5.物書きはみんな、神
ひさびさにお話を書いてみて、痛感したことがある。
「小説を書くって、めちゃめちゃ難しい!! でもってめちゃめちゃすごい!!」
――と、いうことだ。
だって、自分ひとりで全く新しい世界を作っているのだ。気温やら土地柄やら気候やらを考え、何人もの容姿の登場人物を造り、そして彼ら一人ひとりに個性を与える。そして、彼らの人生や、ときに生死さえ決める。自分ひとりの人生を決めるのだって大変なのに、何人もの登場人物の一生を決める。まるで、「天地創造」「神の御業」だ。キリストさまだって仰天しているだろう。お話を書くのが上手下手にかかわらず、お話を書いている人たちはみんな、そういうすごいことを、あっさりやってのけている。
なにが言いたいかと言うと。
小説を書いていると、どうしても自分の文章に自信がもてなくなるときがある。展開に、自信がもてないことがある。上手な人のお話を読むとなおさら、私みたいなのが物書きやってていいんだろうか、なんて自己嫌悪に陥る。とくに私みたいに、気がつくと自分と人を比べてしまうタイプの人間は、自信を喪失してばっかり、だとおもう。そして、書けなくなって、苦しむ。
お話を書けなくなっていたあのころの自分に会えたら、私は言ってやりたい。「文章の巧い下手を気にする前に、もっと自信持ちなさいよ」と。「そのお話の世界は、あんたがゼロから作り上げた、立派な世界なんだから」と。「どんなに文章が巧かろうが、他のヤツには絶対に造れない、あんただけの世界なんだから」と。
お話を書いている人はみんな、書いていない人より人生をちょっぴり得をしているように、思う。普通の人が一つの世界しか生きられないのに対して、物書きは、自分の造ったお話の数だけ、世界の数だけ、生きることができる。この世に存在しない国も、歴史上の世界も、未来の世界も。パスポートもビザもなしで。おまけに物書きは、登場人物の数だけ、いろんな人生を経験できる。
文章が上手だろうが下手だろうが、小説を書くって、すっごいことだ。