表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/11

第3話「違う、そうじゃない」

 外に出てから1時間は歩いただろうか、そこで初めてモンスターと遭遇した。

 相手はゴブリンと呼ばれた子供位の大きさの、キモイ人型のモンスター4匹だ。


「やべぇぜ、相手はゴブリンだ。兄ちゃん、戦闘は出来るかい?」


 斥候のおっさんが「やべぇ」と言っておきながらも全く悲壮感が感じない。モンスターが弱すぎるからふざけているのだろう。

 戦士も魔法使いも同じように「あぁ、ここで俺達は全滅してしまうのか。おぉ神よ」等と言っている。そういうノリ、嫌いじゃないよ。


「一人一殺、生きて又ここで会おうぜ!」


 同じようなノリで親指を立てる俺に、おっさん達もニヤリと笑みを浮かべて親指を立てる。そして各自それぞれがゴブリンの元へ走り出した。

 戦闘に関してどんなチートを持っているかわからない、だからここで試しておくべきか。彼らの反応を見る限り、このゴブリンは相当の雑魚なのだろう。

 一体どんなチートを貰えたんだろうか、もしかしてワンパンで何でも倒せちゃう能力とか? 流石にそこまで行ったらやりすぎな気がするけど。

 ニヤニヤと笑みを浮かべてゴブリンに殴りかかった俺だったが、ゴブリンのカウンターパンチがもろにみぞおちに入り、そのまま腹を抑えて蹲ってしまう。

 何これ……ゴブリンのパンチ速すぎるんだけど。


 ゴブリンが殴ってくる瞬間が見えなかった。

 他の3人を見ると、目にも止まらぬ速さのゴブリンパンチを涼しい顔で避けている。戦士や斥候は前衛職だからまだわかるとして、魔法使いのおっさんまでもふざけたポーズを取りながら避けている。

 3人には俺がふざけているように見えたのだろう、誰も助けに来てはくれない。必死に助けを求めようとするが上手く息が出来ず「たしゅ……け……」とまともに助けを求める声すらあげられない。

 しばらくして、あまりに殴られ過ぎてる俺を見て「これはやばい」という事にやっと気づいて助けてくれた。


「その……すまんな」


「いえ、こちらこそ戦力外で申し訳ありません」


 困った顔で頬をポリポリと掻きながら、謝罪する戦士のおっさん。

 魔術師のおっさんに優しく治療魔法をかけてもらいながら「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました」と謝っておいた。


「兄ちゃん。戦闘は俺らに任せて後ろで応援しててくれや」


「……わかりました」



 ☆ ☆ ☆



 遺跡に近づくに従い、モンスターは強力なものになって行く。


「でりゃああああああああ!」


 緑色の肌に2mを軽く超える長身のオーク。

 戦士のおっさんが自分よりも遥かに大きいオークを剣で一刀両断していく。


「流石戦士さん、カッケーっす!」


 俺の応援に気を良くした戦士のおっさんが、こちらを振り返り笑顔で親指を立てる。いやいや、戦闘に集中しろよ。

 こちらを振り向いたおっさんの後ろには、まだオークが10体以上残っている。


「ファイヤブラスト」


 魔術師のおっさんによる、広範囲に爆発を起こす火属性魔法ファイヤブラスト。戦士のおっさんに襲い掛かろうとしていたオーク達を爆発が襲う。

 ファイラブラストにより10体以上居たオークは、ほとんどが体から煙を上げ倒れている。

 こちらをドヤ顔で見てくる魔術師のおっさん。あぁ、褒めてくれって事か。


「ま、魔術師さんの魔法の前ではオークなんて無力っすね!」


 俺の応援にドヤ顔でポーズを決めている。満足してくれたようだ。

 黒煙から数匹のオークがこちらに向かい走って来るのが見える。どうやらファイヤブラストで仕留め損ねたオークのようだ。

 あの威力の魔法でも全滅させるには至らなかったようだが、オーク達はどれも死屍累々と言った感じで、中には歩く事すらやっとのモノもいる。

 そんなオーク達に、すかさずトドメをさして行く斥候のおっさん。


「斥候さんの早業に俺の心が痺れるっす!」


 あっという間にオークの群れも全滅させたおっさん達。正直めちゃくちゃ強い。

 うん、だけどそうじゃない。そうじゃないんだ!


「女神さん? 聞いてますか女神さん? ちょっと出て来てもらえますか?」


 突然叫び出した俺に、おっさん達が「えっ」といった感じで見てくるがこの際無視だ。

 女神さん、違うんだよ、そうじゃないんだよ。これじゃダメなんだ。


「おう、兄ちゃん。急に叫び出してどうしっ」

「もう、何よ? いきなり呼び出して」


 俺の呼びかけに女神が来てくれた。ちゃんと俺を見ていたようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ