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ブラッドアッシュ I  作者: KeNta
第一章
46/48

始まり 5−1

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「……ん、んん……」


夢から覚めると、俺はベッドの上で横になっていた。

ここはアジトの医務室。どうやら戦場で倒れたあとここへ運び込まれたようだ。


どうして……。


『カラの夢』で聞いた声。そして俺はその声の主を知っている。


どうして母さんが……。


そう、『カラの夢』で聞こえてきた声は紛れもなく母さんの声だった。しかし、俺が知っている母さんとは大分違い、その口調は強く、冷たいものだった。それに『最終エフィズ』とまるでなにかを作っているような会話。一緒に暮らしているなかで見たこともない一面だった。


変な夢ばっかりだな……。


母さんの声が聞けたのは嬉しかったが、これは夢なのでこれ以上考えても意味はない。

俺は頭を空っぽにして天井を眺める。


「あら、目が覚めたのね」


呑気に天井を眺めていると医務室のドアが開き、楪が部屋の中へと入ってきた。


「おお、楪か」


軽く挨拶しつつベッドから起き上がろうとしたのだが、体を動かした途端あちこちに痛みが走り、起き上がることが出来なかった。楪には申し訳ないが、寝たままの状態で会話をすることに。


「あれからどうなった?」


楪が部屋に入るなり俺は早速本題に入る。


「あのあとは——」


意識を失ったあと、俺達水野は怪我の手当をするためすぐにアジトへと搬送されたらしい。幸いみんな命に別条はないとのこと。そして、任務はあのまま柊班が引き付き見事『相模原』の奪還には成功したとか。


「手柄を全て持って行かれた気分ね」


椅子に腰かけた楪が毒づく。

確かに気持ちは分かるが、今はみんなが無事に戻ってこれたので良しとしよう。


「あ……」


話を聞いて安心仕切っていると、楪が頬に傷あてをしているのが目に入り、海斗から俺を庇ってくれたことを思い出す。


「庇ってくれてありがとう……」


面と向かってお礼を言うのは恥ずかしかったが、あの時楪が助けてくれなければ命を落としていたかもしれないので、はっきりと感謝の気持ちを伝えた。


「……」


楪は一度だけ俺の顔を見たあとすぐに逸らし、黙り込んでしまった。


なんだ……。


反応がなかったので、とりあえずもう一度お礼を言おうとしたが、


「——仲間は絶対に守る。でしょ?」


少しだけ恥じらいながらも楪がそう答えた。


「……」


挿絵(By みてみん)


まさかの不意打ちに、俺は黙り込んでしまう。


「…………」


今この部屋を照らしているのは間接灯の温かい光のみ。その温かい光に当てられた恥ずかしがる楪の表情は、年相応で女の子らしく、不覚にも可愛いと思ってしまった。


「お、おう。俺達は仲間だ」


咄嗟に思い浮かんだ言葉を喋るも何処かぎこちない。


「……」


医務室の中には言い知れぬ緊張感が流れる。


やばい、どうしよう……。


いざなにかを喋ろうと考えるも、楪とはまともに話したことがないので会話のヒントが思いつかない。これならいつもの毒舌を吐いてもらった方がましだった。


「……」


だが、この言い知れぬ空気は一時だけで、相馬や影井、水野の登場で簡単に壊れる。


「なんだ、起きてたのか」

「ああ。お前も大丈夫か?」

「まあな」


体の至るところに傷あてをしているが、とくに問題はないのだろう。


「気分はどうだ?」


次に水野が俺の顔色を伺いながら優しく声をかけてきた。

俺は見ての通り大丈夫なのだが問題は水野だ。あの鬼色化という、封印された力を使って体に異常はないのだろうか。


「私は大丈夫だよ」


不安の表情で見つめていると、水野が笑って答えたので安心した。

影井も所々に傷あてをしているが、相馬同様とくに問題はないだろう。


……よかった。


改めて全員無事に戻ってくることが出来た喜びを噛み締める。


「そうだ、隊長焼肉!」


それぞれが無事を確認しあったあと、影井が任務の前に約束していたことを思い出す。


「チッ、余計なことを……」

「あ、そいえば」

「約束したわね」


俺達は、眩いばかりの眼差しを水野へ向ける。


「…………はぁ。分かった。分かったよ。おし肉食うか!」


ため息まじりに答える水野だったが、その口調は実に楽しそうだ。


「まあ、一ノ瀬はお留守番だがな」

「じゃあな。お前の分まで食っといてやるよ」

「僕も!」

「おやすみ、一ノ瀬君」


四人は俺を残して医務室から出て行こうとしていた。


「おい、ちょっと」


慌ててベッドから起き上がる。


母さん、海斗、見てるか? 俺にも新しい仲間が、家族が出来たよ。もう迷ったりしない。俺はこの力でみんなを、奴らを倒すためにこれからも生きて行くよ。だから遠くから見守っていて欲しい。


「俺も行くぞ! 置いて行くな!」


四人の背中を追って俺も医務室をあとにした。

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