少女が俺にチョロインルートという感じだ。

 チート能力は『怪力』だが、後々にちゃんとしたチートに進化する成長型チート。

 それだけだと俺自身の弱さがカバー出来ないので、任意で俺以外の時間の流れが遅くなるチート能力もついでに頂いた。(いわゆるバー●ト・リンク) 


 さぁこれで夢の俺TUEEEEE冒険譚が始まるぜ。

 俺の足元に魔法陣が浮かび上がり、青白い光を放ちだした。

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