③
海の外は嵐が止んだようで朝日が眩しく輝いています。
末姫様は少年を安全な場所に移す為に危険を承知して海辺に近づく事にしました。少年はぐったりとしていますが僅かに呼吸をしています。
「良かった……生きいてる……」
安心して海に帰ろうとした時です。
「そこにいるのは誰?」
何と他の人間に見つかってしまったのです。
「大変!」
末姫様は急いで海へ帰りましたが、その時末姫様の名前ではない名前を呼ばれたのです。その名前は沢山いる姉達の名前でも、家来達の誰でもありません。その名前は一度だけ寝ている末姫様の頭を撫でながら深海の魔女が寂しげに呟いていただけです。
「もう! 一体何処まで遊んでいたの!」
「心配したんだから!!」
「ごめんなさいお姉様……」
無事に城まで逃げ帰る事が出来た末姫様ですが、お姉様達に見つかり説教されています。お姉様だけではなく爺やまで参戦したお陰で三時間も叱られてしまいました。
「……ねえお姉様」
「何? 良い訳なら聞きませんよ」
「××××って誰?」
その一言で周りの空気が一変しました。
「……姫様! 何故その名前を知っているのですか!?」
正気に戻った爺やが末姫様の肩を掴んで揺さぶります。
「まさか人間の王族と出会ったの!?」
「お願いだからあの子の様に王子の事を好きになったとか言わないで!」
「貴女まで何かあったら……!!」
お姉様達にまで詰め寄られる末姫様でしたが、直ぐに身体を捩ってお姉様達から離れました。
「お姉様!! 一体私に何を隠しているのですか!! 私はもう十六です。もう子供ではありません! ですからお姉様達が隠している事を仰って下さい!!」
今まで反抗した事がない末の姫様にお姉様達は戸惑ってしまいました。しかし、一番目のお姉様は真剣な表情で自分の妹に聞きます。
「……本当に全てを受け入れる覚悟があるの?」
「あります」
一番下の妹の覚悟を受け入れた一番上のお姉様は後ろにいた他の妹達や爺やに目線を向けます。
何人かは不安そうな顔をしていますが、全員一番上のお姉様と一緒に話す覚悟が出来た様です。
「……良い? 貴女の本当のお母様は……」




