表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/9

3.抜け出せないスパイラル


今振り返ると、もっと気楽に、とりあえず書いたものを消さずに、書き進めればよかったのだと思う。展開は思いついたのだから、あとは文章で形にするだけなのであって、とりあえずどんなに雑であろうと、大雑把に枠組みをつくってしまえば、修正は幾らでもできる。セメントとアスファルトを溶岩でぐちゃぐちゃにしたような液体でも、何度もペーパーフィルターでろ過すれば、汚水桝に流せるくらいの質の液体にいずれなるように――ってさすがにこれは無理だろうけれど。


とにかく、どんなにいびつであっても、消さずに書き進めて、後からそれを納得いくまで校正すれば良かったのだと、今なら思う。書いたそばから消すのではなく。


けれども当時は、それすらできなかった。怖かったのだ。納得のいかない文章を幾ら積み上げたところで、出来上がるものは駄文のピラミッド。駄文を積み上げていけば、自分の文章の感覚が壊れるのではないか。そして、そんなものを投稿したら、せっかく応援してくれている読者さんがみんな、離れてしまうのではないか、と。書けない自分をよそに、小説家になろうのサイトでは、多くの作家さんたちが、つぎつぎと新作を書いていた。電子書籍を出した人も、文庫本の形態で出版をした人もいた。そんななかで、進捗が滞っているのは自分だけに思えた。焦りと苛立ちばかり感じて、そして、ものすごく、悔しかった。


小説を書こうということすら億劫になっていった。就職活動はとっくに終わって時間もそれなりにつくれるようになったというのに、もはや小説のことを考えることが、億劫になってしまっていた。小説家になろうのサイトを見るのも億劫になり、気づけばログインもできなくなっていた。アイディアをしたためたノートや参考文献は、本棚の奥にひっそりとしまいこまれ、埃を積もらせていった。


もう、続きは一生書けないのではないか、そんな気持ちにすらなっていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ