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ブラッドアッシュ I  作者: KeNta
第一章
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決意 4−11

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うそ……だろ……。


「ふう。危ない、危ない」

「ぐはっ……!」


そこにはサクラスに首を掴まれもがき苦しむ水野の姿が。


「水野ッ!」


再び駆け寄ろうとするも、これ以上は近づくなと水野が指示を出す。既に水野の両手からは赤黒いオーラ、鬼色化の効果は切れている。


「いやあ、危なかった。さすがに今の一撃には僕もちょっとだけ本気を出しちゃったよ」


サクラスの言葉に耳を疑う。


うそだろ……。あれで全く力を出していないのか……。


先ほどまでの戦いが脳裏を過る。あのパワーもスピードも、サクラスにとってはお遊びに過ぎないと言い張ったのだ。


やばい! このままだと水野が殺される!


「水野を離しやがれ!」


水野の指示を無視してクロスを勢いよくサクラスへと振り下ろすが、片手で止められてしまう。


「くっっっうっっ……」

「君は僕を侮辱したからね。簡単には殺さないよ」


サクラスは握る手に力を込める。


「がっっぐぅッッ……」

「やめろおおおおお!」


俺が叫ぶと同時に、後ろで二人の戦いを見ていた影井がサクラスの腕目掛けて銃弾を撃ち込む。


「チッ!」


反応が遅れたサクラスは銃弾を叩き切ることが出来ず、水野の首を掴んでいた手を離す。


「一ノ瀬君! 今のうちに!」


影井が銃弾を打ち続けている間に水野を抱えてサクラスから距離をとる。水野には目立った外傷はないが今の戦い、鬼色化の効果でかなり疲弊していた。


「大丈夫か水野!?」

「ああ、すまない助かった……」


肩を貸しなんとか起き上がる水野。既に立っているだけでも限界だった。


「小賢しい攻撃を」


全ての銃弾を叩き落としたサクラスは、剣先をこちらに向け反撃の体制に入る。

俺達も迎え撃つかのようにそれぞれのクロスを構え直した。今はなんとしても後ろにいる水野を守らなくてはならない。


「俺が先陣を切る。援護を頼む」


他の三人に伝えると同時にサクラスへと向かっていく。


「やめろ、一ノ瀬!」

「懲りないね」


水野の言葉を無視して正面から連続してクロスを振るうも、そのどれもが簡単に避けられ、最後は先ほど受けたように額を小突かれ水野達の下へと吹き飛ぶ。


「くそ……、負けるかよ……」


クロスを杖替わりにして起き上がる。

既に俺の体も今までのダメージで限界を超え、立っているのもやっとの状態だった。それでも、ここで倒れる訳にはい。後ろには守らなくてはいけない人達がいるから。


ここで俺は倒れたみんなが……。


それは絶対にあってはならない。自分の体に鞭を打ち、サクラスと対峙する。


「……お前達」


今まさにサクラスへと向かおうとしたその時、後ろにいる水野から声がかかった。重たく、そして暗い口調で。俺はこの感じに覚えがあった。


「——私が囮になる」


そう、母さんが、海斗が俺を逃すために行った光景と全く同じだった。


「そんな水野隊長!」


相馬が声を上げる。楪と影井は黙っていたが、相馬と同じことを考えているだろう。


……また、誰かが犠牲に?


「いいか。鬼色化した状態でも奴には敵わなかった。つまり現状では奴を殺す手段はない……」


なんだよ。だから自分が犠牲になって俺達に逃げろっていうのかよ……。


水野はおぼつかない足取りで俺達の前に立ち、再びクロスを解放、更には鬼色化までやってのける。しかし、最初に見たような禍々しい感じはなく、赤黒いオーラは風前の灯火だった。それでも俺達を逃すために前に立つ。


「お前がみんなを先導して逃げろ。いいな……」

「……はい……」


小さく答える影井。確かに水野の言う通り、この場から生き残るためには誰かがサクラスを引きつけておく必要があった。


「相馬。お前は口は悪いが周りがしっかりと見えている。これからは、みんなを守ってやってくれ」

「……はい」

「楪。喧嘩っ早い馬鹿二人を頼む。それと、お前は美人になるぞ。私が保証する」

「……分かりました」


これが最後と言わんばかりに水野は俺達一人一人に言葉をかけ始めた。


なんだよ……。なに言ってるんだよ……。


「影井。長い間私についてきてくれてありがとう。こいつらの面倒を見てやってくれ」

「……はい。任せてください……」


やめろよ。なに諦めてるんだよ……。


「一ノ瀬」


ついに俺の番が来てしまう。


駄目だ。これを聞いてしまったらまたあの時のように……。


『絶対に生きて!』

『——生きろ』


また大切なものを失ってしまう。そんなの駄目だ。もう絶対に……。


「————誰一人殺させるものか……」


水野が口を開くが、それを強引に遮り俺は話を続ける。


「仲間は絶対に俺が守ってみせる」


そう言葉を残し、俺は全ての力をかけてサクラスへと向かう。


「お前ら! 一ノ瀬を止めろ!」


俺ではサクラスには敵わないと分かっている水野は、なんとしても止めようと楪達に声を飛ばすが、間に合うことはない。


「君は馬鹿なの?」


サクラスは呆れながら向かってくる俺に剣先を向ける。


馬鹿だろうがなんだって構わない! 仲間を守ることが出来るのなら!


「うおおおおおおおお!」


怯むな。恐れるな。俺がみんなを守る!


たとえ打ち合いになっても力で押し切るため、前傾姿勢のスピードが乗った状態で地面を蹴り上げサクラスを眼前に捉える。距離はわずか数メートル。決着の瞬間であった。


「負けるもんかああああああ!」

「なっ……!?」


俺の気迫が勝ったのか、勢いよく左下から振り上げた一撃でサクラスの剣を弾き飛ばす。結果、正面ががら空きに。そこへすぐさま踏み込んだ逆の足を地面に突き立てクロスを振り下ろす体制に。


これで……! これで!


「終わりだあああああ!」


激声と共にクロスを振り下ろす。しかし——、


「——残念でした」


瞬間。不敵な笑みを浮かべるサクラス。力で弾いたはずの剣はサクラス自らの意思で飛ばしたもの。弾かれたように見せていただけだった。ここまでサクラスの手の内。


「君にはこれで十分さ」


殺意のこもった笑みで突きの構えをとる。


やばい……!


既に次の攻撃へと踏み込んでいる俺には避ける手段がない。


「——さようなら。愚かな人間さん」


そして、サクラスの右腕が俺の体を貫通。刹那、視界が一瞬のうちに暗くなった。


……悪い、海斗。俺にはみんなを守ることが出来なかったよ……。


最後に海斗との約束を守れなかったことを悔やみながら意識は遠のいていく。

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